【深層分析】メタプラネット株価8割超急落の裏側:規制の影とEVOファンドの構造的圧力
ニュース要約: ビットコイン戦略を掲げるメタプラネット(3350)の株価が、年初来高値から8割以上急落。好決算にもかかわらず、EVOファンドによる大規模な売り圧力と、JPXによる暗号資産トレジャリー企業への規制強化報道が重なり、投資家心理を冷やし続けている。構造的な需給の歪みと規制リスクが、今後の焦点となる。
【深度分析】「ビットコイン戦略」企業に何が起きているか—メタプラネット株価、急落の構造的要因と規制の影
2025年11月18日、東京株式市場で、(株)メタプラネット(3350)の株価が再び大幅な下落に見舞われた。前日比で10%を超える急落を記録し、株価は330円台後半で推移。今年6月に記録した年初来高値1,930円から、わずか数ヶ月で実に8割以上も価値を失うという歴史的な急落劇を演じている。
同社は、日本企業としては極めて異例な「ビットコイン戦略」を掲げ、大量のビットコイン(BTC)を資産として保有する経営モデルに特化している。その特異性ゆえに市場の注目を集めてきたが、現在の株価は、好業績とは裏腹に、短期的な需給と外部環境リスクに大きく揺さぶられている状況だ。
構造的な売り圧力:EVOファンドと規制報道
今回の急落の背景には、複数の複雑な要因が絡み合っている。
最も大きな構造的要因の一つが、需給の悪化である。市場では、EVO FUND(エボファンド)による大規模な株式売却が継続的な下押し圧力となっていることが指摘されている。エボファンドは、高値圏での空売りとMSワラント(行使価額修正条項付き新株予約権)を活用し、大量の株式を市場に放出することで、株価の下落スパイラルを引き起こしてきた。
さらに、ここに規制リスクが追い打ちをかけた。11月中旬、日本取引所グループ(JPX)が「暗号資産トレジャリー」企業、すなわちメタプラネットのようなビットコインを大量保有する企業に対する規制強化を検討しているとの報道が浮上した。この報道を受けて、市場の不安は一気に高まり、株価は一時的に急落。同社社長が報道内容に反論する声明を発表したものの、当局が市場のボラティリティ抑制を狙った動きを見せている事実は、投資家心理を冷やし続けている。
好決算を打ち消す「材料出尽くし」の罠
特筆すべきは、メタプラネットのファンダメンタルズ自体は堅調である点だ。同社は2025年12月期第3四半期で135億円の黒字を計上し、連結業績予想も売上高、営業利益ともに大幅に上方修正している。自己資本比率も55.9%と安定しており、業績面だけで見れば、株価はむしろ上昇基調にあってもおかしくない。
しかし、市場は好材料に反応しなかった。好決算発表前の9月には株価が急騰し、既に期待が織り込まれていたため、正式な発表後に利益確定売りが集中する「材料出尽くし」現象が発生したのだ。
この乖離は、同社の事業がビットコイン価格の変動に極度に依存している点に起因する。同社はビットコイン保有量を30,823BTCまで増加させており、その収益活動は暗号資産価格に大きくエクスポーズされている。この高いボラティリティこそが、投資家にとって最大の不確定要素となっている。
特異な高ボラティリティ銘柄の今後
現在の株価は、テクニカル分析上、バリュー領域に深く落ち込んでいる可能性が指摘されている一方で、短期的には極めて不安定な状態だ。直近の急落後、一時的な反発の兆しも見られたが、依然として下落トレンドが優勢であり、日足の中期的な移動平均線(HMA)が下限抵抗帯として機能するかどうかが焦点となっている。このラインを下抜けた場合、300円台前半までのさらなる下落リスクも視野に入ってくる。
投資家の間では、「数年後の上昇を期待して長期保有する」という意見と、「短期的な損失への懸念」が交錯している。
メタプラネットは、日本市場において「ビットコイン戦略」という新たなビジネスモデルのフロンティアを切り開いた。しかし、その革新性は、JPXや金融庁といった規制当局の動向、そして暗号資産市場全体の高ボラティリティという、二重のリスクを常に内包している。
市場参加者は、企業の好業績という「光」だけでなく、需給の歪みや規制強化の可能性という「影」も深く理解し、ビットコイン価格の動向とテクニカルな重要水準を慎重に見極めることが、今後求められる局面と言えるだろう。