KOKUSAI ELECTRIC株価暴落の真相:半導体市場の調整と「期ずれ」の衝撃
ニュース要約: 半導体製造装置大手KOKUSAI ELECTRIC(6525)の株価が急落。2026年3月期の業績予想を大幅に下方修正したことが原因だ。特にNAND/DRAM向け装置の「期ずれ」により、最終利益は前期比22.5%減となる見通し。短期的には売りに押されるものの、高い財務健全性と中長期的な成長期待は残されており、この調整局面を「買い場」と捉えるかどうかが焦点となっている。
【深度リポート】KOKUSAI ELECTRIC(6525)株価急落の衝撃:半導体市場の「期ずれ」と成長期待の行方
2025年11月、日本のハイテク株の一角を占める半導体製造装置大手、(株)KOKUSAI ELECTRIC(6525、KOKUSAI ELECTRIC)の株価が急落し、市場に大きな動揺が走っている。直近の年初来高値6,135円(11月10日)から一転、11月18日には一時4,096円まで下落。前日比マイナス8%を超える下げ幅は、同社に対する市場の期待値が一時的に剥落したことを示唆している。
今回の急落の背景にあるのは、同社が11月11日に発表した2026年3月期の業績予想の大幅な下方修正だ。成長産業の牽引役として期待されてきた半導体関連銘柄に何が起こっているのか。その原因と今後の見通しを検証する。
業績下方修正の衝撃:「期ずれ」が利益を直撃
KOKUSAI ELECTRICが発表した通期業績予想は、市場にネガティブサプライズとして受け止められた。売上高予想は従来から140億円減額され2,300億円(前期比3.7%減)に、そして最終利益予想は81億円減額され279億円(前期比22.5%減)へと引き下げられたのである。
下方修正の主因として同社が挙げたのは、主に「装置販売時期の来期へのずれ込み」、いわゆる「期ずれ」問題だ。具体的には、下期(10月~3月)に販売を予定していたNAND向け装置やDRAM向け装置の一部が、顧客側の投資計画の調整や遅延により、来期以降にずれ込む見通しとなった。この結果、上期の実績が堅調であったにもかかわらず、下期の連結最終利益は前年同期比で3割以上落ち込む計算となり、投資家心理を冷え込ませた。
半導体製造装置市場は、世界的な需要の波に大きく左右される。今回の「期ずれ」は、特にメモリー分野(NAND、DRAM)における顧客の投資抑制や計画の見直しが、未だ調整局面にあることを明確に示している。市場では、中国経済の減速懸念や、ロジック・ファウンドリーの回復遅れに対する警戒感も重なり、利益確定売りが加速した形だ。
財務健全性は維持、中長期的な成長期待は残るか
短期的には株価が大きく調整しているものの、KOKUSAI ELECTRICの企業としての財務基盤は依然として堅調である。実績ベースのROE(自己資本利益率)は約18.7%と高く、自己資本比率も57.4%と健全性を保っている。PER(株価収益率)は予想ベースで35.7倍とやや割高感があるが、これは同社が持つ高い技術力と、次世代半導体向け成膜装置市場における独自の競争力(VERTEX、TSURUGIなどのブランド力)に対する成長期待が織り込まれているためだ。
今回の株価急落を受け、投資家のセンチメントは二分されている。短期的な調整局面と見て「強く売りたい」とする投資家がいる一方で、「強く買いたい」とする層も依然として厚い。
アナリストの評価も、中長期的展望においては強気な見方が多い。複数のアナリストによる平均目標株価は4,527円と、現在の株価水準(4,096円前後)から約10%の上昇余地があると評価されている。
調整局面を「買い場」とするか、慎重姿勢を崩さないか
KOKUSAI ELECTRICは、短期的には利益確定売りと業績の下方修正による調整局面にある。テクニカル指標を見ても、短期・中期線(5日線、25日線)は弱気を示している。
しかし、長期的視点(200日線)では依然として上昇トレンドが維持されており、アナリストの評価も、今回の急落を「買い場」と捉える中長期投資家が多いことを示唆している。
今後の焦点は、半導体業界全体の需給バランスがいつ回復するか、そして、今回「期ずれ」となった装置の販売が本当に来期に実現するか否かである。同社が強みとする高付加価値製品の提供と、海外市場への積極的な拡大戦略が、この調整局面を乗り切る鍵となるだろう。
投資家は、短期的には慎重な姿勢を保ちつつ、半導体サイクルの底打ちと、KOKUSAI ELECTRICの次期業績予想の回復タイミングを注視する必要がある。今回の株価急落は、成長期待の高いハイテク銘柄であっても、市場環境の変動には敏感であることを改めて示す事例となった。