運行障害を乗り越える「横須賀線」の今：E235系導入と沿線大規模再開発で描く未来への投資

安定輸送と未来への投資：頻発する運行障害を乗り越え、沿線再開発で活路を見出す「横須賀線」の今

【東京・神奈川】 2025年11月28日、首都圏の重要な動脈である横須賀線は、今週に入り相次ぐ運行障害に見舞われ、その脆弱性が改めて浮き彫りとなった。一方で、沿線の主要駅では大規模な再開発計画が進行しており、交通インフラとしての機能強化と地域経済の活性化という二つの大きな課題に直面している。東京と神奈川を結び、古都鎌倉や軍港横須賀への観光客を運ぶ横須賀線の現状と、JR東日本および沿線自治体が描く未来図を追う。

I. 頻発する人身事故、広域に及ぶ「連鎖遅延」の深刻化

今週、横須賀線は二度にわたる深刻な運行障害を経験した。特に11月22日午後、保土ヶ谷駅付近で発生した人身事故は、単なる一時的な遅延では済まなかった。この事故は横須賀線の上下線に大きな影響を与えただけでなく、直通運転を行う湘南新宿ラインや総武快速線にも波及し、広範囲にわたる列車遅延と運休を引き起こした。復旧までに約1時間以上を要し、通勤・通学客、そして観光客の足に深刻な混乱をもたらした。

さらに、27日にも総武快速線内で人身事故が発生し、再び横須賀線への直通運転が一時見合わせとなるなど、運行の安定性が喫緊の課題となっている。この時期は、紅葉シーズン終盤の鎌倉観光客の増加や、年末に向けた人の動きが活発になる時期と重なっており、運行管理の複雑さが増している。広域ネットワークを形成する横須賀線にとって、一つの区間でのトラブルが他の路線へ連鎖する「広域遅延」への対策は、もはや待ったなしの状況だ。

II. 横須賀中央駅、追浜駅：駅と一体となった大規模再開発が始動

運行の安定化が求められる一方で、横須賀線沿線では未来に向けた投資が活発化している。特に中核となる横須賀中央駅と追浜駅周辺では、都市機能の高度化を目指す大規模な再開発計画が具体的に動き出している。

横須賀中央駅周辺では、旧商業施設「プライム」の跡地を活用し、商業施設、ホテル、マンションを擁する高層複合ビルの建設が進行中だ。立体歩行者通路（Yデッキ）の整備も伴い、駅周辺の利便性と集客力の飛躍的な向上が期待されている。

また、追浜駅周辺では、国と連携した国道16号の交通ターミナル整備や交差点改良が進められ、駅前第2街区では複合開発が計画されている。ここには、高層マンション（約337戸）、店舗、図書館、公共駐輪場などが集積し、交通結節点としての機能強化と防災性の向上が図られる。2025年着工、2028年竣工を目指すこれらのプロジェクトは、単なる建物の建設に留まらず、地域経済の活性化、交流人口の増加、そして沿線価値の向上に大きな波及効果をもたらすものと期待されている。

III. 冬の鎌倉・横須賀観光、アクセスを支える大動脈

横須賀線は、東京・品川方面から鎌倉や横須賀といった歴史的・観光的な重要拠点へのアクセスを担う大動脈だ。特に冬場は、静寂に包まれた北鎌倉駅周辺の円覚寺や建長寺、あるいは鎌倉駅からアクセスする鶴岡八幡宮といった古都の風情を楽しむ観光客に重宝される。

終着駅の一つである横須賀駅・久里浜駅からは、三笠公園や猿島など、歴史と海軍文化を感じられるスポットへのアクセスが良好だ。冬の澄んだ空気の中で、歴史的施設巡りや海沿いの散策を楽しむ上でも、東京駅からの直通運転が可能な横須賀線の利便性は極めて高い。

IV. 2025年ダイヤ改正：安定輸送への布石

JR東日本は、2025年3月15日のダイヤ改正において、横須賀線の安全・安定輸送を確保するための重要な施策を打ち出す。一つは、東京～品川間のトンネル設備の維持管理時間を確保するため、始発・最終列車の一部を品川駅発着に変更することだ。これは夜間作業時間を拡大し、インフラの保守を徹底するための措置であり、長期的な安全性の確保に繋がる。

また、車両面では、混雑緩和と輸送効率の向上を目的として、普通車（グリーン車除く）の座席を全てロングシートに統一する方針が示されている。さらに、旧型のE217系車両から新型のE235系への更新が進められており、ダイヤ改正後にはE235系による運行が主体となる見込みだ。これにより、快適性の向上とともに、運行の安定性、特に機器故障による遅延リスクの低減が期待される。

横須賀線は、頻発する運行障害という難題を抱えつつも、沿線の再開発という未来への大きな希望を携えている。安全・安定運行と都市機能の高度化、この二つの両輪が揃うことで、横須賀線は首都圏南部のさらなる発展に貢献するだろう。