Link-U株価急落の深層—好業績と市場評価の45%乖離
ニュース要約: Link-Uグループ(4446)の株価が、堅調な業績予想にもかかわらず、高値から約45%も急落している。原因は、業績悪化ではなく、高すぎるバリュエーションと信用買残が引き起こした需給の歪みと市場の過熱にある。同社は2026年7月期も増収増益を見込むなど成長ストーリーは維持されており、今後は利益の安定化と次期決算発表が市場評価回復の鍵となる。
Link-Uグループ株価、高値から急落の背景を探る—好業績と乖離する市場の評価
2025年11月18日現在、ITサービス企業のLink-Uグループ(4446)の株価が、高値圏から急激な調整局面を迎えている。直近の業績は堅調な増収増益を達成しており、来期もさらなる成長が見込まれているにもかかわらず、株価は年初来高値から約45%も下落するという、業績と市場評価の間に大きな乖離が生じている状況だ。
本稿では、この株価急落の背景にある市場心理と需給の歪み、そして同社の本質的な成長力について分析する。
1. 需給が引き起こした「ボラティリティの罠」
Link-Uグループの株価は、今年10月15日に1,814円という年初来高値を記録した。しかし、11月に入ると調整色が強まり、現在(11月18日)は1,000円台前半で推移している。短期間で約半値近くまで下落した背景には、業績の悪化よりも、むしろ市場が過熱していたことによる需給の歪みが指摘される。
同社の株価は、実績PER(株価収益率)が90倍を超え、PBR(株価純資産倍率)も5倍を超えるという、高いバリュエーションで推移していた。これは、将来の成長性を先取りした評価であり、利益確定の売りが出やすい水準であったと言える。さらに、配当利回りがゼロであることから、短期的なキャピタルゲインを狙う投資家が多く集まり、ボラティリティを高めていた。
特に注目すべきは、信用取引の動向だ。信用買残が高水準にあり、信用倍率も14倍を超えるなど、短期的な値動きに敏感なトレーダーが市場を支配している状況が窺える。このような環境下では、わずかなネガティブ材料や、単なる利益確定の動きが、連鎖的な売却を誘発し、株価が急落しやすい「ボラティリティの罠」に陥る。
2. 堅調な業績と成長期待の維持
株価が大きく調整する一方で、同社の業績は堅調に推移している。2025年7月期の連結決算では、リカーリングサービス(継続課金型)の拡大が寄与し、売上収益は前年同期比31.7%増の48.35億円、営業利益も11.6%増の3.48億円を達成した。
確かに、2025年7月期は当初の業績予想を下方修正した経緯がある。収益性の高い既存事業の計画未達や、新規事業のローンチ延期がその主因であり、市場の失望を招いた一因となった。しかし、四半期ベースで見ると、直近の第4四半期(5-7月期)は黒字に浮上しており、損益率も大幅に改善するなど、回復基調にあることが示唆されている。
さらに、経営陣は中期的な成長に自信を見せている。2026年7月期の業績予想では、売上高60億円、営業利益5.8億円と、さらなる増収増益を見込んでおり、過去最高益の更新さえ視野に入れている。グローバル展開や自社IPの強化といった成長戦略は継続されており、中長期的な成長ストーリーは崩れていないと評価できる。
3. 今後の焦点:成長の「安定性」
現在の株価下落は、短期的な市場の過熱と、予想の下方修正に対する過度な反応が主な原因であり、企業の本質的な競争力が損なわれたわけではない。しかし、投資家が今後も成長性に期待し続けるためには、いくつかの課題をクリアする必要がある。
一つは、EPS(1株当たり利益)の安定化だ。売上高は右肩上がりで成長しているものの、利益の変動が大きく、安定性に課題がある。今後は、リカーリング収益のさらなる拡大を通じ、利益構造を安定させることが求められる。
もう一つの焦点は、来月12日に予定されている第1四半期決算発表だ。ここで、2026年7月期に対する強気な予想の確度を市場に示すことができれば、調整局面を脱し、改めて成長株として評価される可能性は高い。
Link-Uグループの株価は、短期的には需給による調整リスクが残るものの、中長期的な視点では、業績の安定性と成長性が投資判断の鍵を握る。投資家には、短期的な値動きに惑わされることなく、冷静に企業価値を見極める姿勢が求められる。