紀平梨花、アイスダンス転向で挑む「復活の銀盤」――右足首の怪我を乗り越え2030年五輪へ
ニュース要約: フィギュアスケートの元全日本女王、紀平梨花が右足首の怪我によるシングル断念を経て、アイスダンスへの転向という新たな挑戦を開始。西山真瑚とカップルを結成し、カナダ・モントリオールを拠点に活動を再開しました。ミラノ五輪団体戦や2030年五輪を見据え、氷上の痛みを抱えながらも再び世界の頂点を目指す彼女の「第二の競技人生」に迫ります。
復活の氷上へ、新たな鼓動――。紀平梨花、アイスダンスという「未知なる銀盤」への挑戦。
【2026年2月7日 共同通信】
イタリアのミラノ・コルティナ冬季五輪が開幕する中、かつて日本女子フィギュア界の頂点に君臨した紀平梨花(トヨタ自動車)は、カナダ・モントリオールの地で静かに、しかし力強く新たな一歩を刻んでいる。
2018年のグランプリファイナルで平昌五輪金メダリストのアリーナ・ザギトワを破り、全日本選手権を2連覇した「エース」の姿は、いま、シングルではなくアイスダンスという新しいカテゴリーの中にあった。4年前の2021年7月に発症した右足首の疲労骨折。その怪我は、彼女の競技人生を大きく変えることとなった。
消えたシングルの道、そして「電撃転向」の真意
2026年ミラノ五輪。シングルでの公式出場を目指していた彼女にとって、2025年12月の中部選手権(全日本選手権予選)の欠場は、その道の断絶を意味していた。右足首の完治に至らず、十分な跳躍が困難な状況。長らく続いた欠場期間を経て、ファンや関係者の間に「引退」の二文字がよぎる中、紀平は驚くべき決断を下した。
2025年9月、西山真瑚(23)とのカップル結成、およびアイスダンスへの転向を電撃発表したのである。
「大きなチャレンジにワクワクしている。可能性がある限り、諦めず努力したい」
その言葉通り、彼女は拠点であるカナダ・トロントのブライアン・オーサー氏、トレイシー・ウィルソン氏のもとを離れ、アイスダンスの聖地・モントリオールへと渡った。北京五輪代表のケイトリン・ホワイエク氏の指導を受け、「りかしん」の愛称で呼ばれる二人の挑戦が始まった。
525日ぶりの実戦で見せた「笑顔」と、立ちはだかる極寒の試練
結成からわずか1カ月後の2025年11月1日。西日本選手権で、紀平梨花はアイスダンサーとして公式戦デビューを果たした。525日ぶりとなる実戦のリンク。高難度のジャンプという武器を一度置き、パートナーと呼吸を合わせて滑るその姿は、かつての孤高な天才少女のイメージとは異なり、どこか解放されたような温かみを感じさせるものだった。
総合3位という結果に、紀平は「(怪我は)悪化はしていない」と前向きな姿勢を見せ、全日本選手権への意欲も語った。しかし、シングル時代から背負い続けてきた右足首の爆弾が完全に消えたわけではない。氷上での痛みを制限し、ジャンプは「試し程度」に留める調整が続いている。
現在、モントリオールは気温マイナス7度を下回る厳しい寒さの中にある。SNSには練習風景やスポンサーであるトヨタ自動車、オリエンタルバイオ等の活動における笑顔が投稿される一方で、ファンからは体力消耗や怪我の再発を懸念する声も絶えない。
視線は2030年へ――「日本一」を目指す新たな物語
2026年のミラノ五輪、日本のアイスダンス個人戦の出場枠は確保されておらず、現在の「りかしん」の目標は団体戦での貢献、そしてその先の2030年冬季五輪にある。
「全日本を捨てるのは無理。万全でノーミス表彰台、そして世界選手権、四大陸選手権へ」
紀平が語るその目標は、かつて見慣れたシングルの表彰台ではなく、アイスダンスという新しい舞台での頂点だ。シングル出身ゆえの「パートナーシップの構築」という壁、そしてISU(国際スケート連盟)公認大会での実績をゼロから積み上げなければならない厳しい世界ランキングの現実。それでも、彼女の瞳に曇りはない。
トリプルアクセルを武器に世界を席巻した少女は、痛みを抱えながらも銀盤を去る道を選ばなかった。パートナーの西山とともに、「毎年努力を積み重ねる」ことで、再び五輪の舞台を目指す。
紀平梨花の物語は、まだ終わっていない。それは、一人のアスリートが「限界」を超え、自らの手で書き換える新たな「復活」の序章に過ぎないのだ。(取材・文:スポーツ記者)
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