栃木シティFC、異例の3年連続J2昇格!快挙の裏で問われる「経営とスタジアム」の壁
ニュース要約: 栃木シティFCはJ3初参戦でJ2への自動昇格を確定させ、地域リーグからわずか3年でJ2へ駆け上がる異例の快挙を達成した。しかし、喜びの裏側には、ホームスタジアムを巡る法的・財政的な問題や、J2で定着するための経営基盤強化という大きな壁が立ちはだかっている。クラブは地域密着の成功モデルを目指し、体制固めを急ぐ。
【深層】栃木シティ、J2昇格の快挙と越えるべき壁:3年連続昇格の先に待つ「経営のJ2」
栃木シティFCが、クラブ史上初のJ2リーグ昇格という歴史的な快挙を成し遂げた。2025年11月22日に行われた明治安田J3リーグ第37節、ホームのAC長野パルセイロ戦で3-0と快勝。この勝利により、J3初参戦ながら自動昇格圏内の2位以内を確定させた。地域リーグからJFL、そしてJ3リーグを経て、わずか3年間でJ2の舞台へと駆け上がるという異例のスピード昇格は、日本のサッカー界に新たなサクセスストーリーを刻んだ。
地域リーグからJ2へ 驚異の「3年連続昇格」
今矢直城監督率いる栃木シティは、2024年にJFLを制覇し、満を持して2025年シーズンにJ3に参入。アグレッシブな戦術と経験豊富なベテラン、そして若手の融合が見事に機能し、シーズンを通して首位争いを展開した。
昇格を決定づけた長野戦は、序盤こそ拮抗した展開となったが、後半に一気にギアを上げた。均衡を破ったのは後半56分、セットプレーからDFマテイ・ヨニッチが値千金の先制弾を叩き込む。さらにその2分後、鈴木裕斗がJリーグ初ゴールを決め、リードを広げた。試合終了間際のアディショナルタイムには吉田篤志がダメ押し点を奪い、熱狂的な地元サポーターの前で3-0の完封勝利を飾った。
この昇格劇の背景には、経営基盤の強化と地域密着への徹底した取り組みがある。栃木シティFCは、栃木市や県南地域をホームタウンとし、積極的に無料招待キャンペーンなどを実施。JFL時代には9,000人超の観客動員を記録するなど、地域の熱狂的な支持を集め、それがチームの原動力となった。クラブが掲げる「地域社会との連携強化」の理念が、競技力向上と相乗効果を生んだ形だ。
J2の厳しさ、立ちはだかる「スタジアム問題」
しかし、喜びの裏側には、J2というさらなる高みで戦うために避けて通れない経営面と施設面の課題が横たわる。
まず、J3参入時より指摘されていたのが、ホームスタジアム「CITY FOOTBALL STATION」を巡る法的・財政的な問題だ。5,129人収容のこのスタジアムは、クラブの努力によって整備されたものの、固定資産税や公園使用料の免除に関する履行がないとして、クラブ関連企業が栃木市を提訴するという異例の事態に発展している。
J2の舞台で安定した経営を行うには、観客動員数の持続的な確保と、スポンサー収入の更なる増加が不可欠だ。スタジアム問題の早期解決と、安定した財政基盤の確立は、栃木シティFCがJ2で定着するための最優先事項となる。クラブは引き続き、多角的な収益機会を模索し、短期的な資金難に陥らない強固な基盤を築くことが求められる。
2026年シーズンに向けた体制固め
J2昇格を果たした栃木シティは、間もなく2026年シーズンに向けた準備を開始する。最大の焦点は、今シーズンチームを牽引した主力選手の引き留めと、今矢監督の去就だ。
現時点(2025年11月23日現在)で、今矢監督はJ3初年度での昇格という偉業を達成しており、クラブ史上初の「同一監督4シーズン連続」指揮の可能性が高いと見られている。
また、攻撃の核となったFWピーター・ウタカや、FC町田ゼルビアからの期限付き移籍で貢献したMFバスケス・バイロンの契約延長交渉は急務だ。特にバイロンは2026年1月末までの期限付き移籍であり、完全移籍への移行が実現するか否かが、来シーズンの戦力を大きく左右する。高いレベルでの戦いが求められるJ2において、経験豊富な彼らの残留は、戦術の継続性とチームの安定に直結する。
地域密着の成功モデルへ
栃木シティの快進撃は、単なるスポーツの結果に留まらず、地域社会の活性化に大きな影響を与えている。クラブは、青少年育成や地域の団結を目指す理念を掲げ、スポーツを通じた社会貢献にも注力してきた。
J3での成功は、地域との強い結びつきがプロクラブの成長を支えるという模範を示した。しかし、J2は経営面、競技面ともにJ3とは別次元の厳しさが待ち受ける。
栃木シティFCが、この勢いを維持しつつ、経営上の課題をクリアし、地域密着型の成功モデルとしてJ2の舞台で輝き続けることができるか。日本のサッカーファン、そして何より地元栃木の熱狂的なサポーターは、クラブの新たな挑戦に熱い視線を送っている。(了)