女優・杏、国際的な視野と多才な表現力で新境地へ：「朝ドラ妹役」から10年、声優業にも果敢な挑戦

2025年11月20日

女優の杏（渡辺杏）が、そのキャリアにおいて新たなフェーズを迎えている。2022年秋からのフランス・パリへの移住と日本との二拠点生活を基盤とし、映像作品のみならず、近年は声優チャレンジにも意欲的に取り組んでいる。かつてNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』でヒロインを務め、長丁場の撮影を乗り越えた経験を持つ彼女は、今や国際的な視点と多角的な表現力を兼ね備えた稀有な存在として、その動向に注目が集まっている。

「朝ドラ妹役」が培った女優の土台

杏の女優としての確固たる地位は、2013年後期の朝ドラ『ごちそうさん』での主演経験に深く根差している。長丁場でのヒロイン役は、当時「新人ではなくキャリアを備えた方に」という理由で抜擢されたものの、大きなプレッシャーであったと後に語る杏の事だが、この作品を通じて、家族の絆や地域文化を描く中で、演技力だけでなく人間性や責任感を大きく成長させた。

また、『ごちそうさん』では、主人公を支える「朝ドラ妹役」を演じた女優も話題となったが、杏自身も朝ドラという長期間の撮影を経験したことで、演技への真剣さとプロとしての責任感を増したと振り返っている。

この土台の上に、杏はキャリアを深化させてきた。近年では、2024年公開のヒューマンミステリー『かくしごと』などで、役の過去が深く語られない難役に真摯に向き合い、「私と全然違うからこそ、辛かっただろうなと寄り添えた」と語るように、年齢と経験を重ねた今だからこそ可能な深みのある演技を披露し、高い評価を得ている。『翔んで埼玉 ～琵琶湖より愛をこめて～』や『キングダム 運命の炎』といったエンターテインメント性の高い作品にも出演し、その多才ぶりを発揮している。

表現者としての「声優チャレンジ」

映像作品での実績を重ねる一方で、杏は2020年代に入り、表現者としての新たな領域、声優チャレンジにも踏み込んでいる。本人も「声のお仕事に興味があった」と語るこの挑戦は、女優業の延長線上に位置づけられる。声優初挑戦は吹き替えから始まり、アニメ映画『鹿の王 ユナと約束の旅』などに出演。その声の表現力は、女優として培ってきた確かな演技力に裏打ちされている。

声優としての評価はまだ新しい挑戦段階ではあるものの、杏の真摯な姿勢は声優業界からも好意的に受け止められている。2025年には声優イベントやトークショーへの出演も増えており、業界への積極的な関与が見られる。これは、表現の幅を広げ、多才な才能を活かした新境地を切り開きたいという杏の強い意志の表れだと言えるだろう。

国際派女優としての現在地：パリからの発信

杏の活動の特筆すべき点は、その活動拠点が日本国内に留まらないことにある。2022年秋にフランス・パリへ移住して以降、3児の母として子育てと仕事を両立させる二拠点生活を実践。「家具もそろって、ようやくスタートラインに立った」と語るように、異文化での生活基盤を確立しつつある。

フランスでの生活実体験は、彼女の国際的な視野をさらに広げている。2025年7月には、自身のYouTubeチャンネルを通じてパリの猛暑対策（クーラーがない住宅事情や景観保護条例）について発信し、日本の視聴者に具体的な異文化の現実を伝えた。また、同年7月には初めての絵本翻訳に携わり、フランスで本が軽減税率の対象であり、生活必需品として認識されている文化的な背景を紹介。国際的な視点から文化や生活について発信し、日仏間の文化交流の橋渡し役を担っている。

日本語、英語、フランス語（日常会話程度）を操る多才さを持つ杏の事は、パリ・コレクション出演経験など国際的なキャリアの素地を活かし、異文化理解と教育観の発信も積極的に行っている。

多才なキャリアの深化と今後の期待

「朝ドラ妹役」として国民的な知名度を得てから約10年。女優・杏は、多忙な国際生活の中で、演技の深化と声優チャレンジという新たな表現の模索を並行して進めている。知性を感じさせる佇まいと爽やかでチャーミングな人柄は、日本のエンターテインメント界において独自のポジションを確立している。

フランスと日本を舞台に、多様な経験を糧とする杏は、今後も表現者として、そして国際的な文化の担い手として、さらなる活躍が期待される。彼女の挑戦は、日本の芸能界におけるキャリア形成の新たなモデルケースとなりつつある。