安保瑠輝也、ONE厳格「水抜き検査」に屈す 計量失敗が突きつけたプロの責任と課題
ニュース要約: キックボクサー安保瑠輝也がONE 173で計量と独自のハイドレーションテストの両方に失敗し、波紋を呼んでいる。過去のトラッシュトークもあり批判が集中したが、交渉によりキャッチウェイトでの試合が成立。今回の失敗は、ONEの厳格なルールと日本人選手のコンディショニング管理の課題を浮き彫りにした。
安保瑠輝也、ONE独自の「水抜き検査」に屈す――波紋広がるハイドレーションテスト失敗とプロの責任
衝撃の計量失敗、ONE厳格ルールが突きつけた現実
2025年11月15日、シンガポールで開催される格闘技イベント「ONE 173」の公開計量において、日本人キックボクサーの安保瑠輝也選手(29)が、フェザー級リミットをクリアできないという衝撃的な事態が発生した。
安保選手は、定められた体重規定のクリアに加え、ONEチャンピオンシップが選手の安全確保のために独自に導入している「ハイドレーションテスト」(尿比重測定による脱水状態チェック)の両方で、規定時間内にクリアすることができなかった。
初回計量では体重がわずか約181グラムの超過であったものの、ハイドレーションテストの数値は規定値1.0250に対し1.0292と、脱水状態にあると判断された。その後、再計量に臨んだ際には、尿比重は1.0248と規定値をクリアしたものの、今度は体重がリミットを約2.9キロもオーバーするという異例の展開となった。
このハイドレーションテストは、危険な水抜きによる過度な減量を防ぎ、試合当日の安全性を高めるための策としてONEが厳格に運用しているルールだ。計量とこのテストを同時にクリアすることの難しさが、今回、トップファイターである安保選手をもってしても浮き彫りとなった形だ。
トラッシュトークの代償か、「体重計バグ」の自虐謝罪
今回の計量失敗が日本国内で大きな波紋を呼んだ背景には、安保選手が直前会見で、対戦相手のマラット・グレゴリアン選手に対して仕掛けたトラッシュトークがある。グレゴリアン選手が前回の日本大会で計量オーバーした際、「焼肉食べに来たか?」と挑発していた経緯があったためだ。
その舌の根も乾かぬうちに自らが計量失敗に陥ったことで、SNS上では「プロ失格」「トラッシュトークをする資格がない」といった厳しい批判が殺到した。
しかし、安保選手は自身のSNSで事態を収拾すべく動いた。「これに関しては持ってきた体重計がバグってた。それもプロ失格!」と、ユーモアを交えつつも準備不足を認める投稿を行った。さらに、「焼肉奢るから試合してくださいグレゴリアンさん」と対戦相手に呼びかけ、試合実現に向けた交渉が水面下で進められた。
結果、両陣営の交渉により、キャッチウェイト(合意体重)での試合開催が成立。安保選手は出場権を失う最悪の事態は回避したが、プロとしての信頼回復は試合本番でのパフォーマンスにかかっている。
厳格化する格闘技界の潮流と日本人選手の課題
今回の安保選手の事例は、日本の格闘技界が抱える課題、そして国際的な舞台で戦う上でのルールの厳格化を象徴している。
日本の主要な格闘技イベントでは、体重計量のみが中心となることが多いが、ONEが導入したハイドレーションテストは、選手の健康と競技の公平性を確保するための国際的潮流だ。過酷な水抜きが原因で、試合当日に選手が十分な力を発揮できず、時には命に関わる健康被害に繋がるリスクを排除するための、極めて重要な安全策である。
安保選手が初回にハイドレーションテストをクリアできなかった事実は、彼が規定時間内に安全なコンディションでの体重調整に成功しなかったことを示している。これは、従来の「体重だけ落とせば良い」という減量方法が、ONEの舞台では通用しないことを改めて証明した。
日本人選手が今後、ONEのような世界基準の舞台で活躍し続けるためには、体重調整の技術だけではなく、尿比重を含めた綿密なコンディショニング管理が必須となる。安保選手の今回の失敗は、本人が語った「プロ失格」という言葉以上に、日本の格闘家全体に、世界標準のプロフェッショナリズムとは何かを突き付ける警鐘となったと言えるだろう。
キャッチウェイトでの試合は成立したものの、計量オーバーというハンディを背負い、対戦相手に謝罪と譲歩を強いられた事実は重い。安保選手は、この試練を乗り越え、真のトップファイターとして、日本のファンにその真価を示すことができるのか。注目の決戦は間もなくゴングを迎える。