オイシックス・ラ・大地躍進の舞台裏――髙島宏平社長が描く「食のインフラ革命」
ニュース要約: 創業25周年を迎えたオイシックス・ラ・大地の髙島宏平社長が、売上高2560億円規模への成長と今後の戦略を語る。積極的なM&Aによるシダックスの連結子会社化やBtoB給食事業の急拡大を背景に、2030年の売上高3000億円達成を目指す。ビジネスの手法で食の社会課題を解決し、持続可能な食のインフラ構築に挑む同社の最新動向を詳報します。
オイシックス・ラ・大地躍進の舞台裏――髙島宏平社長が描く「食のインフラ革命」
2025年、日本の食品宅配市場は大きな転換期を迎えている。その中心にいるのが、オイシックス・ラ・大地株式会社を率いる髙島宏平社長だ。52歳となった今も「青春を延長する」と語る同氏は、創業25周年を迎えた企業を売上高2560億円規模へと成長させ、食の社会課題解決に挑み続けている。
マッキンゼーからの転身――26歳での起業
1973年生まれの髙島氏は、東京大学大学院で情報工学を修め、マッキンゼー・アンド・カンパニーのEコマースグループで腕を磨いた。2000年6月、インターネットバブルの崩壊が始まる中、26歳という若さでオイシックス株式会社を設立する。「一般のご家庭での豊かな食生活の実現」という理念を掲げた挑戦は、生産者の論理ではなく顧客視点に徹したサービス設計という、コンサルタント時代の経験が活きた戦略だった。
創業直後、ITバブル崩壊で倒産危機に直面したが、髙島社長は「何事も楽しむ」信念で逆風を乗り越えた。2005年には日本オンラインショッピング大賞グランプリを受賞し、2013年には東証マザーズへの上場を果たす。食を「社会インフラのようなインパクトある分野」と位置づけた同氏の構想は、着実に実を結んでいった。
M&A戦略で再編する食品宅配市場
オイシックスの成長を加速させたのが、2016年以降の積極的なM&A戦略だ。同年、買い物弱者支援を手がける移動スーパー「とくし丸」を子会社化。2017年には有機野菜宅配の「大地を守る会」と経営統合し、翌2018年には「らでぃっしゅぼーや」とも統合。社名を「オイシックス・ラ・大地」に変更し、食材宅配3ブランドの統合による顧客基盤の拡大を実現した。
2019年には米国進出を開始。プラントベースミールキットを展開する「Purple Carrot」を子会社化し、グローバル展開への布石を打つ。そして2024年、給食事業大手のシダックス株式会社を子会社化(株式66%取得)し、自らも代表取締役副社長に就任。BtoBサブスクリプション事業が前年比306%増の607億円に急拡大する原動力となった。
2025年業績――増収減益の背景と戦略転換
2025年3月期の連結売上高は2560億円(前年比72.5%増)と、上場後12年連続の増収を達成した。しかし当期純利益は36.3億円(同11.4%減)と減益に転じた。シダックス統合に伴う一時コストや、BtoCサブスク事業が971億円(同2%減)と横ばいで推移したことが影響した。
一方、7月から9月の第2四半期では経常利益が前年比60.5%減の10.6億円と大幅減益となり、営業利益率も3.3%から1.8%へ低下。Oisix単体の売上高は292億円(同1.0%増)と微増にとどまったが、会員数は2期ぶりに増加に転じた。
髙島社長は2026年3月期の通期予想として、売上高2550億円(同0.4%減)ながら営業利益73億円(同6.4%増)、純利益40億円(同10.0%増)と増益に転じる見通しを示した。減収増益という構図は、BtoB給食事業の収益性改善と効率化投資の成果を期待させる。
「食の社会課題」をビジネスで解決
髙島社長が一貫して掲げるのは「食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決する」というミッションだ。東日本大震災以降、自社で食品の放射能検査を実施するなど、消費者の安心・安全を最優先してきた。生産者と消費者を直接つなぐダイレクトマーケティングモデルは、持続可能な食流通の実現につながる。
2025年には「D&I AWARD 2025」で大賞を受賞し、ダイバーシティ&インクルージョンの推進でも評価された。また6月には「第7回東京NBCアワード」経営者大賞を受賞。受賞スピーチで「日本・世界のため青春を延長する」と語り、社会課題解決への情熱は衰えを見せない。
新潟では農業課題解決に向けたスタートアップ支援を構想し、プロ野球独立リーグの新潟アルビレックス・ベースボール・クラブの代表会長にも就任。地域活性化と持続可能な農業の融合を模索している。
2030年への成長シナリオ
オイシックス・ラ・大地は、2030年3月期にBtoC・BtoB合算で売上高3000億円、BtoB契約施設数3000施設という中長期目標を掲げる。上期実績でEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が前年比約2倍の61.8億円に達したことは、この目標達成への手応えを感じさせる。
給食業界向けの「タイパ給食モデル」構築や従業員の給与アップといった施策に加え、今後は物流センターの自動化などテクノロジー投資も課題となる。決算説明会でも「サステナブルな食品サプライチェーン」の構築が強調されており、フードロス削減やミールキット活用による環境負荷低減が、競争優位性の源泉となる。
「これからの食卓、これからの畑」へ
創業25周年を記念した社史アートで、髙島社長は「全員が歴史の一部。30年40年50年続けるモチベーションを持ち続けたい」と語った。四半世紀にわたる挑戦は、単なる食品ECから、食を通じた社会インフラ構築へと進化している。
高齢化、人口減少、フードロス、農業の担い手不足――日本が直面する食の課題は複雑に絡み合う。髙島宏平社長とオイシックス・ラ・大地が描く「食のインフラ革命」は、これらの課題に正面から向き合い、ビジネスの力で解決しようとする壮大な実験だ。2025年、その試みは新たなステージへと踏み出している。
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