インフレ時代に挑む築地銀だこ:価格改定と「ハイボール酒場」が牽引する多角化戦略
ニュース要約: 原材料高騰と人件費上昇に直面する築地銀だこは、複数回の価格改定を実施。しかし、単なる値上げに留まらず、限定メニューのプレミアム化、異業種コラボによるファン層拡大、そして高収益な「銀だこハイボール酒場」の積極展開を通じて、ブランド価値と収益基盤の強化を急いでいる。インフレ下での成長を目指す同社の多角的な挑戦を追う。
プレミアム化と多角化で挑むインフレ時代:築地銀だこ、価格改定を超えた成長戦略の軌跡
【2025年11月28日】
築地銀だこを展開する株式会社ホットランドは、原材料高騰と人件費上昇が続くインフレ環境下で、複数回の価格改定に踏み切らざるを得ない状況にある。しかし、同社は単なるコスト転嫁に留まらず、限定メニューのプレミアム化、異業種との多角的なコラボレーション、そして高収益な酒場業態「銀だこハイボール酒場」への積極的な投資を通じて、ブランド価値と収益基盤の強化を図っている。国民食とも言える「銀だこ」が、価格上昇という逆風の中でいかに成長戦略を描いているのか、その多角的な取り組みを追う。
インフレの波と「おやつ」からの脱却
2025年11月現在、銀だこは直近の2025年12月に予定されている価格改定を含め、2023年以降、相次ぐ値上げを実施している。この背景には、円安の進行、世界的な小麦の不作、そして主力であるタコの仕入れ価格高騰、さらに物流費や光熱費の上昇といった複合的な要因がある。企業努力によるコスト増の吸収が限界に達し、定番の「ぜったいうまい!! たこ焼(ソース)」を含む主力商品の価格が見直されてきた。
これにより、たこ焼き8個入りの価格は上昇し、かつての「手軽なおやつ」としての位置づけから変化しつつある。一部の顧客からは「割高感」や「たこ焼き離れ」を懸念する声も聞かれるが、同社は価格に見合う「プレミアム感」の創出を急務とし、既存店売上高を前年比105%以上の水準で維持するための販売促進策を強化している。
冬の味覚を捉える限定メニューの戦略的役割
価格競争から脱し、顧客の購買意欲を維持する鍵となっているのが、季節限定商品の投入である。特に冬期は、濃厚な味わいと贅沢なトッピングを特徴とするプレミアムたこ焼が、定番のソース味との差別化を図る。
その代表格が、毎年高い人気を集める「焦がし醤油 もちチーズ明太」である。焦がし醤油だれの香ばしさに加え、トロトロの「もちソース」、モッツァレラチーズ、そして明太マヨと乾燥明太子の組み合わせは、冬の味覚である「もち」と「明太子」を活かし、プレミアムな食体験を提供する。この戦略は、季節感のある商品を求める層の支持を集め、定番商品の値上げによる客離れを防ぐ重要な役割を担っている。
さらに、銀だこは、スイーツ分野でも冬の需要を取り込んでいる。「クロワッサンたい焼 安納芋あん」や「薄皮たい焼 鳴門金時 芋あん」など、冬の味覚である「芋」を活かしたたい焼き商品群を展開。これは、たこ焼きとは異なる食シーンや、年末年始の贈答需要を意識したものであり、多様な顧客層の獲得に寄与している。
異業種連携によるファン層の多角的な拡大
ブランド認知と顧客層の拡大戦略において、銀だこは異業種との積極的なコラボレーションを展開している。
2025年5月から6月にかけては、人気アニメ「鬼滅の刃」とのコラボキャンペーンを実施し、劇場版リバイバル上映と連携。ufotable描き下ろしイラストを用いた限定カード付きメニューやグッズを販売することで、若年層やアニメファン層の集客に成功した。
また、2024年からは競馬情報サービス「netkeiba」と協業し、特に大井競馬場限定でアマンテビアンコ号をイメージした特別なたこ焼きを発売。これは競馬ファンという特定の層を取り込む試みだ。さらに、おやつカンパニーとコラボした「ベビースターラーメン丸(築地銀だこ たこ焼ソース味)」の発売は、たこ焼きの伝統的な味わいを別ジャンルのスナック菓子で展開し、幅広い食品好き層へのアプローチを可能にした。これらの多角的なコラボ戦略は、ブランドの多様な価値を高め、異なるターゲット層を網羅するマーケティング手法として、その効果が注目されている。
成長の牽引役「ハイボール酒場」と新業態への注力
銀だこの将来的な成長を牽引するのは、高収益が期待できる酒場業態である。現在、「銀だこハイボール酒場」は全国で88店舗を展開しており、同社はこの酒場業態の出店を年間30店舗以上のペースで加速させる計画だ。たこ焼きを「おやつ」から「酒の肴」へと昇華させることで、客単価と回転率の向上を図り、収益構造を強化している。
国内展開においては、地方都市への出店も積極的であり、2025年12月には北海道帯広市に新店舗がオープンするなど、地域密着型の展開も継続している。海外展開については、米国を中心に7店舗体制(2024年末時点)と慎重ながらも進めているが、当面は国内の酒場業態の成長が主力となる見通しだ。
原材料高騰という難題に直面しながらも、銀だこは限定商品のプレミアム化、異業種コラボによるファン層の多様化、そして「銀だこハイボール酒場」に代表される高収益モデルへの転換を急いでいる。単なるファストフードチェーンに留まらず、多様な食体験を提供するプレミアムブランドへと進化する銀だこの挑戦は、インフレ時代の外食産業における一つのモデルケースとなりうるだろう。