激化する「台湾有事」を巡る日中外交戦:高市発言の波紋と問われる日本の戦略
ニュース要約: 高市総理による「台湾有事=存立危機事態」発言に対し、中国政府が猛反発。駐大阪総領事の暴言も加わり、日中間の緊張が激化している。国内では、この強硬な発言を巡り世論やメディアが分断。日本は曖昧さを脱した安全保障政策の戦略的対応を迫られている。
激化する「台湾有事」を巡る日中外交戦:高市総理発言の波紋と国内世論の分断
2025年11月、日本の外交・安全保障政策を巡る緊張がかつてないほど高まっている。高市早苗総理大臣による「台湾有事」に関する国会答弁が、中国政府の猛反発を招き、日中関係は急速に冷え込みを見せている。台湾の平和が日本の存立に直結するという認識が明確化された一方で、その「毅然とした断言」は国内のメディアや世論、さらには与野党間で大きな波紋を広げている。
習主席のメンツを潰した「存立危機事態」明言
事の発端は、高市総理が台湾有事の発生時、それが日本の平和と安全を脅かす「存立危機事態」に該当し得ると明確に言及したことにある。これは歴代政権が外交上の配慮から避けてきた、極めて踏み込んだ見解だ。
特筆すべきは、この発言が先月末に習近平国家主席と初めて会談し、「戦略的互恵関係の推進」を確認した直後に行われたことである。中国政府関係者からは「習主席の顔に泥を塗られた」との不満が漏れており、中国は即座に、そして異例の強硬姿勢で報復に出た。
中国外務省は11月14日未明、金杉憲治駐中国大使を呼び出し、発言の撤回を強く要求。さらに、中国人に対し日本への渡航自粛を呼びかけるなど、高市政権に対する露骨な対抗措置を取っている。
外交官による「ペルソナ・ノン・グラータ」級の暴言
こうした外交摩擦の中で、日本国民の感情を最も逆なでしたのが、中国駐大阪総領事・薛剣氏による信じがたい暴言だ。同総領事は高市総理の発言を受け、自身のSNS(旧Twitter)上で「その汚い首は斬ってやるしかない」という、外交官としては到底許されない挑発的な言葉を投稿した。
公明党代表や著名な実業家らが強く非難の声を上げる中、このような言葉は外交儀礼を著しく逸脱しており、「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として追放されてもおかしくないレベルである。日本政府は、中国側の要求を「間違っている」として撤回を拒否しているものの、この一連の事態は、今後の日中間の緊張を恒常化させる懸念を抱かせている。
谷原章介氏の炎上:世論と報道の溝
政治の緊張は、国内のメディアと世論にも飛び火した。
特に注目を集めたのが、俳優でキャスターの谷原章介氏が、ニュース情報番組『サン!シャイン』内で示した見解を巡る炎上騒動だ。谷原氏は、薛剣総領事の過激な暴言に言及しつつも、「最初にボールを投げたのは日本側でもあるじゃないですか」と発言した。
この発言は、安全保障問題で「毅然とした態度」を求める国民感情と、中国政府の暴言を事実上擁護するような姿勢との間に大きな溝を生み、ネット上で強い批判を浴びた。多くの視聴者は、外交官によるテロを想起させるような暴言と、日本の安全保障に関する主権的な発言を同列に論じるべきではないと感じたのだろう。
一方、報道キャスターの膳場貴子氏も、高市発言について「踏み込んでしまった」と慎重なコメントを寄せるなど、日本の主要報道番組は、安全保障の現実的必要性と、国際外交における慎重さのバランスをいかに取るべきか、難しい舵取りを迫られている。
また、野党側からも岡田克也氏らが、集団的自衛権の行使を可能にする「存立危機事態」の定義の曖昧さを厳しく追及しており、憲法解釈と現実的な防衛意識の間の根本的な政策論争が続いている。
問われる日本の戦略的対応
高市総理の「存立危機事態」発言は、日本の安全保障政策が曖昧さを脱し、現実的な対応へ向かう一歩と評価できるかもしれない。しかし、その「断言」が外交上の緊張を極度に高め、中国側に強硬な対抗措置の口実を与えたことも事実だ。
外交専門家からは、なぜ「戦略的曖昧さ」を取らずに手の内を見せるのか、という指摘も出ている。「台湾有事」を巡る状況は、日本政府に対し、単なる強硬な姿勢ではなく、国際社会の理解を得つつ、国民の安全を守るための、より洗練された「戦略的」な対応を求めている。私たち国民もまた、目の前の危機に対して冷静な議論を続ける覚悟が今こそ試されている。(932文字)