神明ホールディングス
2025年12月6日

【警鐘】米価高騰の反動で「暴落は避けられない」?神明HDが示す適正価格3500円への道筋

ニュース要約: 2025年産の米価は歴史的な高水準にあるが、米穀流通最大手の神明ホールディングスは、消費減退による2026年産の「価格暴落リスク」を強く警告。同社は市場安定化と持続的消費のため、具体的な小売目標価格「5kg3500円」を提示し、業界全体の価格戦略の転換を促している。

米価高騰後の「暴落リスク」を警戒:最大手・神明ホールディングスが示す適正価格への道筋

【大阪/東京】 2025年産の米価格は、記録的な高水準で推移している。この異例の状況下、米穀流通業界の最大手である神明ホールディングス(非上場、本社・神戸市)が、市場の安定化に向けた強い警鐘を鳴らし、業界全体の価格戦略の転換を促している。同社は目先の利益追求ではなく、持続的な消費構造の維持のため、具体的な小売価格目標を提示。2026年にかけて予測される「在庫膨張による価格暴落」という最悪のシナリオを回避すべく、経営戦略の舵取りを急いでいる。

異例の高騰、仕入れ価格は1.5倍に

日本の米価は現在、歴史的な高値圏にある。農業協同組合(JA)グループが農家に支払う2025年産の概算金は、玄米1俵(60キロ)あたり3万円超に達し、市場の想定を大きく上回った。これに伴い、米卸大手の神明ホールディングスがJAから仕入れる際の相対取引価格も急騰。2024年産の年間平均が2万5000円程度であったのに対し、2025年10月には全国平均で3万7000円(玄米60キロ)と、約1.5倍に跳ね上がっている。

非上場企業である神明ホールディングスは、価格転嫁を成功させ、米穀流通に加え、青果や食品加工など多角的な事業展開により、2024年3月期には過去最高益を見込むなど、堅調に成長を続けている。しかし、この高騰は消費者の購買意欲を深刻に冷え込ませている。

社長が警告する「暴落は間違いない」

神明ホールディングスの藤尾益雄社長は、12月4日に開催された米生産者大会での講演で、現在の状況に対する強い懸念を表明した。「このままいけば(米価格が)暴落するのは間違いない」と述べ、危機感を露わにした。その背景には、高値による消費者の米離れが進行し、需給バランスが崩壊するリスクがある。

社長が業界全体に提唱したのは、消費減退を防ぐための具体的な価格水準だ。「みんなで5kg3500円で売れるようにしていかないと」と呼びかけたこの目標価格は、現在のスーパー店頭価格の高止まりからの脱却を意味する。

農水省のデータによれば、11月時点の精米5kg当たり平均価格は4312円。特に東京都内では、コシヒカリが5448円、それ以外が5323円と、依然として5000円を超える高価格帯で推移しており、神明HDが目指す3500円との乖離は大きい。この差が埋まらなければ、消費者はさらに米から遠ざかる可能性が高い。

業務用米の値上げ連鎖と消費者への影響

米価高騰の波は、一般家庭だけでなく業務用市場にも押し寄せている。業務用米は2026年2月から3月にかけて24年産から25年産へと切り替わる見込みであり、この時期にパックご飯をはじめとする米関係の食品が値上げラッシュとなることが予想される。

コンビニ向けのおにぎり価格も例外ではない。かつて100円前後であったおにぎりは、現在180円程度に上昇しているが、25年産の米価格が完全に反映されれば、普通のおにぎりが200円超、プレミアム商品が300円超となる可能性が指摘されており、食卓や中食産業への影響は甚大だ。

2026年産米の「暴落リスク」と安定化への模索

神明ホールディングスが最も懸念するのは、短期間での高騰がもたらす反動、すなわち2026年産の価格暴落リスクである。高値を受けて生産者が作付けを増やした場合、民間在庫が膨張し、需給バランスが崩壊する。

藤尾社長は、2026年6月末までに在庫が過去最大規模の約229万トンに達する可能性を指摘しており、この過剰在庫が暴落を引き起こす最大の要因となる。

この危機を回避するため、神明ホールディングスは来年産の最低保証価格の早期提示を検討するなど、市場の安定化に向けた取り組みを加速させている。全農にいがたも同様に、2026年産の概算金の最低保証額を作付前に提示することを検討しており、業界全体で生産量低下という根本的な問題解決と、投機的な動きを抑えるための協調体制を模索している。

業界を牽引する非上場大手の責任

神明ホールディングスは非上場のため直接の株式流動性はないものの、その業績の堅調さや、関連上場企業である神栄(証券コード3004)の財務安定性(割安感のある株価動向や自己資本比率の上昇)は、グループ全体の信頼性を高めている。

米価高騰とそれに続く暴落リスクという不安定な市場環境において、神明HDが提唱する「5kg3500円」という適正価格の実現は、単なる企業の利益追求を超え、日本の主食である米の持続的な流通と消費文化を守るための業界リーダーとしての責務を示している。生産者、流通業者、そして消費者の三者が納得できる価格構造をいかに再構築できるか、神明ホールディングスの戦略が今後、業界全体の命運を左右することになるだろう。

参考情報源

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