波乱の伊東市:失職市長の再挑戦か、市政の刷新か?市民の審判が下る12月再選挙
ニュース要約: 静岡県伊東市では、2025年5月に当選した田久保まき市長が学歴詐称問題などで議会と対立し、わずか半年で失職した。12月14日に投開票される再選挙では、田久保前市長が再出馬の意欲を見せ、7人以上が立候補する大混戦が確実視されている。市民は混乱を乗り越え、観光復興や災害対策など喫緊の課題に取り組むリーダーを選べるかが問われる。
波乱の伊東市政、半年で失職した市長の再挑戦 市民の選択が問われる12月再選挙の行方
静岡県伊東市は今、かつてないほどの政治的混迷の渦中にある。2025年5月に市民の新たな期待を背負って当選を果たしたばかりの田久保まき市長が、わずか半年余りで失職。学歴詐称問題をきっかけとする議会との対立は、市長の自動失職という異例の事態を招き、再び市民は審判を下すこととなった。
5月選挙の熱狂と市民の期待
2025年5月25日に執行された伊東市長選挙は、無所属新人の田久保まき氏が、現職の小野たつや氏を破り、初当選を飾った。田久保氏は14,684票を獲得し、得票率は53.2%に達した。
この選挙で特筆すべきは、有権者の政治意識の高さである。投票率は49.65%と、前回選挙の44.39%から約5ポイントも上昇した。コロナ禍からの観光業回復や、頻発する自然災害への防災対策など、伊東市が抱える喫緊の課題に対し、市民が現職市政の継続か刷新かを巡り、積極的に意思表示をした結果と言えるだろう。
しかし、この高まった期待は、当選直後に一気に暗転する。
混迷を深めた「波乱の半年」
田久保市長の就任直後から、公約や経歴に関する疑惑、特に学歴詐称問題が浮上し、市議会との関係は急速に悪化した。この問題は尾を引き、議会は市長に対し、二度にわたる不信任決議を突き付ける事態に至った。
田久保市長は一回目の不信任決議に対し、議会解散という強硬手段で応じた。これにより、10月19日に市議会議員選挙が実施されることとなる。この市議選は、実質的に「田久保市政への信任投票」という側面を帯びた。結果は、前職18人全員が当選し、そのうち19人が市長への不信任に賛成する立場を示していたという。この議会選の結果を受け、田久保市長の自動失職は避けられないものとなった。
市民の政治参加意識は、この市議選でも極めて高かった。投票率は59.22%と、市長選をさらに上回り、前回の市議選を10ポイント以上も上回る結果となった。これは、市民が市政の混乱に対し、明確な判断を下そうとしたことの証左であり、有権者が田久保氏を市のトップとして不適格と評価したことを示唆している。
迫る12月再選挙、乱立の危機
失職に伴う新たな市長選挙は、12月14日に投開票される予定だ。問題の渦中にあった田久保前市長は、すでに街頭活動を再開しており、再出馬への意欲を強く示している。
しかし、今回の選挙は極めて複雑な様相を呈している。現時点で、少なくとも7人以上の立候補が見込まれており、候補者が乱立する「大混戦」が確実視されている。
伊東市民の判断は、田久保前市長が掲げる「市民のための市政」の継続か、それとも議会が求めた「市政の刷新」かという二極の対立構造となる。さらに、候補者が多数現れることで、有効投票数の4分の1以上を獲得できなければ再選挙となる可能性(法定得票未達)も現実的な懸念として浮上している。前回の市議選の有効投票数を鑑みると、約8,258票以上が必要とされている。
観光復興と災害対策、置き去りにされた課題
度重なる選挙と政治の混乱は、伊東市が抱える喫緊の課題を置き去りにしかねない。温泉や海水浴場を中心とする観光業は、コロナ禍からの本格的な回復が急務であり、また、台風や地震などの自然災害リスクが高い地域として、防災・減災対策も待ったなしである。
市民は、誰がこれらの重要課題に真摯に向き合い、執行能力を発揮できるのかを見極めなければならない。今回の選挙は、単なる候補者選びに留まらず、伊東市の今後の方向性を決定づける重大な選択となる。政治的混乱を乗り越え、安定した市政を確立できるかどうかに、伊東市民の未来がかかっている。