マイナ保険証:2025年12月保険証廃止へ 普及率8割で直面する運用と信頼の課題
ニュース要約: 2025年12月1日の保険証完全廃止を控え、マイナンバーカードの普及率は約8割に達した。しかし、誤紐付けや情報漏洩などの運用課題が山積しており、デジタル公共インフラとしての信頼確立が急務となっている。政府はセキュリティ強化を進める中、今後の運用改善が鍵となる。
マイナンバーカード、保険証一体化で新たな局面へ 普及率8割も運用課題残る
2025年12月1日から従来の健康保険証が完全廃止され、マイナンバーカードを活用した「マイナ保険証」への移行が本格化する。普及率が約8割に達する一方で、システムトラブルやセキュリティへの懸念も指摘されており、デジタル社会の基盤として定着するかどうかの正念場を迎えている。
保険証廃止で加速する利用拡大
政府は2025年12月1日をもって、紙やプラスチック製の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードによる保険資格確認を原則義務化する。医療機関ではオンライン資格確認システムによるデジタル化が進められており、マイナ保険証を持たない患者には「資格確認書」が発行される仕組みとなる。健康保険証の新規発行は昨年12月2日で停止しており、廃止まで残り10日余りとなった。
マイナンバーカードの保有率は2025年10月末時点で約79.9%(9,947万枚)に達し、2016年の交付開始から約10年で国民の8割近くに浸透した。9月19日からはスマートフォンにマイナ保険証機能を搭載した「スマホ保険証」の運用も始まっているが、対応医療機関が限定的で利用環境は発展途上だ。
相次ぐトラブルと信頼回復への取り組み
一方で、マイナンバーカードを巡っては運用上の課題も浮き彫りになっている。保険資格との誤紐付けや、本人以外の保険情報が結びつくトラブルが報告されており、自治体や関連機関での確認作業の負担増が問題視されている。また、本人の同意なく所得情報が漏出する事案も国会で指摘されるなど、個人情報管理の在り方が問われている。
こうした問題を受けて、政府はセキュリティ対策の強化に乗り出した。マイナンバーや特定個人情報の不正取得・漏洩に対しては、最大で懲役4年以下や数百万円以下の罰金を科す厳罰化を進めている。自治体や民間事業者には暗号化通信の採用やデータ保管の最適化など、技術的対策の徹底を求めており、マイナンバーカード交付予約システムも安全な接続環境への対応を推奨している。
行政DX化で広がる活用範囲
マイナンバーカードの利活用範囲は急速に拡大している。2025年3月から運転免許証との一体化が開始され、住民票の写しや戸籍証明書などのコンビニ交付、図書館カードとしての利用など、行政サービスを広くカバーするようになった。マイナポータルを通じた引越し、パスポート、子育て、介護などの手続きのオンライン化も進み、窓口での待ち時間削減につながっている。
効率化の効果は数値にも表れている。被災者支援業務では約90%の業務削減を実現し、窓口受付時間も従来の100秒から24秒に短縮された実証実験の例もある。マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービスを導入した民間事業者も652社に上っており、デジタル社会の基盤としての定着が進んでいる。
デジタル庁は、マイナンバーカードを「市民カード」として活用する構想を推進しており、暗証番号不要の「かざし利用」や地域バスの乗車券、施設の入館証など、日常生活での多機能化を図っている。
課題克服が今後の鍵に
マイナンバーカードは「健康保険証」「運転免許証」の3枚をカード1枚にまとめることが可能となり、利便性は向上している。しかし、システムトラブルへの対応や利用者の理解促進、セキュリティ確保など、運用面での課題は依然として残る。
政府は2026年以降の機能刷新やサポート体制の強化を計画しているが、国民の信頼を得て真のデジタル公共インフラとして定着できるかどうかは、今後の運用改善にかかっている。保険証廃止を目前に控え、マイナンバーカードは新たな段階を迎えようとしている。