豪雪地帯「山形」の冬:蔵王観光再始動と試される雪国インフラ、地域食文化の継承
ニュース要約: 本格的な冬を迎えた山形県。蔵王温泉スキー場がプレオープンし、樹氷観光への期待が高まる一方、豪雪地帯として除雪オペレーター不足やインフラ維持が喫緊の課題だ。GPS導入など対策が進む中、地域経済を支える郷土料理「芋煮」文化の継承にも焦点が当たる。
豪雪地帯「山形」の冬:蔵王観光の再始動と試される雪国インフラ、地域食文化の継承
【山形】 12月上旬、本格的な冬の到来を迎えた山形県。観光地ではシーズン再開への期待が高まる一方、全国有数の豪雪地帯として、社会インフラの維持と住民生活の安全確保が喫緊の課題となっている。特に、気候変動の影響で短期集中の降雪が予想される中、県、市町村、国が連携した多層的な雪対策の成否が注目されている。観光経済の振興と、雪国インフラの維持という二律背反する課題に直面する山形の現状を追った。(2025年12月9日)
蔵王スキー場がプレオープン、樹氷観光の本格化へ
山形県の冬の観光の目玉である蔵王温泉スキー場は、今シーズンも12月6日に中央ゲレンデなどでプレオープンを果たした。豊富な積雪と良好な雪質に恵まれ、初滑りを楽しむスキーヤーやスノーボーダーで賑わいを見せている。
蔵王は標高780mから1661mに広がる広大なゲレンデを有し、翌年5月6日までの長期にわたり、26コース、32リフトの稼働が予定されている。特に、年末の12月24日からは上の台ゲレンデでナイター営業が開始され、幻想的な樹氷のライトアップとともに、夜間の滑走も可能となる。初滑りシーズンを通じ、地元観光協会は、インバウンドを含めた観光客の誘致を強化しており、地域経済の活性化に向けた取り組みを加速させている。
試される除雪体制:担い手確保と効率化
観光客を迎え入れる一方で、山形県は毎冬、厳しい自然環境との闘いを強いられる。「いきいき雪国やまがた基本条例」に基づき、県は第4次雪対策基本計画を推進中だ。最大の課題は、除雪オペレーターの高齢化と人材不足であり、技術伝承や除雪協力会の組織化による担い手確保が急務となっている。
インフラ面では、除雪体制の効率化が進む。除雪車両へのGPS導入による「除雪運行管理システム」の活用は、リアルタイムでの進捗管理を可能にし、住民への情報提供を強化している。市町村レベルでも、尾花沢市などでは、前日午後5時以降に市街地で10cm以上の降雪があれば、翌日未明から早朝一斉除雪を実施するなど、地域特性に応じた細やかな対応が図られている。
しかし、記録的な降雪予報が出た場合、主要交通路への影響は避けられない。過去に大雪で約400台の車が立ち往生した国道7号(酒田・鶴岡)や、山岳部を通り雪崩リスクの高い国道112号(月山)では、冬季の通行止めやチェーン規制の頻発が予想される。国土交通省山形河川国道事務所は、除雪車出動式を通じて体制の万全を期しているが、県は、不要不急の外出自粛や、除雪作業中の安全確保を住民に呼びかけている。また、高齢者世帯や要介護者が多い集落では、孤立リスクに対応するため、除雪ボランティアや緊急対策組織の早期設置体制を構築している。
芋煮が支える地域経済:里芋消費全国一の背景
山形の冬の生活と文化を語る上で欠かせないのが、郷土料理「芋煮」である。秋から冬にかけて河川敷などで行われる「芋煮会」は、県民の交流の場として深く根付いている。
山形県が里芋、こんにゃく、醤油の消費量で全国1位を誇る事実は、この文化の経済的な影響力を裏付けている。特に山形市は、これらの食材への支出額が家計調査でも全国トップであり、芋煮の消費が地域経済を支える一翼を担っていることが明らかだ。
興味深いのは、県内での食文化の多様性だ。一般に知られる牛肉と醤油ベースの芋煮(主に村山・置賜地区)に加え、置賜の一部では馬肉を用いた塩味のものも普及しており、地域ごとの食材や歴史が反映された独自の味が楽しめる。年末年始の贈答品としても、米沢牛や山形産フルーツ、芋煮関連の加工品など、地元の特産品が人気を集めている。
持続可能な地域社会への展望
山形県は、蔵王温泉スキー場などの観光資源、豊かな食文化、そして厳しい自然環境という三つの側面を抱えながら冬を迎えている。観光振興を維持しつつ、気候変動による短期集中の降雪や、高齢化・過疎化による除雪体制の担い手不足といった構造的な課題への対応が、持続可能な山形の地域社会を築く鍵となる。県は、雪に強いまちづくりと、地域資源を活かした経済振興の両立を目指し、対策を加速させている。