鉄人・玉鷲、連続出場記録の金字塔!40歳ベテランの意地と佐田の海のキャリア分岐点
ニュース要約: 2025年九州場所、40歳の鉄人・玉鷲は連続出場記録を更新し、ベテランの意地を見せた。佐田の海との直接対決を制すも、場所を通じて両者の成績は明暗を分け、長寿力士のキャリアが決定的な分岐点を迎えていることを示した。
鉄人・玉鷲が刻む「連続出場」の金字塔、佐田の海との熱戦に見るベテランの意地と明暗
〜 2025年九州場所に見る長寿力士の現在地とキャリアの分岐点 〜
2025年11月、福岡国際センターで開催された大相撲九州場所は、世代交代の波が押し寄せる中で、なおも幕内中位を維持するベテラン力士たちの意地と技術が光る場所となった。中でも、角界の「鉄人」として知られる東前頭筆頭の玉鷲一朗(40歳)と、西前頭八枚目の佐田の海貴士(38歳)の直接対決は、長きにわたり相撲道を歩む両者のキャリアの現在地を示す象徴的な一番として注目を集めた。
九州場所の激突、玉鷲が制した押し相撲の駆け引き
両者は九州場所4日目に対戦。共に押し相撲を得意とする力士同士の激しいぶつかり合いが予想されたが、軍配は玉鷲に上がった。立ち合いから激しく突き合い、土俵中央での攻防となったが、玉鷲は得意とする押し相撲の圧力に加え、一瞬の隙を突いて首ひねりという技で佐田の海の体勢を崩し、勝利を収めた。
この取組は、単なる押し合いではなく、ベテランの経験値が勝敗を分けた典型例と言える。玉鷲は序盤3連勝と好調な滑り出しを見せていたが、佐田の海もまた、土俵際での粘り強さには定評がある。しかし、玉鷲が押し一辺倒にならず、変化球とも言える首ひねりを瞬時に入れたことで、佐田の海の突き手を封じ込めた形だ。
場所を通じての成績を見ると、玉鷲が7勝8敗と粘りを見せ、幕内上位で踏みとどまったのに対し、佐田の海は4勝11敗と大きく負け越し、来場所の番付降下は避けられない状況となった。この明暗は、両者のキャリアが今、決定的な分岐点を迎えていることを示唆している。
40歳を超えてなお幕内を維持する玉鷲の「鋼の体調管理」
玉鷲の相撲人生を語る上で欠かせないのが、その驚異的な「継続性」である。彼は2024年9月場所で、初土俵からの連続出場回数を1630回とし、元関脇・青葉城の持つ歴代1位の記録に並んだ。そして、2025年11月現在もその記録を更新し続けている。
40歳という年齢は、一般的に力士としての肉体の衰えが顕著になる時期だ。しかし、玉鷲は「休場したくない」という強い意志と、徹底した体調管理、そして相撲への工夫でこの壁を乗り越えている。彼は、かつて首の故障に苦しんだ経験から、自身の肉体と向き合い、長年にわたり安定したパフォーマンスを維持してきた。
彼の相撲スタイルは、ただ力強いだけでなく、相手の焦りを誘う心理戦や、今回佐田の海戦で見せたような押し相撲からの技の多彩さが増している。これは、年齢を重ねたベテランだからこそ可能な、経験則に基づく戦略と言えるだろう。玉鷲は、長寿力士の象徴として、相撲界における一つの金字塔を打ち立て続けている。
佐田の海、土俵際の粘りとキャリア低迷の課題
一方、佐田の海もまた、その粘り強さで知られるベテラン力士だ。特に、物言いがつくほどの土俵際での際どい攻防から逆転を狙うスタイルは「行司泣かせ」の異名を持つ。速攻相撲を信条としつつも、土俵際での勝負勘は鋭く、中堅力士として長らく幕内を維持してきた。
しかし、2025年九州場所での4勝11敗という成績は、彼がキャリアの下降局面にあることを示している。玉鷲戦でも、得意の突き手で攻め込みたかったものの、玉鷲の圧力と技に屈した。
佐田の海は、進歩を続ける若手力士に対し、速攻相撲の精度を高め、さらに土俵際での粘りを勝ち星に結びつける工夫が求められている。幕内中位を維持するためには、玉鷲が見せるような、肉体的な衰えを補う緻密な技術戦略と精神的な強さが不可欠となる。
長寿力士が示す相撲道の奥深さ
玉鷲と佐田の海。両者は共に押し相撲を軸としながらも、異なる形で長寿力士としての道を歩んでいる。玉鷲は「連続出場記録」という確固たる実績と、年齢を感じさせない突き押しで幕内上位に踏みとどまり、佐田の海は、土俵際の攻防に活路を見出そうと奮闘している。
大相撲の世界において、年齢は大きな壁となる。しかし、彼らが土俵で見せる「負けたくない」という意地と、長年の経験から培われた技術への工夫は、若手力士たちにとって大きな手本となるだろう。2025年九州場所は、玉鷲がベテランとしての安定感を見せつけた一方で、佐田の海にはキャリア再構築の課題が突きつけられた場所となった。
両者の今後の活躍は、単なる星取以上に、相撲道の奥深さと、肉体の限界に挑む力士たちの精神性を我々に示し続けるだろう。