【長距離】日体大記録会で好記録続出！箱根駅伝へ最終アピール合戦

【長距離】日体大記録会、箱根駅伝へ最終アピール合戦　大東大・小野寺ら躍動、日体大ルーキーも台頭

2025年11月30日

大学長距離界の熱気が最高潮に達するこの時期、箱根駅伝のエントリーメンバー選考に向けた最終盤の試金石となる「日体大記録会」が、今年も多くの注目を集めた。2025年11月29日から30日にかけ、神奈川県横浜市の日体大健志台陸上競技場で開催された第325回日本体育大学長距離競技会兼第19回NITTAIDAI Challenge Games（NCG）では、好条件に恵まれ、大学生から実業団選手までが次々と自己ベストを更新。特に年末年始の大舞台を控える各大学にとって、この日体大記録会は、選手たちが持つ潜在能力を証明する重要なアピールの場となった。

大学長距離界、29分台が続出　箱根選考へ若手が名乗り

今回、最も激しい火花が散ったのは、各大学の主力候補が顔を揃えた男子10000mだ。

なかでも、大東文化大学の小野寺選手（3年）は、5組に出場し、29分35秒98という好タイムで3着に入り、チーム最速をマークした。小野寺選手は今秋以降、長距離への適性を着実に伸ばしており、この記録はチーム内の7組の選手をも上回るもの。常勝を期す大東大の箱根駅伝エントリーメンバー入りへ、大きく可能性を引き上げた形だ。

主催校である日本体育大学勢のルーキーの台頭も目覚ましい。日髙選手（1年）は10000m7組で29分38秒63を記録し、大幅な自己ベストを更新。距離適性の高さを証明し、駅伝メンバー入りの当確ランプを灯した。また、同じく1年の増子選手も初めて29分台を突破する29分45秒70をマーク。日体大は近年、若手の育成に力を注いでいるが、今回の記録会は、その成果が着実に現れていることを示す結果となった。

この時期の日体大記録会は、単なるタイム計測の場ではない。各校の監督は、この高速レースへの対応力や、プレッシャー下での粘り強さを評価し、箱根駅伝の最終区間配置や補欠メンバーの選考基準とする。好記録が続出した背景には、高速ペースメーカーの導入に加え、選手たちが「ここで結果を出さなければ」という切実な思いで臨んだことが挙げられる。

日本記録保持者・齋藤みう、5000mで驚異的な自己新

大学界の躍動に加え、女子中長距離界のトップランナーもこの舞台でその実力を示した。NCG女子5000mでは、パナソニック所属の齋藤みう選手が、驚異的な走りで15分11秒01という大幅な自己新記録を樹立した。

齋藤選手といえば、今年9月の東京世界選手権で3000m障害に出場し、9分24秒72という17年ぶりの日本新記録を達成した実力者である。専門外とも言える5000mでこれだけの好記録を出したことは、彼女の持つスピードとスタミナが世界レベルで通用し始めていることを示唆している。多種目にわたる適性の高さは、今後の日本女子中長距離界の新たな可能性を広げるものとして、大きな期待が寄せられる。

日本長距離界の「土壌」としての役割

日体大記録会が年間を通して、これほどまでに重視されるのには理由がある。50年以上の歴史を持ち、年間約8回開催されるこの記録会は、高校生、大学生、実業団選手が一堂に会し、切磋琢磨できる日本最大級の舞台だ。

安定したペースメーカーの存在、そして記録が出やすい気候条件が揃う11月～12月の集中開催は、「公式記録」や「標準記録」の突破を狙うランナーにとってこれ以上ない環境を提供する。順位争いよりも「自己ベスト更新」に重きを置く記録会形式が、選手個々の挑戦意欲を刺激し、結果として日本全体の競技レベルを引き上げている。

今回の記録ラッシュは、年末年始の駅伝シーズンに向けた準備が順調に進んでいることを示すとともに、2026年以降の国際大会を見据えた若手選手の育成が着実に進んでいる証左と言えるだろう。日体大記録会が提供するハイレベルな環境は、今後も日本長距離界の発展を支える重要な「土壌」であり続ける。