ドルーリー朱瑛里、米国名門ワシントン大へ!「世界基準」のNCAA挑戦
ニュース要約: 日本陸上界の次世代エース、ドルーリー朱瑛里選手(津山高校)が、米国の名門ワシントン大学に進学することを発表した。2026年秋からNCAAディビジョンIで学業と競技を両立させる「世界基準」の挑戦を開始する。日本のトレーニング文化とは異なる環境で、彼女がどのように進化を遂げるのか、その戦略的な決断と未来への期待を追う。
日本陸上界の至宝、米国名門大へ――ドルーリー朱瑛里が選んだ「世界基準」の挑戦
去る11月13日、日本陸上界が誇る次世代のスターランナー、ドルーリー朱瑛里選手(津山高校3年)の進路が正式に発表された。彼女が選んだのは、アメリカ・シアトルに拠点を置く名門、ワシントン大学(University of Washington)である。2026年秋から同大学の陸上部(ハスキーズ)に加入し、学業と競技を両立させるNCAAディビジョンI(D1)での挑戦をスタートさせる。
ドルーリー選手は、中学時代に全国都道府県対抗駅伝で見せた「17人抜き」という衝撃的な快挙で一躍脚光を浴びた。高校進学後もその勢いは衰えず、インターハイ1500mでの活躍に加え、U20アジア選手権1500mで金メダルを獲得するなど、目覚ましい成長を遂げている。正真正銘、日本の女子中長距離界の未来を担う存在だ。
なぜ、今、アメリカの名門なのか
ドルーリー選手がワシントン大学という選択をした背景には、彼女自身の国際的なルーツ(カナダ人の父と日本人の母)もさることながら、競技者としての深謀遠慮が色濃く見られる。
ワシントン大学は、世界大学ランキングでも常にトップクラスに名を連ねる学術的な名門であると同時に、NCAA D1において陸上競技でも屈指の強豪として知られている。国内の大学や実業団に進むのが主流だった日本のトップアスリートにとって、このNCAAという舞台は、文字通り「世界」への最短距離となりつつある。
最大の魅力は、競技と学業を高い水準で両立できる環境だ。日本の実業団や大学スポーツでは、競技優先の傾向が強いが、NCAAでは徹底した科学的トレーニング管理のもと、学業成績が厳しく求められる。ドルーリー選手は、世界トップレベルの教育を受けながら、競技においても世界の精鋭たちと日常的に切磋琢磨できる環境を選んだ。これは、単に競技力を向上させるだけでなく、多角的な視野とグローバルな感覚を身につけるための戦略的な判断と言えるだろう。
日本の「量」からアメリカの「質」への適応
しかし、この挑戦は期待ばかりではない。ドルーリー選手には、乗り越えるべき大きな壁が存在する。それは、日米の練習文化の根深い違いへの適応だ。
日本の陸上界、特に中長距離においては、長時間の集団練習や、精神的なタフさを養うための「量」を重視する傾向が依然として強い。一方で、NCAAのトレーニングは「質」と「効率」を最優先する。最新の科学的知見に基づいた個別化されたメニュー、厳格なリカバリー管理、そして栄養戦略が組み込まれており、練習の強度自体は高いが、合理性が追求される。
日本で培った粘り強さや継続力はドルーリー選手の大きな強みだが、渡米後は、自己管理能力や、与えられたトレーニングの意図を深く理解する主体性がより強く求められる。言語や文化の違いによるストレスに加え、トレーニング体系の変化にどれだけスムーズに適応できるかが、NCAAでの成功の鍵となるだろう。
特にワシントン大学は、2024年からNCAA屈指の強豪カンファレンスであるビッグテンに加盟しており、競技レベルは極めて高い。彼女が世界のトップランナーたちの中で存在感を示すためには、この文化的なギャップを成長の糧とする力が必要となる。
若きアスリートに開かれた「新たな道」
ドルーリー選手のワシントン大学進学は、彼女個人のキャリアにおける大きな一歩であるだけでなく、日本陸上界全体にとっても重要な意義を持つ。
これまで、日本の有望な若手アスリートが高校卒業直後にNCAAのトップティア校に進むケースは稀であった。彼女の成功は、国内の大学や実業団を経由する従来のルートとは異なる、「世界基準」でキャリアを構築する新たな道を、後の世代の選手たちに示すことになる。
2025年11月現在、日本陸上界の期待を一身に背負う17歳の決断は、未来への大きな可能性を秘めている。名門ワシントン大学の環境で、世界レベルの競技者として、そしてグローバルな視点を持つ人間として、ドルーリー朱瑛里がどのように進化を遂げるのか。その挑戦の行方を、我々は固唾を飲んで見守りたい。
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