【天皇杯】神戸、「経験」で伝統の一戦制す!サンフレを2-0で退け連覇へ王手
ニュース要約: 天皇杯準決勝、ヴィッセル神戸がサンフレッチェ広島を2-0で下し決勝進出。連覇に王手をかけた神戸の勝因は、酒井高徳らベテラン勢の「経験」がもたらした安定感と決定力。ドラマを生んだ大迫勇也の献身的な動きも光った。決勝はFC町田ゼルビアと激突する。
「経験」が導いた連覇への道筋:神戸、伝統の一戦でサンフレを退け決勝進出
2025年11月17日
【吹田】11月16日、パナソニックスタジアム吹田で行われた天皇杯 JFA 第105回全日本サッカー選手権大会準決勝は、ヴィッセル神戸がサンフレッチェ広島を2-0で下し、見事、決勝進出を決めた。連覇に王手をかけた神戸の勝因は、試合巧者ぶりもさることながら、怪我から復帰したベテラン勢の「経験」がチームにもたらした安定感と決定力に尽きる。
激しい攻防が繰り広げられた“伝統の一戦”で、神戸は前半24分、永戸勝也が先制ゴールを奪取。この1点をリードして迎えた後半、試合の流れを決定づけたのは、VARが絡む劇的なPKシーンだった。
復帰戦でクリーンシートを支えた酒井高徳の統率力
この準決勝で、神戸の守備陣に確かな安定感をもたらしたのは、約1ヶ月半ぶりに公式戦先発復帰を果たしたDF酒井高徳だ。
負傷離脱を経てピッチに戻ってきた背番号24は、常に最終ラインから的確なコーチングを送り、広島の攻撃を事前に摘み取る「盾」として機能した。ボール保持率ではサンフレッチェが上回る時間帯もあったが、酒井の存在がもたらす組織的な守備は堅牢そのもの。特に後半、広島がサイドから中央への速攻を仕掛けた際も、酒井は冷静なカバーリングで危機を回避し、チームに無失点(クリーンシート)をもたらす立役となった。
経験豊富なリーダーが守備の要を担うことで、神戸は後ろを気にせず、前線にエネルギーを注ぐことができたと言えるだろう。
ドラマを呼んだ「大迫劇場」とPKの行方
一方、攻撃面で大きなドラマを生み出したのは、負傷明けでベンチスタートだったエース、FW大迫勇也だった。
後半18分に途中投入された大迫は、疲労が見え始めた広島守備陣に対し、即座にその存在感を誇示する。後半20分過ぎ、武藤嘉紀がGK大迫敬介(広島)と接触し、PKを獲得。このPKのキッカーを任されたのが、投入されたばかりの大迫勇也だった。
しかし、大迫が蹴ったシュートは、皮肉にも相手GKであり同姓の大迫敬介に阻まれてしまう。だが、ここでVARが介入。オンフィールドレビューの結果、キックの瞬間にGK大迫敬介がペナルティマークを離れていたと判定され、PKのやり直しが命じられたのだ。
この極度の緊張感の中、キッカーは佐々木大樹に交代。佐々木は冷静にゴールを決め、神戸は2-0とリードを広げた。大迫勇也はPKを失敗したものの、その直前までの献身的な動きと、PKを獲得した一連の流れそのものが、チームに勢いをもたらす「矛」の役割を果たしたことは間違いない。
サンフレの課題と決勝への展望
敗れたサンフレッチェ広島は、試合を通してボールを支配し、攻撃の形を作ろうと試みた。しかし、決定機での精度を欠き、神戸の強固な守備を最後まで崩すことができなかった。川辺駿やマテウス・トゥーレルらを中心に奮闘したが、攻撃陣の連携とフィニッシュの質が、この大一番では神戸に一歩及ばなかったと言える。この決定力不足は、来季に向けたサンフレの大きな課題となるだろう。
見事、難敵サンフレッチェを退けたヴィッセル神戸は、11月22日に行われる決勝で、初優勝を目指すFC町田ゼルビアと激突する。
酒井高徳の安定した守備と、大迫勇也のカリスマ性が融合した神戸は、まさに盤石の体制で連覇に挑む。天皇杯という一発勝負の舞台で、経験豊かなベテランたちが随所に見せた勝負強さは、タイトル獲得へ向けた大きな自信となるに違いない。神戸が歴史に名を刻む連覇を達成するのか、それとも勢いのある町田が新たな頂点に立つのか。日本サッカー界の年末を彩る頂上決戦から目が離せない。