メタプラネット、BTC評価益206億円で黒字転換!規制下の成長を担う「PHASE II」戦略
ニュース要約: 日本のビットコイン・トレジャリー企業メタプラネットは、BTC評価益206億円を計上し、純利益135億円で黒字転換を達成。保有BTCは3万枚を超え存在感を強める。同社は国内規制強化に対応し、大規模BTC購入を停止。永久型優先株式やBTC担保融資を活用し、資本効率と株主還元を重視する「PHASE II戦略」に移行し、アジア版マイクロストラテジーとしての長期成長を目指す。
メタプラネット、BTC評価益で黒字転換:資本政策「PHASE II」で挑む規制下の成長戦略
【東京】 日本の上場企業として異例の規模でビットコイン(BTC)を準備資産とする戦略に舵を切ったメタプラネットが、2025年度の決算で大きな変貌を遂げた。積極的なビットコイン購入と市場価格の上昇を背景に、評価益206億円を計上し、純利益135億円で黒字転換を果たした。同社は現在、保有BTCが3万枚を超える規模となり、国際的な「ビットコイン・トレジャリー企業」として存在感を強めている。しかし、国内規制の強化や市場の変動リスクを鑑み、同社は2025年後半に入り、大規模なBTC購入を一時停止し、資本政策の最適化を図る「PHASE II戦略」へと移行している。
財務体質を劇的に変えた「ビットコイン効果」
ホテル・テクノロジー事業からビットコイン投資事業へと軸足を移したメタプラネットは、2025年第3四半期までにBTC保有量を約3万823BTCまで急増させた。この保有量の急拡大は、ビットコイン価格の安定上昇と相まって、財務諸表に劇的な変化をもたらした。
評価益206億円の計上は、同社が目指す「ビットコインを中核とした企業価値向上戦略」の正当性を示す形となった。この業績改善を受け、同社株は2025年を通じて上昇基調を辿り、FTSEジャパン・インデックスへの採用による中型株への格上げなど、国際的な信用力も向上した。
しかしながら、株価はビットコイン市場の短期的な調整や、財務戦略の転換に対する市場の思惑から、直近では変動が激しい展開となっている。
積極的なレバレッジと希薄化抑制を両立する新戦略
2025年10月に公表された「PHASE II戦略」は、これまでの積極的な資金調達によるBTC購入フェーズから、資本効率の改善と株主還元を重視する新たな段階への移行を示すものだ。
この戦略の柱は三点に集約される。第一に、普通株式の希薄化リスクを抑えつつ長期資金を確保するため、永久型優先株式(A種・B種)を活用した資金調達の強化。第二に、保有するビットコインを担保とした最大5億ドルの融資枠契約を締結し、「ビットコイン担保融資」によるレバレッジを効かせた資金調達を進める点。そして第三に、最大750億円規模の自己株式取得枠を設定し、株主還元の強化と1株あたりのBTC保有量の増加を目指す姿勢である。
同社は「555ミリオン計画」として、2027年末までに21万BTC保有という壮大な目標を維持しつつも、当面は直接的なBTC購入を停止し、既存のBTCを最大限活用した資本効率の追求に注力する構えだ。
規制強化の波とコーポレートガバナンスの徹底
メタプラネットの成長戦略は、日本国内における暗号資産に対する規制環境の大きな変化の中で進められている。2025年現在、金融庁の金融審議会は暗号資産を金融商品取引法(金商法)で規制する方向性を示しており、企業のビットコイン保有に対する法的枠組みが大きく変わる見通しだ。
さらに、日本取引所グループ(JPX)は、暗号資産を大量に保有する「暗号資産トレジャリー企業」に対し、監査義務の強化や不適切な合併防止など、規制強化を検討している。
こうした規制の波に対し、メタプラネットは厳格なコーポレートガバナンスをすべての意思決定の基盤とし、事業目的の変更や重要事項の株主承認など、適正なコンプライアンス体制を徹底することで対応している。同社は、日本における暗号資産保有上場企業として、規制当局との対話を重視し、透明性を高める戦略を堅持することで、市場からの信頼確保に努めている。
国内エコシステムの構築と国際展開
資本政策に加え、事業面でも多角化が進む。国内ではビットコイン関連事業に特化した完全子会社「ビットコインジャパン株式会社」を設立し、メディア、イベント、プラットフォーム運営を一括して推進。日本国内でのビットコインエコシステムの中核を担う狙いだ。
また、米国マイアミにはデリバティブ取引を含むインカムゲイン事業を専門とする「Metaplanet Income Corp.」を設立し、ビットコイン関連収益の多角化を図っている。
メタプラネットは、アジア版マイクロストラテジーとしての地位を確固たるものとするため、長期的な成長戦略を遂行中だ。しかし、ビットコイン価格の変動が直接的に財務に影響を及ぼす構造は変わらず、投資家は同社の資本政策の進捗と、金商法改正をはじめとする国内規制の具体的な動向を注視し続ける必要がある。(了)