氷上の自転車レース「マススタート」とは?ミラノ五輪への展望と日本勢の勝機
ニュース要約: 2026年ミラノ・コルティナ五輪で注目を集めるスピードスケート・マススタートを徹底解説。時速50kmで繰り広げられる過酷な駆け引きや、16人の選手が一斉に滑走する「氷上の自転車レース」のルール、戦略を深掘りします。平昌五輪金メダルの高木菜那に続く、日本勢のメダル獲得に向けた現在地と強豪国との戦術比較を紹介する必見のガイドです。
【ミラノ・コルティナ五輪への展望】氷上の自転車レース「マススタート」とは? スピードスケートの新主役、その過酷な駆け引きと日本勢の勝機
2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪の開幕までカウントダウンが始まる中、スピードスケート競技において最も予測不能で、観客を熱狂させる種目として注目を集めているのが「マススタート」だ。かつてのタイムトライアル中心の静かな戦いとは一線を画し、「氷上の自転車レース」とも称されるこの競技。本稿では、マススタートとは一体どのような競技なのか、そのルールや戦略、そして日本代表勢のメダル獲得の可能性について深く掘り下げる。
■「マススタート」とは? 従来の種目との決定的な違い
スピードスケートといえば、2人の選手が内コースと外コースを入れ替えながらタイムを競う姿を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、スピードスケート マススタートは、その常識を根底から覆す。
最大16人の選手がシングルトラック(1本のコース)上に一斉に並び、合図とともにスタート。400メートルリンクを16周(計6400メートル)滑走し、着順と獲得ポイントの合計で順位を決定する。2018年の平昌五輪から正式種目に採用された比較的新しい種目だが、そのダイナミックな展開から瞬く間に五輪の「顔」となった。
最大の特徴は、タイムではなく「着順ポイント制」にある。4周、8周、12周終了時の中間ポイント(上位3人に付与)と、最終ゴール時のポイント(上位6人に付与)を競う。特に最終周の1位には60ポイントが与えられるため、道中の順位に関わらず、最後に突き抜けた者が勝者となるドラマチックな展開が魅力だ。
■時速50kmの心理戦:戦略的な駆け引きの面白さ
スピードスケート マススタート とは、単なる持久力走ではない。時速50km近い速度の中で繰り広げられる、極めて高度な「心理戦」であり「知略戦」である。
- ドラフティング(風よけ)の活用 先頭で風を受ける選手は体力を消耗する。そのため、有力選手ほど集団の中ほどに身を潜め、他人の背後で空気抵抗を減らしながら体力を温存する。どのタイミングで集団から抜け出すか、その見極めが勝敗を分ける。
- 中間ポイントを巡る「逃げ」 スプリント力に自信のない選手は、序盤から集団を突き放す「逃げ」を打ち、中間ポイントを確実に拾うことで上位入賞を狙う。これに対し、強豪国は集団のペースをコントロールし、逃げた選手をじわじわと追い詰める「集団の力」を見せる。
- 接触と位置取り レーンのないシングルトラックでは、選手同士の肩がぶつかり合う。コーナーでの激しい位置取り争いは常に転倒や失格のリスクと隣合わせであり、ショートトラックに近い緊張感が漂う。
■世界各国の戦術:オランダ・韓国・イタリアの三つ巴
過去の大会データに基づくと、国ごとに明確なカラーがある。スピードスケート大国オランダは、複数の選手を送り込み、集団のペースを支配してラストスパートに持ち込む「組織力」が武器だ。一方、韓国勢は後方でじっと耐え、最終1周で爆発的な加速を見せる「一気攻勢」を得意とする。
そして2026年大会の開催国であるイタリアは、ホームの利を活かしたハイペースな展開をテストしている。ミラノ・コルティナ五輪では、この「高速レース化」が日本選手にどのような影響を与えるかが焦点となる。
■日本勢の現在地:悲願の王座奪還へ
日本にとってマススタートは、平昌五輪で高木菜那が女子初代金メダリストに輝いた相性の良い種目だ。2026年に向けた日本代表候補たちは、伝統的な中長距離(1500m、5000m等)で培った持久力に加え、チームパシュートで磨いた正確なスケーティング技術を武器にしている。
現在の選考基準では、ワールドカップなどの国際大会で実績を残した「SQRL(スピードスケートランキングリスト)」上位者が優先的に選出される。日本勢は、戦略担当のコーチ陣とともに独自の「日本流・集団封じ」の戦術を練り上げている。オランダや韓国といった強豪のマークをどう外し、いかに最短距離のインコースを死守するか。直近の世界選手権での入賞ペースを見る限り、男子のメダル獲得、そして女子の表彰台への返り咲きは十分に現実的な射程圏内にある。
■結びに:2026年、氷上のチェスが幕を開ける
個別タイムを100分の1秒単位で削り取るストイックな世界から、他者との接触を厭わず勝利を奪い合う格闘技的な世界へ。スピードスケート マススタートは、スピードスケートという競技に新しい命を吹き込んだ。
2026年2月、イタリアの銀世界を舞台に、16周の過酷な旅の果てに誰が笑うのか。「氷上の自転車レース」がいよいよ始まる。日本のファンは、あの平昌の夜のような熱狂が再び訪れることを願って止まない。
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