「一針入魂」と革新:吉田カバン4代目社長が語る「ポーター」ブランドの成長戦略
ニュース要約: 吉田カバン4代目社長の吉田幸裕氏が、伝統の「一針入魂」と革新的なDX・ブランド戦略(POTR)を両立させ、コロナ禍でも異例の成長を実現。品質にこだわりながらグローバル化を進める、若きリーダーの経営哲学と未来への挑戦を概説する。
伝統と革新を両輪に:吉田カバン4代目・吉田幸裕社長が描く「ポーター」の未来図
【東京】 日本を代表する鞄メーカー、吉田カバン(株式会社吉田、本社・東京)の4代目社長、吉田幸裕氏(41)が今、経営者として、また一人の人物として、かつてない注目を集めている。創業家出身の若きリーダーは、1935年の創業以来受け継がれてきた「一針入魂」の精神を守りつつ、デジタル化、グローバル化、そしてブランドの若返りを断行。老舗ブランドの信頼と、時代の要請に応える革新性を両立させるその手腕に、業界内外から熱い視線が注がれている。
創業家のDNAと現場主義:「静かに信念を貫くリーダー」
吉田社長が2020年に36歳という若さでトップに就任して以来、同社の経営は大きな変革期を迎えている。慶應義塾大学を卒業後、イタリアへ渡り、カバン製作の基礎とヨーロッパの感性を学んだ吉田氏は、帰国後、品質管理から商品企画、営業に至るまで、現場の最前線を徹底的に経験した。この現場感覚こそが、社長の経営哲学の根幹を成している。
「机上の経営ではブランドは守れない」という信念を持つ吉田社長は、約190cmの高身長でスタイリッシュな印象を持ちながらも、派手さを好まず、常に職人の声に耳を傾ける姿勢を崩さない。近年、テレビ朝日『グッド!モーニング』やTBS『あさチャン!』、さらにはNHK『クローズアップ現代』など、主要メディアへの出演が相次いでいるが、その際に公開された真摯な表情や工場視察中の様子を収めた「吉田カバン社長画像」は、多くの視聴者に「誠実で信念のある経営者」という印象を与えている。特に2025年11月には、人気アーティストPerfumeのあ~ちゃん(西脇綾香)氏との結婚が報じられ、社長個人の人物像や経歴に対する関心はさらに高まっている。
伝統と革新の融合が生んだ成長軌道
吉田カバンは、高品質な「メイド・イン・ジャパン」を貫き、企画から製造、仕上げまで国内生産100%にこだわる稀有な企業だ。この強固な品質基盤を軸に、吉田社長は大胆な経営改革を推進した。
コロナ禍においても、同社はECサイトを大幅に強化するDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速。その結果、2025年5月期には売上高201億円、経常利益率15%超を達成するなど、老舗企業としては異例の成長を遂げている。
この成功の鍵は、「守るべき伝統」と「変えるべき未来」の峻別にある。創業以来の社是「一針入魂」が象徴する職人技は守り抜きながらも、デジタルマーケティングやサプライチェーンの最適化を徹底。長く愛される「ポーター (PORTER)」ブランドの信頼性を損なうことなく、時代の変化に対応できる体制を構築した。
次世代を担う新ブランド「POTR」の躍進
吉田社長が特に注力しているのが、ブランドの若返り戦略である。その象徴が、若年層や新しいライフスタイルを意識して展開する新ブランド「POTR」だ。
「POTR」は、音楽、スポーツ、旅といった「使うシーン」を強く意識したアイテム展開や、クリエイティブ業界との積極的なコラボレーションを通じて、従来の「ポーター」とは異なる、より自由な世界観を打ち出している。この戦略は、社長自身のイタリア留学経験や、現場で培った柔軟な発想が反映されたものと言えるだろう。
また、社長がクリエイティブ業界で活躍する西脇氏と結婚したことも、ブランドイメージのアップデートに拍車をかけている。SNSを中心に大きな反響を呼び、「吉田カバン」という老舗ブランドが、より多くの若い世代や新しい顧客層にリーチするきっかけとなっている。
グローバル展開加速と未来への挑戦
現在、吉田カバンは東京、大阪の直営店の他、香港、マカオ、台湾などアジア圏を中心に国際展開を加速させている。吉田社長は、世界市場を見据えつつも、「国内生産100%」の維持は譲れない一線だと語る。これは、作り手であるかばん職人の技術と生活を守り、次世代へ継承するという強い決意の表れだ。
吉田幸裕社長が牽引する吉田カバンは、伝統という重みを背負いながら、軽やかに未来へと歩みを進めている。その誠実な経営姿勢と、伝統に裏打ちされた革新力は、日本の老舗企業がグローバル市場で生き残るための新たなモデルケースとして、今後も注目され続けるだろう。(了)