綾野剛、新境地へ。R18+『星と月は天の穴』咲耶が放つ「純文学のエロス」
ニュース要約: 2025年12月公開の吉行淳之介原作R18+映画『星と月は天の穴』を深掘り。主演の綾野剛は、愛を恐れながらも求める40代男性の複雑な内面を体現し、キャリアの新境地を開いた。新星・咲耶は「純文学のエロス」を放つヒロインとして物語の鍵を握る。荒井晴彦監督が文学的な深さと芸術性を両立させた注目作。
【深度レポート】吉行文学の深淵へ:綾野剛の新境地と、新星・咲耶が放つ「純文学のエロス」
2025年12月19日、日本映画界に一石を投じるであろう待望の異色作『星と月は天の穴』が公開される。文壇の巨匠、吉行淳之介の同名小説を原作とし、日本映画界の重鎮・荒井晴彦監督がメガホンを取った本作は、愛と性、そして40代男性の複雑な内面を深くえぐり出すR18+指定の芸術作品だ。
公開を控え、すでに試写会では批評家からの高い評価が寄せられているが、特に注目を集めているのが、主演の綾野剛が見せる新境地と、物語の鍵を握るヒロイン・瀬川紀子を演じる若手女優、咲耶の存在感である。
綾野剛が体現する「愛を恐れる男の滑稽さ」
主人公は、妻に逃げられ孤独を抱える小説家・矢添克二(綾野剛)。彼は女性を愛することを恐れながらも求めずにはいられないという、矛盾した感情の渦中にいる男だ。
これまで幅広い役柄を演じてきた綾野剛だが、本作で彼が披露するのは、従来のカリスマ的な魅力とは一線を画す「枯れかけた男の色気」と、その裏にある「滑稽さ」である。荒井監督は、吉行文学特有の、純文学が内包するペーソス(哀愁)とエロティシズムの融合を、綾野の繊細な演技によって見事に映像化してみせた。
矢添は、娼婦や大学生の女性との関係を通じて愛を模索するが、自身のコンプレックスや過去の秘密から逃れられない。綾野は、この男の葛藤を細やかに表現し、観客に感情的な共鳴を促す。特に、愛への渇望と恐怖の狭間で揺れる40代男性の心理描写は、多くの観客の胸を打つだろう。批評家たちは、綾野剛が本作で「表現力の核」を担い、キャリアにおける新たな扉を開いたと絶賛している。
検索急上昇「咲耶」:物語を揺さぶる鍵を握るヒロイン
そして、本作のもう一つの大きな焦点が、主人公の精神的な愛の可能性を問い直す重要な役どころ、大学生・瀬川紀子を演じる咲耶である。
咲耶は、俳優の吹越満と広田レオナを両親に持つ二世俳優だが、本格的に俳優を志したのはここ数年という新進気鋭の存在だ。荒井監督は彼女をオーディションで「直感的に決めた」と評しており、その存在感が作品の世界観に不可欠であったことを示している。
紀子は、女性を拒む矢添の心に無邪気に足を踏み入れ、彼の日常を揺さぶる。咲耶の魅力は、情報にもあるように「女の子」と「女性」の間を行き来する繊細な色気だ。この文学的なR18+作品において、彼女は純粋さと官能性を併せ持つ稀有な存在感を放っている。
特筆すべきは、オーディション時に彼女が「純文学の登場人物になってみたい」「オールヌードありの作品に出てみたい」という強い願望を表明し、制作陣を驚かせた点だ。これは、単なる役柄への挑戦ではなく、吉行文学の持つ深遠な世界観に対する、若手俳優としての覚悟と情熱を示すものだろう。咲耶は、綾野剛と対峙しながら、堂々としたヒロイン像を確立し、物語の展開に決定的な影響を与える存在となっている。
文学的映像化の成功と日本映画界への挑戦
『星と月は天の穴』は、単なる官能映画としてではなく、愛の恐怖と渇望を内包した人間の深層心理を掘り下げた、高度な芸術性を誇る作品として評価されている。荒井監督は、吉行淳之介の文学的な深さを損なうことなく、映像として成立させるという難題に挑み、見事に成功を収めた。
独特の文体や、耳で聴くような感覚の映画表現は、原作ファンにとっても新鮮な驚きとなるはずだ。綾野剛、咲耶に加え、田中麗奈、柄本佑、宮下順子といった実力派キャストが脇を固め、この複雑でエモーショナルな物語を豊かにしている。
公開が迫る中、本作は日本映画界における「純文学のエロティシズム」の新たな可能性を示す異色作として、大きな期待が寄せられている。私たちは、この冬、綾野剛と咲耶という二つのキーパーソンが織りなす、深く、そして哀しい愛の物語を、劇場で目撃することになるだろう。