『ゴースト・オブ・ヨウテイ』が変える羊蹄山:観光特需とニセコの不動産問題
ニュース要約: PS5ゲーム『ゴースト・オブ・ヨウテイ』が発売され、舞台となった北海道・羊蹄山(蝦夷富士)周辺で観光特需への期待が高まっている。冬場以外の閑散期解消の光となる一方、ニセコでは外国人投資による「ゴースト物件」の増加という現実の影も浮き彫りに。作品は歴史的・文化的背景と共に、現代の地域課題に議論を促している。
「蝦夷富士」に潜む影:『ゴースト・オブ・ヨウテイ』が照らす北海道の光と闇
【札幌発 2025年11月25日 共同通信】
去る2025年10月2日、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)からPlayStation 5(PS5)向けに発売されたオープンワールド時代劇アクションアドベンチャーゲーム『ゴースト・オブ・ヨウテイ』(Ghost of Yōtei)が、日本のゲーム市場のみならず、その舞台となった北海道・羊蹄山周辺地域に大きな経済的、文化的な波紋を広げている。開発元Sucker Punch Productionsによるこの作品は、先行作『Ghost of Tsushima』の独立した続編として、1603年の蝦夷地(現在の北海道)を舞台に、女武芸者「篤(あつ)」の復讐の旅を描く。発売から間もないにもかかわらず、その堅実なアクション、そして何よりも雄大な「蝦夷富士」こと羊蹄山のフィールドの美しさが国内外で高く評価されている。
観光特需の期待と「閑散期」の解消
ゲームの舞台である羊蹄山麓、特に国際的なスキーリゾートとして知られるニセコ地域では、『ゴースト・オブ・ヨウテイ』発売を契機とした新たな観光特需への期待が高まっている。この地域は冬場のスキー客で賑わう一方で、それ以外の季節、特にオフシーズンには日本人観光客すら閑散と感じる時期があるという課題を抱えてきた。
ニセコ観光協会や地元事業者らは、ゲームとの公式連携を積極的に進めており、地域と連携したコラボグッズの開発や、作中の名所を巡る「Ghost of Yōteiツアー」といった企画が活発化している。羊蹄山の雄大な自然と歴史的背景を前面に押し出すことで、年間を通じて国内外のファンを呼び込み、地域の経済活性化に繋げたい考えだ。
情報公開当初、一部で発売延期の噂も流れたが、公式はこれを否定し、堅実に開発を完了させた。この成功は、単なる娯楽作品の枠を超え、ニセコ地域の「閑散期」という経済的な影を打ち破る光となる可能性を秘めている。
羊蹄山に宿る「ゴースト」の正体
なぜ、北海道の山を舞台にした作品に「ゴースト(幽霊)」というタイトルが冠されたのか。その答えは、羊蹄山が持つ歴史的・文化的背景にある。
羊蹄山は、その神秘的な姿から古くから多くの伝説や怪談の舞台となってきた。特に、北海道の先住民族であるアイヌの人々にとって、山や川、動物には「カムイ」(神、精霊)が宿るとされており、羊蹄山も特別な聖地として崇められてきた。
地域住民が語る「ゴースト」の由来は、西洋的な幽霊というよりも、むしろ自然の精霊や山の守り神、すなわち「カムイ」の存在に近い。早朝や夕暮れ時、あるいは閑散期に山から立ち込める霧や、特定の光の角度で大きく映る羊蹄山の「影」が、まるで精霊のように見えることから、畏敬の念を込めて「ゴースト」と表現されてきた経緯がある。
『ゴースト・オブ・ヨウテイ』は、このアイヌ文化と日本の武士文化が交錯する蝦夷地を舞台に選び、歴史的事実に基づきながらも独自のアレンジを加えたフィクションとして、現代のファンにその奥深い文化を伝えている。
もう一つの「ゴースト」:ニセコの不動産問題
しかし、ゲームがもたらす光の裏側で、ニセコ地域には現実の経済的な「影」も存在している。
それは、外国人投資家による土地・別荘の買い占めと、それに伴う「ゴースト物件」(空き物件や利用されていない物件)の増加問題である。ニセコエリアの不動産市場は、外国人投資の急増により土地価格が高騰し、地元住民が住宅を取得することが困難になるという構造的な問題を抱えている。
豪華なログハウスや別荘が多数建設される一方で、実際の利用者は限定的であり、多くが転売目的や投資対象として利用され、長期間空き家状態となるケースが散見される。こうした「ゴースト物件」の増加は、地元の不動産市場に過熱感と不透明感をもたらし、地域経済の健全な発展を阻害する一因となりかねない。
『ゴースト・オブ・ヨウテイ』というタイトルが、歴史上の武士の「影」を描くと同時に、現代の北海道が抱える観光と不動産の二面性、すなわち、文化的な精霊としての「ゴースト」と、経済的な弊害としての「ゴースト物件」という、二つの「影」を同時に浮き彫りにしている事実は示唆に富む。
本作品の成功が、単なるゲームの話題に留まらず、舞台となった蝦夷地の歴史、アイヌ文化、そして現代のニセコが直面する課題について、日本国内、そして世界的な議論を深めるきっかけとなることが期待される。