異例の「同時警報」発令:大阪・千葉でコロナ・インフル猛威、医療逼迫深刻化
ニュース要約: 2025年冬、新型コロナとインフルエンザの同時流行が例年より大幅に前倒しで深刻化。特に大阪府と千葉県で警報レベルを超え、地域医療体制が逼迫している。両ウイルスの症状が類似し識別困難なため、自己判断せず速やかな検査と重症化予防のための同時接種が強く推奨されている。
コロナ・インフル同時警報発令:大阪・千葉で医療逼迫、症状の類似で検査不可欠
(2025年11月21日付 朝刊)
全国的な感染症の状況が例年になく早期に深刻化している。厚生労働省や各自治体の発表によると、2025年冬は新型コロナウイルス感染症(コロナ)の再拡大が続くなか、インフルエンザの流行が例年より大幅に前倒しで到来。特に大阪府と千葉県ではインフルエンザの定点報告数が警報レベルを大きく超え、両ウイルスの同時流行によって地域医療体制が深刻な逼迫(ひっぱく)に直面している。
早期警報レベル超え、大阪・千葉で医療負荷増大
感染症サーベイランスの最新データ(第46週:11月10日~16日)によれば、千葉県ではインフルエンザの定点当たり患者報告数が53.47に達し、警報基準値(30)を大幅に上回ったため、11月19日に「インフルエンザ警報」が発令された。これは例年より約5週間早い異例の事態である。
同様に大阪府においても、定点報告数は31.57となり、警報レベルを突破。前週から急増しており、府内全域で感染拡大が確認されている。大阪府の状況は全国平均(21.82)をも上回り、例年より約2カ月早い流行期入りとなった。
このインフルエンザの急速な拡大に加え、コロナの入院患者数も高止まりが続いており、医療機関では「トリプル流行」(コロナ、インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎など)への懸念が高まっている。
大阪府内の発熱外来を担当する医師は、「ここ数週間で発熱患者の数は急増し、今週に入ってインフルエンザ患者がさらに増えた。コロナとインフルの両方が重なり、外来のキャパシティが限界に近い」と証言する。医療機関の負担軽減策として、オンライン診療の利用が急増しており、インフルエンザのオンライン診療患者数は例年の約40倍に上る地域もあるという。
「インフル症状」と「コロナ症状」の識別困難
同時流行の深刻な問題の一つは、両感染症の症状が極めて類似している点だ。発熱、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、関節痛や筋肉痛など、共通する症状が多く、患者自身が自宅でインフル 症状かコロナかを判別することは非常に難しい。
専門家は、自己診断のポイントとして以下の傾向を指摘する。
- インフルエンザの特徴的な症状: 38℃以上の急激な高熱と、それに伴う強い悪寒、全身の関節痛や筋肉痛が典型的である。発症も急速に進む傾向がある。
- コロナの特徴的な症状: 2025年冬の主流株では、強い喉の痛み(「カミソリで切られるような痛み」と表現されることも)や、中等度だが長引く倦怠感が頻出する。息苦しさや消化器症状(下痢や吐き気)も比較的よく見られる。
しかし、これらの特徴はあくまで傾向であり、実際には症状が重なるケースや、両方に同時感染する事例も報告されている。特に高齢者や基礎疾患を持つ方は重症化リスクが高いため、症状が少しでも重いと感じた場合や、自己判断に迷う場合は、速やかに医療機関で検査を受けることが強く推奨されている。
重症化予防へ、同時接種の公的支援拡充
感染拡大を食い止め、重症化を防ぐため、大阪府および千葉県を含む全国各地で、コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が強く推奨されている。
厚生労働省は、同時接種が重症化リスクを減らす効果が期待できるとしており、接種間隔を空ける必要はないと指導している。特に65歳以上の高齢者に対しては、大阪府、千葉県ともに公的助成が整備されており、インフルエンザ接種費用が軽減されるなど、経済的負担の軽減が図られている。
各自治体は、住民に対し、咳エチケットやこまめな手洗い・手指消毒の徹底に加え、発熱などの症状がある場合は外出を控え、自己判断せずに医療機関へ相談するよう呼びかけている。例年より早いペースで進む感染症の波に対し、社会全体で警戒レベルを引き上げることが求められている。