ギニアビサウで軍事クーデター再燃:民主化中断、麻薬国家の構造的腐敗が危機を深める
ニュース要約: 西アフリカのギニアビサウで11月26日、軍幹部が政権を掌握し、再び軍事クーデターが発生。選挙後の混乱に乗じて民主化プロセスが中断された。政情不安の根源は、南米から欧州への麻薬密輸ルートと、軍・政治家が絡む構造的な腐敗にある。国際社会は秩序の即時回復を求めている。
ギニアビサウ、またも軍事クーデターで政情危機 民主化プロセス中断、麻薬ルートの闇と構造的課題
【ビサウ発:11月28日 共同】
西アフリカの小国ギニアビサウで、再び軍事介入による政情不安が深刻化している。11月26日、軍幹部が憲法を停止し、政権を掌握したと宣言した。直前の大統領選挙の結果を巡る混乱が引き金となり、現職のウマロ・シソコ・エンバロ大統領は即時解任され、大統領府で拘束されたと訴えている。独立以来、頻繁な政変とクーデターに見舞われてきた同国は、民主的プロセスの回復と、政治・軍・麻薬密輸組織の三者が絡む構造的な腐敗という、根深い課題に直面している。
11月選挙後の混乱が引き金に
今回のクーデターの背景には、11月23日に実施された大統領選挙および国民議会議員選挙の結果を巡る深刻な対立がある。エンバロ大統領と有力野党候補の双方が勝利を主張し、選挙管理委員会周辺でも緊張が高まっていた。
この政治的真空に乗じる形で、11月26日、軍幹部が突如として権力掌握を宣言。首都ビサウの大統領府周辺では銃声が響き、治安は一気に悪化し、民主的な選挙制度の信頼性は大きく揺らいでいる。
ギニアビサウは、2022年2月の「クーデター未遂」や2023年12月の議会解散など、軍が政治に介入する歴史を繰り返しており、国際社会は今回の事態を、同国における民主主義の明確な後退と捉え、強い懸念を表明している。
政情不安の根源:麻薬取引と軍の癒着
ギニアビサウの政情不安定の背景には、構造的な腐敗と組織犯罪の影が色濃く存在する。同国は南米から欧州へと向かう麻薬密輸の主要な中継地として知られ、「ナルコ・ステート(麻薬国家)」とも呼ばれてきた。麻薬密輸業者と政治家、そして一部の軍幹部との癒着が深く、これが政治的混乱の温床となってきた。
エンバロ大統領は2020年の就任以降、「断固として許容しない」政策を掲げ、麻薬取引への対策を進めてきたが、この強硬策が、麻薬取引から利益を得る軍内部の勢力や政治勢力との対立を深めたとされる。2023年12月には、大統領がクーデターと断定した銃撃戦の後、議会を解散するなど、内部対立は激化の一途を辿っていた。今回の軍事介入は、民主化と腐敗根絶を目指す試みが、軍による権力維持の動きによって妨げられた結果と見られている。
脆弱な経済基盤とカシューナッツ依存
政治的混乱に加え、ギニアビサウは経済的な脆弱性も抱えている。同国経済は、アフリカ有数の生産量を誇るカシューナッツ産業に大きく依存しており、世界の生産ランキングで12位に位置する。カシューナッツは主要な輸出品であり、国内労働力の8割が農業に従事しているが、天候不順や国際価格の変動に左右されやすい構造が、経済的不安定を招いている。2025年末の政府予算はGDPのマイナスに達する見込みであり、経済的苦境も政局の混乱に拍車をかけている。
カシューナッツ産業の発展は経済成長の鍵を握るが、加工・付加価値化の分野はまだ発展途上であり、輸出依存からの脱却が求められている。
ECOWASの介入と国際社会の責務
地域の安定化を目指すECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)は、ギニアビサウを重要な調停対象国と位置づけ、積極的に関与してきた。2022年のクーデター未遂事件後には600人規模の部隊を派遣し、国連(UNIOGBIS)と連携した平和構築支援も行っている。ECOWASは、今回のクーデターに対しても、民主的秩序の即時回復を求める強い圧力をかけるものと見られる。
ギニアビサウが長期的な安定を達成するためには、選挙結果の透明性を確保し、民主的プロセスを回復することが喫緊の課題である。さらに、軍が政治から完全に撤退し、麻薬密輸組織と結託する政治・軍の腐敗構造を根絶する必要がある。日本のODAによる貧困削減や平和構築への支援も継続されているが、軍事介入の繰り返しは、これらの努力を水泡に帰しかねない。ギニアビサウの安定化は、地域全体の安全保障と経済統合を進める上でも不可欠であり、国際社会の粘り強い介入と、国内の政治改革への強い意志が求められている。