琴櫻、大関の安定と停滞 8勝6敗で横綱昇進を阻む「引き癖」克服の正念場
ニュース要約: 大関・琴櫻は九州場所を8勝6敗で終え、カド番を回避し地位を堅持した。しかし直近3場所の成績は横綱昇進の目安に遠く及ばず、優勝争いで星を落とす精神的な脆さや「引き癖」が改めて課題として浮き彫りとなった。次なる初場所が、横綱への道を切り開けるかの重要な試金石となる。
琴櫻、大関の地位を堅持も横綱への道険し 九州場所8勝6敗、問われる安定感と「引き癖」の克服
【福岡 2025年11月23日 共同】
大相撲2025年11月場所(九州場所)は、新鋭・安青錦の劇的な優勝決定戦制覇という形で幕を閉じた。大関・琴櫻将傑(27=佐渡ヶ嶽部屋)は、優勝争いに加わりながらも終盤に星を落とし、8勝6敗という成績で場所を終えた。この結果、大関陥落の危機である「カド番」は回避し、大関の地位を堅持したものの、悲願の横綱昇進に向けては、課題が改めて浮き彫りとなった形だ。
安定と停滞の狭間で 九州場所の総括
琴櫻は今場所、初日から好調を維持し、中盤まで優勝争いをリードした。得意の右四つからの「寄り切り」や、豪快な「上手出し投げ」などで勝ち星を重ね、大関としての地力を見せつけた。しかし、終盤戦に入ると、13日目に豊昇龍に敗れ、優勝戦線から脱落。千秋楽も安青錦に敗れ、最終的に8勝6敗という成績に落ち着いた。
直近3場所の成績は、7月場所9勝5敗1休、9月場所9勝5敗、そして今場所8勝6敗と、3場所合計で26勝16敗1休である。これは、昇進の目安とされる「3場所33勝」には遠く及ばないが、大関として6場所連続で地位を保っている事実は、彼の持つ安定感を証明している。
しかし、優勝争いの核心に迫る場面で星を取りこぼす傾向が続いている点は、頂点を極める上で看過できない。特に、相手の攻めを凌ぎきれず、「はたき込み」や「引き落とし」といった逆転技に頼る場面が散見され、相撲関係者からは、精神的な脆さと、前に出る力が途切れた際に見せる「引き癖」が指摘されている。
偉大な祖父の名跡「琴櫻」の重圧と進化
琴櫻が背負う重圧は、他の力士とは一線を画す。彼は、祖父である第53代横綱琴櫻傑将の偉大な名跡を継ぎ、父も元関脇琴ノ若という相撲一家の宿命を背負っている。
祖父の「猛牛」と称された激しい押し相撲の技術を基礎としつつ、父から伝授された立合いの速さや機動力を融合させ、自らの相撲道を模索してきた。2024年11月場所での幕内最高優勝(14勝1敗)は、その進化が結実した瞬間であったが、その後の場所では、かつての安定した力を継続できていない。
彼は、祖父の名跡を襲名したことで、過去の重圧を乗り越え、自己の相撲に集中できるようになったと語る。だが、ファンが琴櫻に求めるのは、単なる大関ではなく、日本人横綱として相撲界を牽引する絶対的な存在感である。
横綱昇進、次なる二場所が試金石
大相撲における横綱昇進の条件は、**「大関の地位で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」**と横綱審議委員会(横審)の内規で定められている。
現在の琴櫻は、この「2場所連続優勝」という絶対条件を達成できていない。2024年9月場所で13勝2敗を記録した際も、優勝決定戦で敗れ、横綱昇進の機会を逃している。
今後、琴櫻が横綱への道を切り開くには、2026年1月場所(初場所)と続く3月場所での圧倒的な成績が不可欠となる。
【横綱昇進に向けた主要課題】
- 安定した優勝継続力: 優勝争いから最後まで脱落しない精神的な強さ。
- 「引き癖」の克服: 押せない状況でも我慢し、前に出続ける力強い相撲の確立。
- 大一番での勝負強さ: 優勝決定戦や、上位陣との対戦で確実に勝ち星を挙げること。
現在、横綱はモンゴル出身の照ノ富士のみであり、日本相撲協会並びに国民は、長らく日本人横綱の誕生を待望している。琴櫻には、その期待を一心に集める存在としての責任がある。
来年1月の初場所は、琴櫻が再び優勝戦線に絡み、大関として絶対的な地位を確立できるかどうかの、重要な試金石となる。祖父の偉業を継ぎ、相撲界の頂点を目指す若き大関の挑戦は、これからが正念場を迎える。