杉本哲太 キャリア40年超の深み:火9ドラマ『スティンガース』で魅せる悪役の真髄
ニュース要約: 俳優デビュー40年超の杉本哲太が、火9ドラマ『スティンガース』でベテラン刑事役を熱演中。ロックバンド「紅麗威甦」出身という異色の経歴を持ちながら、『あまちゃん』や『アウトレイジ』など変幻自在な演技で常に第一線で活躍。悪役やクセのある役柄に深みを与える、彼の唯一無二の存在感と人間的な魅力に迫る。
俳優・杉本哲太、キャリア40年超の「変幻自在」:火9ドラマで示す円熟と、悪役に見る人間性の深淵
2025年11月21日
今年、俳優デビューから40年を超えるキャリアを誇る杉本哲太(59)が、再びその存在感を強く示している。現在、フジテレビ系火曜21時枠で放送中のドラマ「スティンガース 警視庁おとり捜査検証室」では、主人公を支えるベテラン刑事として重厚な演技を見せ、視聴者からの注目を集めている。かつてロックンローラーとして芸能界の扉を開き、『あまちゃん』や『アウトレイジ』など、数々の話題作で強烈な印象を残してきた杉本哲太。その多岐にわたるキャリア変遷と、悪役やクセのある役柄に宿る独特の魅力に迫る。
現代犯罪に挑む「スティンガース」:関口欣二郎役の深み
杉本が現在出演している「スティンガース 警視庁おとり捜査検証室」は、闇バイト強盗やなりすまし詐欺など、現代社会が抱える複雑な犯罪に「おとり捜査」で対抗する特命係の活躍を描く作品だ。
本作で杉本が演じるのは、おとり捜査班のメンバーである関口欣二郎役。主演の森川葵をはじめ、藤井流星(WEST.)、本郷奏多、そして玉山鉄二といった実力派キャストが名を連ねる中で、杉本はベテラン刑事としての安定感と、時折見せる人間的な葛藤を巧みに表現している。クランクアップ時には、共演者たちが現場の充実ぶりを語るなど、杉本が現場の雰囲気を牽引していたことが窺える。
また、映像作品における彼の挑戦は止まらない。2025年にはフジテレビの「アイシー〜瞬間記憶捜査・柊班〜」など複数のドラマに出演したほか、待望の映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』では、盲目のガンマン・都丹庵士という難役に挑むことが発表されており、大きな話題を呼んでいる。
悪役・クセのある役が持つ「人間味」の秘密
杉本哲太の俳優としての評価を不動のものとしているのは、彼が演じる悪役や、一筋縄ではいかないクセのある役柄における「深み」である。
彼の演技の真髄は、単なるステレオタイプな悪人像に留まらず、動揺や焦りといった人間的な複雑な感情を表現する点にある。ヤクザや刑事といった強面の役柄を演じる際にも、その根底にある不器用さや、どこか憎めないキャラクター性を滲ませることで、視聴者に強いリアリティと共感をもたらす。
特に、2010年代の出演作を見ると、その変幻自在ぶりが際立つ。北野武監督の『アウトレイジ』(2010年)で見せた冷酷なヤクザから、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)でのコミカルなキャラクター、そして『HERO 第2期』(2014年)での敏腕検事役まで、その振り幅は計り知れない。
また、故・大杉漣氏の代役を務めた際に見せた、役柄に対する誠実なアプローチは、多くの共演者や視聴者から「大杉さんの雰囲気を壊さず面影を感じる」と高く評価された。この真摯な姿勢こそが、杉本哲太という俳優の「存在感」を形作っている秘密と言えるだろう。
ロックンローラー「紅麗威甦」から始まった原点
現在の円熟した演技からは想像しにくいかもしれないが、杉本哲太のキャリアの原点は、1981年にさかのぼる。彼は、横浜銀蠅一派のロックバンド「紅麗威甦(グリース)」のボーカルとして、リーゼント姿で芸能界にデビューした。
同年、TBSドラマ『茜さんのお弁当』で不良少年役として俳優活動をスタートさせると、1983年の映画『白蛇抄』で日本アカデミー賞新人賞を受賞し、一躍実力派俳優の道を歩み始めた。
若き日の杉本は、冷たく突き放したような尖った雰囲気を持っていたという。この初期に培われた反骨精神と、不器用な人間味が、後に彼が演じるアウトロー的な役柄に、類稀なリアリティと説得力を与える土壌となった。音楽活動で培った表現力は、演技というフィールドでさらに磨き上げられていったのだ。
40年を超える道のり、多面的な魅力
俳優業以外にも、杉本は近年、バラエティ番組「ぽかぽか」や「関ジャム 完全燃SHOW」などに積極的に出演し、ロックバンド時代のユニークなエピソードや、飾らないトークで新たなファン層を獲得している。
1980年代の音楽シーンから出発し、大河ドラマ『龍馬伝』『いだてん』、そして最新の「スティンガース」での刑事役に至るまで、杉本哲太は常に日本の映像界の第一線で活躍し続けてきた。彼のキャリアは、単なる俳優のそれではなく、時代の変化とともに求められる役柄を自在にこなし、作品に深みを与える「表現者」の歴史そのものである。
今後も、その独特な杉本哲太の存在感と、悪役の裏に隠された人間的な魅力が、日本のエンターテインメント界を支え続けることは間違いないだろう。