インドネシア・スメル火山が大規模噴火、噴煙1万6千メートル!日本への津波影響はなし
ニュース要約: インドネシア東部ジャワ島のスメル火山で19日、噴煙1万6000メートルに達する大規模噴火が発生しました。周辺地域では火砕流と降灰により数千人規模の住民が避難し、農地などに深刻な被害が出ています。気象庁は当初津波の有無を調査しましたが、20日未明までに「日本への津波の影響はない」と発表し、引き続き監視を続けています。
インドネシア・スメル火山が大規模噴火 噴煙1万6千メートル、日本への津波影響なし
【ジャカルタ=共同】 インドネシア東部ジャワ島のスメル火山で19日午後6時20分(日本時間)ごろ、大規模な噴火が発生した。オーストラリア・ダーウィンの航空路火山灰情報センターの衛星解析によると、噴煙は海抜約1万6000メートルに達し、2022年12月の前回大噴火に匹敵する規模となった。気象庁は当初、津波の有無について調査を進めていたが、20日未明までに「日本への津波の影響はない」と発表した。
火砕流と降灰で周辺地域に警戒
スメル火山噴火では、噴煙の上昇に加え、斜面方向への火砕流が確認された。高温の火山ガスと灰、岩塊が混ざり合った火砕流は、山麓地域に大きな被害をもたらす恐れがある。インドネシア当局は、火山から半径約10キロ圏内の住民に対し、即時避難を指示。ルマジャン県とマラン県の境界付近では、数千人規模の住民が避難所や親族宅に身を寄せている。
現地からの報道によると、広範囲にわたって火山灰が降り積もり、農地や住宅地が覆われた。水田や野菜畑では作物が枯死し、収穫不能の状態に陥っている。また、火山灰が河川に流入したことで水質汚染が発生し、飲料水や灌漑用水の確保が困難になっている地域もある。
津波発生メカニズムと気象庁の監視体制
インドネシア火山噴火による津波の可能性について、気象庁は慎重な調査を実施した。火山噴火に伴う津波には、通常の地震性津波とは異なる複数の発生メカニズムがある。2022年のトンガ・フンガトンガ火山噴火では、爆発による気圧変動が遠く離れた日本にも津波をもたらした事例があり、気象庁はこうした特殊な津波発生の可能性も視野に入れて監視を続けている。
ただし、スメル火山は海岸から離れた内陸火山であるため、海水を直接大きく変位させる要因は想定しにくい。過去の事例でも、インドネシア火山噴火で日本に影響を及ぼす津波が発生したケースは極めて稀だ。気象庁は「現時点で日本の沿岸に津波の心配はない」としつつも、念のため海面変動の監視を継続している。
活発な火山活動が続くスメル火山
標高3676メートルのスメル火山は、インドネシアでも特に活動が活発な火山の一つとして知られる。ジャワ島東部に位置し、定期的に噴火を繰り返してきた。専門家は「スメル火山の地質学的特性から、今後も大規模噴火のリスクは高い」と指摘する。
2022年12月の噴火では、火砕流と泥流(ラハール)により多数の犠牲者が出た。今回の噴火でも、同様の二次災害が懸念されている。特に、降雨時には火山灰が雨水と混ざり合い、泥流となって山麓を襲う危険性がある。
インドネシア地震地質学庁は、火山性地震の観測を強化し、マグマの動きを継続的に監視している。噴火活動は今後も続く可能性があり、警戒レベルの引き上げも検討されている。
長期化する避難生活と復興への課題
避難所では、食料や飲料水、医薬品の不足が深刻化している。特に乳幼児や高齢者への医療支援が急務だ。子どもたちの教育環境の確保も課題となっており、避難所での簡易教室の設置などが検討されている。
農業や漁業を生業とする住民にとって、収入源の喪失は死活問題だ。火山灰に覆われた農地の復旧には長期間を要するため、政府や国際機関による経済支援が不可欠となる。インドネシア政府は緊急支援物資の配布を進めているが、被災地のニーズに十分応えられていない状況だ。
交通インフラへの影響も深刻で、火山灰により道路が寸断され、救援活動が難航している。空港も一時閉鎖され、航空便の運航に影響が出ている。
気象庁は今後も、インドネシア火山噴火に関する情報収集と分析を続け、日本への影響について随時発表していく方針だ。