キオクシアホールディングス(株)
2025年11月21日

NVIDIAの5000億ドル暴落が引き金、キオクシアも15%急落

ニュース要約: 2025年11月、NVIDIAの時価総額は4900億ドル蒸発し、キオクシアも15%急落。AI需要への期待外れと米国経済への懸念が要因。ソロスのバブル理論を引用し、AI革新は真実だが過度な期待は誤解と分析。市場はAI投資の持続性に疑問を抱き始めた。投資家には安定企業を選び、AIを賢明に活用することを推奨。

事件の概要

2025年11月20日、NVIDIA(エヌビディア)の株価は大きく乱高下しました。時価総額は11月20日の4.75兆ドルから、翌21日には4.25兆ドルへと縮小し、約4900億ドル(約72兆円)の評価額が瞬時に消えました。これは2025年最大の週間下落幅となり、株価は高値から3.15%下落して180.64ドルで取引を終えました。

同じ頃、日本のキオクシアホールディングスの株価も11月14日に23%暴落(上場以来最大の下落率)したのに続き、21日の午前の取引では再び15%も下落しました。直接の理由は、同社の四半期業績見通しが、AI需要による業績拡大を期待していた投資家の思いを裏切ったためです。

この連鎖的な下落は、AIエコシステムがいかに脆いかを浮き彫りにしています。NVIDIAはAIチップの中心的サプライヤーであり、その動向がキオクシアのような下流のフラッシュメモリメーカーに直接的な影響を及ぼしたのです。

背景にある要因分析

NVIDIAの暴落には、複数の要因が絡んでいます。

  1. 米国経済への懸念:発表された米国の雇用統計が予想を下回り、景気後退を懸念する声が高まった。
  2. AIバブルへの疑念:AI関連株の估值が高すぎるのではないか、というバブル観が強まった。
  3. 中国ビジネスの不透明感:ジェンス・フンCEOが、最新チップ「Blackwell」の中国販売について、中国側と積極的な議論は行っていないと明言した。

これらの要因により、NVIDIAは第3四半期の売上高が市場予想を上回る570億ドルを記録したにもかかわらず、株価は売り圧力にさらされました。これは市場がAIへの投資が将来にわたって回収できるのか、その成長は持続可能なのかと疑問視し始めている証左です。

一方、キオクシアの下落は、より直接的な理由でした。同社が発表した営業利益見通し(2298億〜2698億円)が、アナリストが予想していた4200億円を大幅に下回ったのです。投資家たちは、AIデータセンターへの需要が同社のNAND型メモリ販売を牽引することを期待していましたが、現実はそうならなかったのです。

投資家への教訓

AIバブルの熱狂の中、投機家ジョージ・ソロスの「バブル理論」は参考になります。ソロスによれば、バブルは「①真実の趨勢(例:AIの破壊的イノベーション)」と「②それに伴う誤解(例:計算能力を無限に積み上げれば、世界は線形に変革できるという思い込み)」の2つから生まれます。

現在のAI市場は、「株価上昇 → 巨大企業がGPUを大量購入 → AIモデルが進化 → さらに株価が上昇」というサイクルが自己増殖していますが、今まさに「現実との突き合わせ」の局面を迎えています。一般の投資家は、キオログルのようにキャッシュフローが安定し、AIのポテンシャルも秘めた企業を選ぶことで、リスクを管理するべきでしょう。


出来事の振り返りと市場データ

2025年11月、NVIDIAの時価総額は急激に縮小しました。11月3日のピークである4.94兆ドルから、11月20日の終値では4.25兆ドルへ。わずか2週間で約7000億ドル(約102兆円)が蒸発し、株価は180.64ドルで取引を終えました。この損失規模は2025年最大です。

同期間、ウォール街全体も苦戦を強いられました。S&P 500種株価指数は1%下落、ナスダック総合指数は1.7%下落、ハイテク株は5%以上も下げました。

日本のフラッシュメモリ大手であるキオクシアも、NVIDIAの波紋をまともに受けました。11月21日、株価は15%暴落。これは2週間で2度目の大幅下落です。同社の9月四半期の営業利益は11%増加したものの、通年の見通しが上記の通り予想を大幅に下回り、AIデータセンター需要への期待が裏切られた形となりました。

以下に、両社の最近のパフォーマンスをまとめた表です(データは2025年11月21日時点)。

会社名時価総額の損失株価下落率(%)主な出来事主な理由
NVIDIA約4900億ドル13%11月20日AIバブルへの懸念、米国経済の不透明感
キオクシア約7500億円15%11月21日業績見通しがAI需要への期待に届かず

