致死率最大75%の「ニパウイルス」インドで再発、東南アジア各国が水際対策を強化
ニュース要約: インド西ベンガル州で致死率が極めて高いニパウイルス感染症が確認され、タイやマレーシアなどの周辺国が警戒を強めています。ワクチンや特効薬がない中、WHOも優先病原体に指定しており、現在は日本を含む国際チームが2027年の実用化を目指しワクチン開発を急いでいます。現時点で日本への流入リスクは低いとされていますが、感染地域への渡航には注意が必要です。
インド東部でニパウイルス感染症が再発、致死率最大75%で東南アジア各国が警戒強化
インド東部の西ベンガル州で2025年12月以降、致死率が最大75%に達する「ニパウイルス感染症」の感染者が確認され、東南アジア各国が警戒を強めている。インド保健省は1月下旬、同州コルカタ市近郊で2人の感染を確認したと発表。このうち1人は回復したものの、もう1人は依然として重篤な状態にあるという。
ニパウイルス感染症は、世界保健機関(WHO)が優先病原体に指定する重大な感染症だ。潜伏期間は418日で、発熱、頭痛、嘔吐などのインフルエンザ様症状から始まり、急速に急性脳炎へと進行する。意識障害や痙攣を伴い、致死率は3275%と極めて高い。現時点でワクチンや特効薬は存在せず、対症療法のみが頼りとなる厳しい状況にある。
感染経路は主に、感染したコウモリや豚の体液・組織との直接接触だ。インドやバングラデシュでは、コウモリが食べた果物の汁や、感染した豚との接触が原因とされるケースが多い。人から人への感染は限定的だが、医療現場や家族間での二次感染も報告されている。
今回の西ベンガル州での感染確認は、2007年以来となる同州での発生だ。インド当局は感染者と接触した196人を特定し、全員の検査を実施したところ、幸いにも全員が陰性で症状も出ていないという。しかし、渡航者医療センターの情報によれば、1月中旬までに計5名の感染者が報告されているとされ、状況の監視が続けられている。
インドでの感染確認を受け、周辺国は迅速に対応を開始した。タイ保健省は、感染発生地域からの航空機に専用の駐機場を割り当て、乗客全員に健康申告を義務付けた。マレーシアも、リスクの高い国からの入国者に対して国際空港や港で健康診断を実施するなど、水際対策を強化している。ベトナムでは国際国境での監視体制を強化し、必要に応じて隔離措置を取る準備を整えた。
ニパウイルスは1998~1999年にマレーシアで初めて確認されて以来、バングラデシュやインドで散発的な流行を繰り返してきた。特にバングラデシュでは2001年以降、ほぼ毎年患者が報告されており、インド南部のケララ州でも散発的な発生が続いている。今回の西ベンガル州での感染規模は、過去の年間散発レベルと同等かやや多い程度だが、接触者追跡により拡大は抑えられているとみられる。
現時点で変異株の出現は報告されていないが、専門家らは引き続き監視を続ける必要性を指摘している。WHOやインド保健省は、既知のニパウイルスとして扱っているものの、詳細なゲノム解析情報は不足しており、新たな変異の可能性を完全には否定できない状況だ。
一方、治療薬やワクチンの開発も急ピッチで進められている。日本の東京大学を中心とした国際共同研究チームは、麻疹ウイルスベクターを用いたニパウイルスワクチン(MV-Nipah)の開発を進めており、動物実験では高い防御効果が確認されている。開発チームには欧州ワクチンイニシアティブ(EVI)、スタンフォード大学、バングラデシュの国際下痢性疾患研究センター(ICDDR)が参画し、第II相試験の終了を2027年3月に予定している。感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)からは総額34.4億円の支援が決定されており、5年以内の流行地での実用化を目指している。
日本国内への流入リスクについては、現時点では低いと評価されている。ニパウイルスは主に接触感染で広がり、空気感染による爆発的な拡大は起こりにくい。また、日本には媒介となるコウモリが自然生息していないことも、リスクを低減させる要因だ。COVID-19対策で構築された発熱スクリーニングや追跡システムが活用可能で、水際対策も即応できる体制にある。
ただし、感染地域への渡航者には注意が必要だ。厚生労働省は、インド西ベンガル州などから帰国後14日以内に発熱、頭痛、咳、呼吸困難、神経症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診するよう呼びかけている。現地では、果物は十分に洗浄して皮をむき、生の樹液を避け、感染動物との接触を避けることが重要だ。
ニパウイルス感染症は、グローバル化が進む現代社会において、常に警戒を要する感染症の一つである。ワクチンや治療薬の開発が進む一方で、各国の協力による監視体制の強化と迅速な情報共有が、感染拡大を防ぐ鍵となるだろう。
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