柳田悠岐1億円減と柳町達が保留：ソフトバンク外野陣に迫る「世代交代」の波

柳田悠岐 1億円減更改の裏で「世代交代」の波　柳町達は保留、ホークス外野陣の再編へ

（2025年11月30日付け 朝日新聞スポーツ面より）

ソフトバンクの外野陣は今オフ、大きな転換期を迎えている。長年にわたりチームの顔として君臨してきた柳田悠岐外野手（37）は11月29日、福岡市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、前年から1億円減となる年俸3億7000万円（出来高払いあり）でサインした。3年連続の大幅な減額となったが、7年契約の最終年を終え、現役続行への強い意欲を示した。

一方で、2025年シーズンに交流戦MVPを獲得し、次世代のホークスを担う存在となった柳町達外野手（27）は同日、交渉を保留した。球団側は「心境の変化」があったと明かしており、ベテランの去就と若手の台頭が交錯する中、ソフトバンクは来季に向けた外野陣の再構築を迫られている。

第一章：ベテランの覚悟と「死ぬまで自重」

柳田悠岐選手の契約更改は、3年連続の大幅ダウンという厳しい結果となったが、その背景には、球団が7年契約の最終年を迎えたベテランに対し、来季以降の役割を再定義しようとする意図が見て取れる。

柳田選手は、2025年シーズン序盤はリハビリ調整に時間を要したが、9月下旬に一軍復帰して以降、チームの雰囲気を一変させた。特に日本シリーズでは5試合で打率.455、出塁率.591という驚異的な数字を残し、5年ぶりの日本一の立役者となった。長谷川勇也コーチも「柳田の存在がチームの雰囲気を変えた」と、そのリーダーシップを高く評価している。

契約交渉後、柳田選手は具体的な複数年契約の提示内容については明言を避けたものの、現役続行への強い意欲を示した。さらに、オフの自主トレテーマを「死ぬまで自重」と掲げ、37歳という年齢を迎えながらも、器具に頼らず「強くて動ける体」を追求する独自の調整法を継続している。自宅からみずほペイペイドームまでBMXクルーザーで通勤し、球場入り前から負荷をかけるなど、そのプロ意識は衰えを知らない。

球団側は、査定の結果としての減額ではなく、複数年契約の調整も含まれているとのコメントを出しており、柳田選手の経験とポストシーズンでの貢献が、今後の若手育成や精神的支柱としての役割に不可欠であるとの認識を示している。

第二章：飛躍の柳町達、保留の深層

一方、ホークス外野陣の「未来」を象徴する柳町達選手は、柳田選手と同日に行われた契約更改交渉を保留した。柳町選手はプロ6年目の2025年シーズンに大ブレイクを果たし、交流戦MVP、パーソルCSでも打率.417を記録するなど、チームの攻撃を牽引した。

三笠杉彦GMは、柳町選手との話し合いの中で「心境の変化がある」との発言があったことを明かしている。具体的な保留理由は非公開だが、柳町選手が自身初のタイトル獲得と中心打者としての役割を確立したことで、来季以降の評価や起用法について、球団と建設的な議論を交わしているものとみられる。

柳町選手は、その安定した打撃と高い出塁率で、今後数年間のソフトバンク打線を支える核として期待されており、球団側も来季は正外野手としてのフル回転を期待している。今回の保留は、20代後半を迎え、キャリアのピークを目指す若手選手としての、来季にかける覚悟の表れとも解釈できる。

第三章：成熟期を迎えるホークス外野陣の展望

ソフトバンクの外野陣は、来季、「柳田悠岐の経験とリーダーシップ」と「柳町達の若さと攻撃力」をいかに融合させ、円滑な「世代交代」を進めていくかが焦点となる。

2025年シーズン終盤の成功は、柳田選手がベンチ入りすることでチームにもたらした相乗効果が大きかったと分析されている。来季、柳田選手には出場機会の調整や若手の育成支援といった「ベテランの役割」がより強く求められる可能性が高い。

対照的に、柳町選手は、名実ともにチームの中心打者としての地位を確立することが期待される。球団は、柳田選手の経験を活かしつつ、柳町選手を筆頭とする若手を主軸に据えることで、長期的なチーム強化を目指す戦略を描いている。

柳田選手が年俸ダウンを受け入れ現役続行を決断したこと、そして柳町選手が保留という形で来季への強い要求を示したことは、ソフトバンクの黄金時代を支えたベテランと、新時代を築く若手が、それぞれの立場でチームの勝利に貢献しようとする強い意志の表れだ。

両選手のオフの調整、そして来春キャンプでの起用法は、2026年シーズンのホークスの浮沈を占う重要な鍵となるだろう。交渉を保留した柳町達選手の動向と、柳田悠岐選手の複数年契約の行方には、引き続き注目が集まる。

（了）