この連鎖反応は孤立した事象ではありません。他の半導体株、AMD(5%下落)、ブロードコム(3.5%下落)も軒並み下落しており、AIエコシステムの「相互依存関係」が浮き彫りになりました。


AIバブル論:ソロスの視点

ソロスは、すべてのスーパーバブルが「①その時点では疑いようのない真実の趨勢」と「②それに伴う誤解」から生まれると説きました。AIはまさにその典型です。AIがもたらす破壊的変革(大規模モデルによる生産性向上など)は真実ですが、「計算能力さえ積み重ねれば、世界は無限に進化し続ける」という思い込みが「誤解」にあたります。

NVIDIAをめぐっては、強気派(ブル)が「マイクロソフト、OpenAI、オラクルなどの巨大企業がGPUを買い続ける限り、NVIDIAの神話は続く」と信じています。一方、弱気派(ベア)は、その売上高は「エコシステム内を循環しているだけの同じお金」だと見なします。

最近の暴落は、この「バブルか否か」の議論に火をつけました。NVIDIAの第3四半期の売上高は予想を上回ったにもかかわらず株価は下落。市場は「AIバブル」に亀裂が入り始めたと感じているのです。

ソロスの哲学から学べる教訓は以下の通りです。

  1. AIを完全に否定しないこと:その破壊性は本物。デマだと見なせば、時代の大きな波を乗り遅れる。
  2. 「誤解」を識別すること:技術の進化(モデルの進歩)と、ウォール街が作り出した神話(估值の無限膨張)を区別する。
  3. バブルの甘い部分を味わうこと:ソロスは「泡が見えてきたら、私は躊躇なく飛び込んで買う」と言います。しかし、現実がその誤解を支えられなくなる前に、利益を確定して撤退する。これは人間の本能に反する、非常に難しい行動です。

バブルは崩壊したのか?様々な視点のバランス

市場の見解は大きく分かれています。

  • 強気派の視点:AIへの投資リターンは非常に強力。NVIDIAの利益はバブルへの恐怖を物語っておらず、売上成長は予想を上回っている。
  • 弱気派の視点:估值が高すぎる。S&P 500指数は年間で14%上昇し、ハイテク株は4月の底値から35%も上がったが、最近の調整はバブルの兆候だ。「大暴落のグレート・ショート」で有名なマイケル・バリーがNVIDIAやPalantirに対して1兆ドル規模の空売りポジションを組んだと報じられた(彼の見解は批判されているが)ことは、市場の疑念を反映している。

対照的な見方もあります。アルファベット(グーグル)のCEOは1兆ドル規模のAI投資にバブルのリスクを認めつつ、「仮にバブルが崩壊すれば、すべての会社が影響を受ける」と指摘しています。英科学誌ネイチャーは、「もしバブルが弾ければ研究資金は枯渇するかもしれないが、現時点では単なる調整だろう」と分析しています。

歴史を振り返ると、技術革命はしばしばバブルを通じてインフラを構築してきました。2000年代初頭のITバブルの後、今日のデジタル経済の基盤が築かれたのがその好例です。AIバブルもまた「必然的かつ必要」なプロセスなのかもしれませんが、警戒は怠れません。


私たち一般人の立ち回り方

  1. 考え方として:「自分も間違う可能性がある(誤謬性)」を前提に、物事を多角的に捉えること。AIは有用であると認識しつつ、それに伴う過剰な宣伝や誇張には警鐘を鳴らす姿勢が必要です。
  2. 投資として:攻守兼備の銘柄を探すこと。例えば、グーグル(Alphabet)は、既存事業で安定したキャッシュフローを生み出しつつ、AI分野でもトップクラスの力を持つ理想的な例です。投機家が「出口のすぐそばで踊っている」なら、一般投資家は高估值の銘柄を避ける賢明さが必要です。
  3. 仕事として:AIを使って自分の「独自性」を強化すること。仕事の焦点を「アウトプットの量」から、「品質、センス、そして判断力」へとシフトさせましょう。「良い文章」の条件をAIに判断させるのではなく、自分が「良い文章」を判断し、AIに作らせるのです。
  4. 個人の成長として:AIを活用して自分の生産性を高め、ポジティブなフィードバックループ(例:AIで質の高いコンテンツを作成 → フォロワーが増える → モチベーションが上がる → さらに質の高いコンテンツを作成)を自分の中に構築すること。

結論として、NVIDIAの暴落がキオクシアの株価に連鎖したものの、AIという大きなトレンドが終わったわけではありません。バブルの中にもチャンスは眠っています。賢明な投資家とは、バブルを恐れて逃げるのではなく、サーファーのように波に乗って楽しむ人のことなのかもしれません。

参考情報源

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