マイナ保険証へ本格移行迫る:利用率3割台の壁、普及と信頼構築の課題
ニュース要約: 2025年12月2日からマイナ保険証への本格移行が始まるが、利用率は約34.3%にとどまる。登録率85%超とのギャップが課題だ。医療現場は資格確認システムの導入を進め、政府は資格確認書の発行などで混乱回避を模索する。利用者の評価は高いものの、プライバシー保護への根強い懸念を払拭し、信頼を構築できるかが今後の焦点となる。
マイナ保険証、普及への道筋模索 来月2日から本格移行も利用率3割台
2025年12月2日から従来の健康保険証の新規発行が停止され、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」への完全移行が始まる。しかし、2025年8月時点での実際の利用率は約34.3%にとどまり、医療現場では混乱回避への対応が急がれている。
登録は進むも、実利用に課題
マイナポータルやマイナンバーカードでの健康保険証利用登録率は約85%を超え、マイナンバーカード自体の保有率も約80%に達している。しかし、実際に医療機関でマイナ保険証を携行・利用している国民は約3割程度に過ぎない。この「登録と実利用のギャップ」が、制度移行における最大の課題となっている。
マイナ保険証の登録方法は、医療機関や薬局に設置された顔認証付きカードリーダーでの手続きのほか、マイナポータルアプリを使ったスマートフォンからのオンライン登録も可能だ。セブン銀行ATMでも登録できるなど、複数の選択肢が用意されている。一度登録すれば、転職や引っ越しのたびに保険証を切り替える必要がなくなるというメリットがある。
医療現場、設備整備と代替措置で対応
医療機関にとって、マイナ保険証導入には光と影がある。患者の資格情報がリアルタイムで確認できることで、保険証の有効期限切れによる過誤請求が減少し、事務負担が大幅に削減される。医療情報の共有が促進されれば、重複検査や重複投薬のリスクも低減できる。
一方で、顔認証付きカードリーダーやオンライン資格確認システムの導入には初期投資が必要だ。通信障害時には資格確認ができなくなるリスクもあり、代替手段の確保が求められる。政府は「医療DX推進体制整備加算」などの診療報酬上の措置で医療機関を支援しているが、小規模診療所などでは負担感が残る。
紙の健康保険証廃止後の混乱を避けるため、マイナンバーカードを持たない人向けには「資格確認書」と呼ばれる紙の代替証明書が一律交付される措置が取られている。有効期限切れの紙保険証についても、2026年3月まで暫定的に利用可能とする経過措置が設けられた。
プライバシー保護、国民の不安根強く
マイナ保険証を巡っては、データセキュリティとプライバシー保護への懸念も根強い。政府はマイナンバーカードのICチップには医療情報などのプライバシー性の高い情報は保存されていないと説明し、本人確認は顔認証または4桁の暗証番号で行われると強調する。
しかし、医療情報が一元管理されることによる情報漏洩リスクや、政府による監視強化への不安の声は後を絶たない。マイナポータルでは特定健診の情報や薬の履歴、医療費などを確認できるが、情報提供の同意・非同意を選択できる仕組みの透明性向上が求められている。
利用者の約75%が「今後も利用したい」と回答しており、実際に使った人の評価は高い。デジタル格差の解消や高齢者・障がい者への配慮を含め、利用促進と信頼構築の両面から、政府には丁寧な対応が求められている。移行期間を経て、制度が国民生活に真に根付くかどうか、今後の1年が正念場となる。
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