Cloudflare大規模障害で露呈した「ネット基盤の脆弱性」企業のBCP見直し急務に
ニュース要約: 2025年11月18日夜、Cloudflareで大規模障害が発生し、X、ChatGPTなど主要サービスが停止。単一CDN依存による「単一障害点」の危険性が露呈し、企業のBCP見直しが急務に。マルチCDN戦略など多層的な対策の必要性が指摘されている。
広範囲に影響、X・ChatGPTなど主要サービスも停止
【速報】 2025年11月18日午後8時48分頃、世界最大級のCDN(コンテンツ配信ネットワーク)サービスを提供するCloudflareで大規模な障害が発生し、日本国内を含む世界中のウェブサイトやオンラインサービスに深刻な影響が広がっている。
今回の障害により、SNS「X(旧Twitter)」やAIチャットサービス「ChatGPT」、ビデオ通話サービス「Discord」など、日常的に利用される主要サービスが相次いで接続不能となった。多くのサイトで500エラーやAPIの不調が報告され、ユーザーからは「突然サイトが開けなくなった」「仕事に支障が出ている」といった声がSNS上に殺到した。
Cloudflareは午後8時50分頃、公式サポートページで障害を認識したことを発表。同社のグローバルネットワークに問題が発生しているとして、復旧作業を進めているが、午後9時の時点でも完全復旧には至っていない状況だ。
繰り返される障害、「単一障害点」の危険性
今回の障害は決して突発的なものではない。Cloudflareは2025年に入ってから複数回の重大な障害を経験している。特に6月12日には約2時間28分にわたる大規模障害が発生し、Workers KVやAccess、WARPなど複数サービスが停止。この際、AI Gatewayのリクエストエラー率は最大97%に達し、世界中のCloudflare利用企業が業務停止の危機に直面した。
さらに7月には、DNSサービス「1.1.1.1」が62分間ダウン。3月にはR2ストレージ障害により、書き込み操作が100%失敗するという深刻な事態も発生している。これらの障害の共通点は、Cloudflareという「単一障害点」への依存が引き起こす連鎖的影響の大きさだ。
情報セキュリティの専門家は「Cloudflareのような大規模CDNプロバイダーへの依存は、インターネット基盤そのものに脆弱性をもたらしている」と警鐘を鳴らす。実際、6月の障害では単一のストレージインフラの問題が複数の製品に波及し、グローバルな連鎖反応を引き起こした。
日本企業のBCP、クラウド依存リスクへの備え不足
今回の障害は、日本企業の事業継続計画(BCP)における重大な課題を浮き彫りにした。多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、クラウドサービスへの依存度を高める中、外部インフラの障害が直ちに業務停止につながるリスクが顕在化している。
特に問題なのは、代替手段の準備が不十分な企業が多いことだ。Cloudflare経由でしか自社サービスにアクセスできない設計の場合、障害発生時には打つ手がない。オンライン販売を主力とする小売業や、Web認証に依存する金融サービスなどでは、数時間の障害でも多額の機会損失が発生する。
IT危機管理の専門家は「複数のCDNプロバイダーの併用や、自社オリジンサーバーの冗長性確保が急務」と指摘する。また「障害検知から代替ルートへの自動切り替えまで、数秒単位で対応できる体制の構築が必要だ」と強調する。
求められる多層的な対策とリスク分散
企業が取るべき対策は多岐にわたる。まず、単一のCDNプロバイダーへの依存を避け、マルチCDN戦略を採用すること。次に、エッジでのキャッシング戦略を強化し、CDN障害時でも一定期間はサービス継続できる設計にすること。さらに、リアルタイムモニタリングシステムを導入し、障害の早期検知と迅速な対応を可能にすることが重要だ。
また、ユーザーコミュニケーションも見逃せない。障害発生時には、ステータスページを通じて透明性の高い情報提供を行い、ユーザーの信頼を維持する必要がある。
今回の障害は、便利さと引き換えに私たちが抱え込んだリスクの大きさを改めて示した。インターネットという社会インフラの信頼性を高めるため、企業は今こそBCPの抜本的な見直しに取り組むべきだろう。Cloudflareの復旧作業は続いているが、この教訓を今後の対策に生かせるかが問われている。
(午後9時現在、障害は継続中。最新情報は各社の公式発表を確認されたい)