FIFA76位のボリビア代表、「高地依存」の限界とW杯への執念:プレーオフが試す真価
ニュース要約: 最新FIFAランキング76位のボリビア代表は、海抜4100mのホームでブラジルを破り、劇的にW杯大陸間プレーオフ進出を果たした。しかし、この成果は「高地依存」という構造的課題の裏返しでもある。若手の台頭と戦術転換が進む中、1994年以来のW杯出場をかけ、プレーオフで真価が問われる。
標高4100mの要塞、再び牙を剥くか:低迷するボリビア代表のFIFAランキング76位が示す「高地依存」の限界とW杯への執念
序論:劇的なプレーオフ進出の裏側で
2025年11月18日現在、南米のボリビア代表は、最新のFIFAランキングで76位(2025年10月発表)に位置づけられています。これはブラジル(世界3位)、アルゼンチン(世界1位)といった強豪がひしめく南米連盟(CONMEBOL)内では最下位グループに沈むポジションです。しかし、彼らはこの秋、サッカー界に大きな衝撃を与えました。2026年W杯南米予選の最終盤、海抜4100メートルを超えるホーム、エルアルトで強豪ブラジルを1-0で撃破し、劇的に南米7位の座を確保。大陸間プレーオフへの切符を掴み取ったのです。
この大金星は、ボリビアサッカーが抱える構造的な課題と、彼らが唯一頼る「高地アドバンテージ」の有効性、そして、日本を含む国際舞台における立ち位置を改めて浮き彫りにしています。
76位の軌跡:過去最高18位からの長い低迷
ボリビア代表のランキング推移を見ると、その浮き沈みの激しさが理解できます。過去最高は1997年の18位ですが、近年は2016年の95位という低迷期を経て、70位台から80位台を推移し続けています。直近の76位という順位は、過去1年間で82位からやや上昇した結果であり、W杯予選でのブラジル戦勝利など、強豪相手からの勝ち点獲得が大きく寄与しています。
一方で、19位の日本代表と比較すると、その実力差は歴然です。先日行われた日本との親善試合でも0-3と完敗を喫しており、評論家のセルジオ越後氏が指摘するように、「実力はアジアの中堅国よりやや下」という評価が国際的な共通認識となっています。
ボリビアの抱える問題は、国際試合における実力不足に加え、南米予選における極端なホームとアウェイの成績差に集約されます。
「ラパスの要塞」健在も、絶対的優位性は縮小
ボリビアのサッカー戦略の根幹は、世界有数の高地都市ラパス(標高約3,600m)やエルアルト(標高約4,100m)をホームスタジアムとすることです。他国の選手は高地による酸素不足と体力消耗に苦しみ、ボリビアはこの「ラパスの要塞」を武器に勝ち点を積み上げてきました。
今回、最終節でブラジルを破りプレーオフ出場権を獲得できたのも、この高地アドバンテージが最大限に発揮された結果です。
しかし、近年、この要塞の絶対的な力は薄れつつあります。他国も高地適応トレーニングや事前合宿などで対策を講じるようになり、2023年以降の予選では、ホームでもアルゼンチンやコロンビアといった強豪に敗れる試合が増加しました。ボリビア代表は、依然としてホームでは粘り強いものの、アウェイでは得点力不足が露呈し、敗戦が続くという構造的な弱点が克服できていません。
若手の台頭と「攻撃的サッカー」への転換
低迷から脱却し、W杯への望みを繋ぐために、ボリビアサッカー界は大きな変革期を迎えています。
特に注目すべきは、若手有望株の台頭です。21歳のミゲル・テルセロスは予選でチーム最多得点を記録し、18歳のモイセス・パニアグアら、将来を嘱望される若手が中心メンバーに成長しつつあります。彼らの才能を活かし、「高地依存」から脱却した持続可能なサッカーを構築できるかが、今後の鍵となります。
現在、暫定監督が指揮を執る中、次期監督には南米出身の経験豊富な指揮官が有力視されており、「攻撃的サッカー」を志向する人物への期待が高まっています。これは、従来の守備的で高地頼みの戦術から脱却し、攻守のバランスを改善しようという国内の強い意志の表れです。
結論:プレーオフが試す真価
FIFAランキング76位という順位は、ボリビア代表が南米で最も厳しい戦いを強いられている現状を物語っています。しかし、彼らは若手の成長と高地の利を最大限に活用し、W杯出場への最後のチャンスである大陸間プレーオフに進出しました。
ボリビアが1994年アメリカ大会以来のW杯出場を果たすには、ホームの要塞だけでなく、アウェイや中立地でのパフォーマンス向上が絶対条件です。大陸間プレーオフという新たな舞台で、ボリビアサッカーが真の変革を遂げられるのか。彼らの挑戦は、まさに正念場を迎えています。