【緊急警告】指定薬物「ゾンビたばこ」の闇:若年層を蝕むエトミデート乱用と依存の連鎖
ニュース要約: 指定薬物エトミデートを添加した「ゾンビたばこ」が若年層で急速に蔓延し、深刻な社会問題となっている。経済的困窮から安価な快感に逃避する若者が増え、さらに路上に捨てられたデバイスの再利用による感染症と中毒の「ダブルリスク」に直面。摘発だけでなく、若者への経済的支援と依存症治療体制の強化が急務だ。
【緊急ルポ】指定薬物「ゾンビたばこ」の闇:若年層を蝕むエトミデート乱用と社会の隙間
路上に潜むダブルリスク 経済的困窮が加速させる依存の連鎖
2025年11月28日 朝日新聞・社会部
近年、若年層を中心に急速に蔓延している違法な電子タバコ、通称「ゾンビたばこ」が、深刻な社会問題として浮上している。これは、本来医療用麻酔薬として用いられる指定薬物「エトミデート」を違法にリキッドに添加したものだ。使用後に精神錯乱や意識喪失といった重篤な症状を引き起こすことから、その異名が付いた。警察当局は摘発を強化しているが、その背後には若者の経済的困窮と、路上にポイ捨てされたデバイスを再利用する衛生上のリスクという、複合的な問題が横たわっている。
1.中枢神経を破壊する「エトミデート」の恐怖
「ゾンビたばこ」の主成分であるエトミデートは、日本では医療用に承認されていない鎮静剤であり、中枢神経系と副腎に作用する。乱用すると、多幸感の後に強い手足のしびれ、痙攣、そして意識の混濁を引き起こす。特に問題視されているのは、この薬物が短期間で強力な依存症を形成することだ。厚生労働省は今年5月、エトミデートを正式に指定薬物に認定し、所持・使用に対する法的規制を強化した。
しかし、密輸組織は依然としてネット通販などを利用し、従来の違法薬物よりもはるかに安価にリキキッドを流通させている。一部のルートでは数百円程度で入手可能であるため、「手軽に試せる」という誤った認識が、特に10代から20代の若年層に広がり、乱用を加速させている。沖縄県などでは、街中で奇声を発したり、発作を起こして路上にうずくまる使用者が続出しており、地域社会に大きな不安をもたらしている。
2.若者の経済的困窮と依存の連鎖
「ゾンビたばこ」問題の根底には、日本の若年層が抱える経済的な不安定さが深く関わっている。非正規雇用の増加や低賃金労働により、安定した収入を得られない若者たちが、安価な快感に逃避する傾向が指摘されている。
例えば、2025年11月に報道された沖縄の「空き家事件」では、経済的に困窮した少年たちが違法行為で得た金銭を「ゾンビたばこ」の購入に充てていた実態が判明した。経済的な苦境が違法行為と薬物依存の悪循環を生み出しており、社会的な孤立を深める要因となっている。依存症が進むと、日常生活が破綻し、さらなる犯罪行為や暴力行為に走るケースも報告されており、単なる薬物問題として片付けられない構造的な課題となっている。
3.路上に潜む「再利用」の衛生リスク
この問題に加えて、路上にポイ捨てされた加熱式たばこや電子タバコのデバイスを拾い、残留リキッドを再利用する行為が、新たな衛生リスクを生み出している。
ポイ捨てされたデバイスは、雨や動物の接触により、大腸菌や黄色ブドウ球菌、ノロウイルスといった病原体の温床となる。これらの汚染されたデバイスをそのまま口腔内に使用することは、感染症リスクを大幅に高めるだけでなく、残留するエトミデートや他の不純物による急性中毒やアレルギー反応を引き起こす危険性も極めて高い。
衛生管理が全くされていない状態での「ゾンビたばこ」の再利用は、薬物中毒と感染症という「ダブルリスク」を若者に負わせる行為であり、専門家は「絶対に避けるべき行為だ」と強く警告している。
4.摘発強化と今後の課題
警察当局は、密輸組織の摘発とともに、路上での使用者の検挙を本格化させている。しかし、識者は「単なる摘発や規制強化だけでは、根本的な解決には至らない」と指摘する。
問題の背景には、若年層の経済的自立を支援する施策の不足や、薬物依存症治療体制の脆弱さがある。今後、行政には、若者への雇用支援や経済的セーフティネットの強化とともに、「ゾンビたばこ」の危険性に関する啓発活動(例えば名古屋市で展開されている「ダメ。ゼッタイ。」キャンペーン)を全国的に展開し、依存症に陥った人々への治療と社会復帰支援を充実させることが急務となっている。
「ゾンビたばこ」の蔓延は、現代社会の経済格差、社会的孤立、そして規制の隙間を突く違法薬物市場の巧妙さが生んだ、複合的な危機と言える。社会全体でこの闇に光を当てる必要がある。(了)