44年ぶりの衝撃、エンゲル係数28.6%が示す家計の危機―物価高が食卓を直撃
ニュース要約: 2025年の家計調査で、エンゲル係数が44年ぶりの高水準となる28.6%に達したことが判明しました。10年連続の上昇背景には、深刻な食料品価格の高騰と実質賃金の伸び悩みがあります。消費者が自炊などで防衛策を講じる一方、娯楽費等の削減により相対的に食費比率が高まる「生活のゆとりの喪失」が浮き彫りとなっており、構造的な家計の変容が加速しています。
食卓を襲う物価高の波 エンゲル係数28.6%、44年ぶりの高水準が示す家計の「質変」
【東京】 総務省が2月6日に発表した2025年(令和7年)平均の家計調査(二人以上の世帯)によると、消費支出に占める食料費の割合を示す「エンゲル係数」が28.6%に達したことが分かった。前年の28.3%からさらに0.3ポイント上昇し、1981年以来、44年ぶりの高水準を更新した。長らく生活水準の向上とともに低下傾向にあった同係数だが、近年の物価高と所得の停滞、さらには急速な高齢化という構造的要因が重なり、日本の「食」を取り巻く家計状況は深刻な局面を迎えている。
物価高騰が直撃、10年連続の上昇
エンゲル係数の上昇は、2020年を境に加速の一途をたどっている。2008年時点では21.9%であったが、2023年には26.5%、そして2024年に28.3%と急騰し、今回の28.6%で10年連続の上昇となった。
最大の要因は、食料品価格の著しい高騰だ。特にコメ価格の急上昇をはじめとする食品全般の値上げが家計を圧迫している。消費者物価指数(帰属家賃を除く総合)は10年前と比較して13.1%上昇しており、実質賃金の伸びが物価上昇に追いつかない中、「食べること」への支出を削れない世帯の苦境が鮮明になっている。
地域別の格差も顕著だ。2025年のデータでは、大阪市が32.2%と最も高く、一方で最も低い水準となった水戸市(26.1%)との開きは大きい。47都道府県庁所在市のうち27市で2000年以降の最高値を更新しており、物価高の波が全国規模で生活を侵食している実態が浮き彫りとなった。
「自炊シフト」でも下がらない係数の矛盾
止まらない値上げに対し、消費者は防衛策を講じている。外食を控え、業務スーパーの活用や安価な鶏肉・豆腐への切り替え、廃棄を減らす計画的な「自炊中心」の生活へのシフトだ。
しかし、本来なら節約につながるはずの自炊シフトが、家計全体で見ると「エンゲル係数の上昇」を招くという皮肉な現象も起きている。専門家は「自炊は外食より安上がりだが、娯楽や交通費など食費以外の支出を極端に切り詰めることで、分母となる『消費支出全体』が縮小し、結果として食費の比率(分子)が相対的に高まってしまう」と指摘する。いわば「食費以外沈没」とも呼べる状態で、生活のゆとりが喪失している証左といえる。
高齢化と所得格差がもたらす構造的変化
エンゲル係数の上昇には、日本が世界に先んじて直面する「超高齢社会」の影響も無視できない。2023年時点で高齢化率は29.0%に達している。高齢世帯では教育費の支出がないため、相対的に食費の割合が高くなる傾向がある。世帯主が65歳以上の世帯の係数は30.4%に達しており、現役世代平均を大きく上回る。
また、所得階層別の格差も深刻だ。年収が低い層ほどエンゲル係数が高くなる「エンゲルの法則」は依然として有効であり、低所得層では30%を超える水準が常態化しつつある。共働き世帯の増加により中食(惣菜や弁当)の利用が拡大していることも、食費単価を押し上げる一因とみられるが、その詳細な影響についてはさらなる分析が待たれる。
国際比較とこれからの「豊かさ」
もっとも、日本のエンゲル係数はG7各国の中では依然として最も低い水準に止まっているとの指摘もある。1970年の34.1%から、2005年には21.6%まで低下した歴史を振り返れば、現在の28%台も国際的には「極端に生活水準が低い」とは言い切れない側面がある。
しかし、通信費の増大や消費税率の変遷など、かつての「エンゲル係数=豊かさの指標」という単純な物差しでは測れない現代特有の消費構造変化がある。44年ぶりの高水準という数字は、単なる統計上の変動ではなく、日本人がこれまでの生活スタイルを維持できなくなりつつある「曲がり角」を示唆しているのかもしれない。
総務省は、今後公表される「家計調査年報」の詳細版で、世代別や所得層別のより精密なデータを提示する見通しだ。物価高の手綱が見えない中、食卓の安定に向けた所得向上策と物価抑制の舵取りが、政府に一段と強く求められている。
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