「あさイチ」×朝ドラ『ばけばけ』効果:島根・八重垣神社に参拝客が殺到、地域経済を押し上げ
ニュース要約: NHK「あさイチ」が朝ドラ『ばけばけ』の舞台、島根・松江市を特集。ドラマで鍵となる「八重垣神社」は、放送直後からウェブ検索でトレンド入りし、参拝客が急増している。特に名高い「鏡の池」での恋占いに注目が集まり、地域経済に大きな効果をもたらす一方、観光インフラの維持が課題となっている。
「あさイチ」が繋ぐ朝ドラと古社の縁 島根・八重垣神社に「ばけばけ」効果で参拝客急増
【松江発】 2025年10月9日、NHK総合で放送された情報番組「あさイチ」が、連続テレビ小説(朝ドラ)『ばけばけ』の舞台地、島根県松江市の観光客動員に劇的な影響を与えている。特に、番組内で詳細に紹介された縁結びの古社「八重垣神社」は、放送直後に主要なウェブ検索エンジンやSNSでトレンド入りを果たし、ドラマの登場人物「ばけばけ リヨ」に関する検索も急増するなど、複合的な「朝ドラ効果」が地域経済を押し上げている。
テレビメディアが創出する「聖地巡礼」
連続テレビ小説『ばけばけ』は、明治時代の松江を舞台に、怪談を愛するヒロインの成長を描く物語である。ドラマの中で、ヒロインの親友である「ばけばけ リヨ」(北香那)が、物語の鍵となる場面で八重垣神社を訪れ、名高い「恋占いの池」で占いに興じるシーンが話題を呼んだ。
このドラマの重要なエピソードとシンクロするかたちで、「あさイチ」が松江市特集を組んだことは、視聴者に対し、ドラマの世界を「現実」として追体験できる機会を提供した。番組では、神社の歴史や正しい参拝方法に加え、奥の院に鎮座する「鏡の池」での独特な恋占いの儀式が詳しく紹介された。
この占いは、紙製の小舟に硬貨(一厘銭)を乗せて池に浮かべ、その沈む速さや沈む場所によって、縁の早さや相手との距離を占うというものだ。小舟が早く沈むほど良縁が早く訪れ、近くで沈めば近場の人との縁、遠くで沈めば遠方との縁があるとされる。この神秘的な占いの様子が、ドラマの感動と相まって全国に配信された結果、放送直後から「八重垣神社」への関心が爆発的に高まった。
八重垣神社:古来より伝わる縁結びの由緒
八重垣神社は、古事記に登場する素盞嗚尊(スサノオノミコト)と稲田姫命(イナタヒメノミコト)の夫婦神を祀る由緒ある神社であり、古くから縁結びの神として篤い信仰を集めてきた。特に、稲田姫命が八岐大蛇の難を逃れるために身を隠したとされる地に湧く「鏡の池」は、その神聖さから強力なパワースポットとして知られている。
観光客の増加に伴い、神社側も参拝客への情報提供を強化している。正しい参拝の流れは、まず本殿で夫婦神にお参りし、その後、奥の院の天鏡神社が鎮座する鏡の池へと進み、恋占いを行うのが通例だ。この占いは、単なる恋愛成就だけでなく、広く仕事や人間関係における良縁や願い事にご利益があるとされ、幅広い層の参拝客を惹きつけている。
地域観光の活性化と課題
今回の「あさイチ」特集と朝ドラ『ばけばけ』の相乗効果は、松江市全体の観光振興に大きく寄与している。松江市は、小泉八雲が愛した「怪談のふるさと」としても知られており、八重垣神社への訪問と合わせて、小泉八雲記念館や城下町を巡る「怪談ツアー」にも注目が集まっている。
松江市観光協会によれば、10月の特集放送以降、市内の主要ホテルや旅館の予約率が顕著に上昇しており、特に若い女性層やドラマファンによる「聖地巡礼」が増加傾向にあるという。これは、NHKの全国放送という巨大なプラットフォームが、特定の地域文化や歴史的スポットを一気に全国区に押し上げる、現代におけるメディアの影響力を改めて示す事例と言える。
しかしながら、急激な観光客の増加は、神社の静謐な環境維持や、交通インフラへの負荷といった課題も生じさせている。特に人気の「鏡の池」周辺では、占いを待つ参拝客の行列が常態化しており、神社側は参拝客のスムーズな誘導と環境保全の両立を求められている。
メディアと地域の持続的な連携へ
今回の事例は、テレビ番組と連続ドラマという二つの強力なコンテンツが連携することで、地域の文化資源が観光資源として再評価され、経済効果を生み出す好循環を示した。
NHKの「あさイチ」が提供した具体的な情報と、『ばけばけ』が描き出した情緒的な物語が結びつき、視聴者に「行ってみたい」という強い動機を与えた。この瞬間的なブームを一過性のものに終わらせず、松江市が持つ歴史的魅力や文化を国内外に持続的に発信し続けることが、今後の重要な戦略となるだろう。
(2025年11月26日付 報道局)