晩秋の箱根:紅葉とインバウンドが交差、円安下の活況と箱根駅伝への熱狂、持続可能な観光への課題
ニュース要約: 晩秋の箱根は、標高差による紅葉がクライマックスを迎える中、歴史的円安を追い風にインバウンド観光客が急増し活況を呈している。芦ノ湖や大涌谷周辺の賑わいと並行し、新春の箱根駅伝に向けた熱気も高まる一方、地域資源を守りながら観光客増に対応する「持続可能な観光」の実現が最重要課題となっている。
晩秋の箱根、賑わいと熱狂の交差点—紅葉から駅伝へ、インバウンド回復と持続可能な観光への課題
【箱根】 2025年11月21日、晩秋の箱根は、標高差によって段階的に色づく紅葉のフィナーレを迎えつつある。現在、箱根美術館周辺は全体的に見頃を迎え、芦ノ湖や大涌谷といった主要観光地では、赤や黄色の絨毯が広がる絶景が旅行者を魅了している。同時に、円安を背景とした外国人観光客(インバウンド)の急増と、新春の国民的行事である箱根駅伝に向けた熱気が高まり、この地域は今、観光、経済、そしてスポーツの三つの側面で大きな転換期を迎えている。
標高が織りなす紅葉のグラデーションと冬の静寂
例年、箱根の紅葉は10月上旬の仙石原高原のススキから始まり、11月中旬から下旬にかけてクライマックスを迎える。現在、強羅公園や小涌谷エリアでモミジやドウダンツツジが美しく色づく一方で、標高の高い大涌谷や箱根ロープウェイ沿線では、これから本格的な見頃を迎える。湖上からの紅葉鑑賞が人気の芦ノ湖エリアでは、遊覧船や海賊船からモミジと富士山の共演を楽しむ観光客で賑わいを見せている。
紅葉シーズンが終焉を迎えると、箱根は澄んだ空気と雪景色が魅力の静かな冬の装いへと移行する。観光客が減るこの時期は、都会の喧騒から離れ、ゆったりと過ごしたい旅行者にとって理想的だ。特に、仙石原温泉や塔之沢温泉といったエリアには、静かで趣のある穴場温泉旅館が点在する。江戸時代創業の老舗や、深い竹林に囲まれた一軒宿「山の茶屋」など、源泉かけ流しにこだわる宿での滞在は、冬の箱根ならではの贅沢な癒しを提供する。
円安が加速させるインバウンド需要と観光地の変容
箱根の観光経済は、水際対策の緩和と歴史的な円安を追い風に、急速に回復している。2023年の箱根町の外国人観光客数は前年比約8倍の約34万4千人に達し、消費額も大きく増加した。海外からの旅行者にとって日本の旅行が割安になったことで、箱根のような高付加価値の温泉観光地への訪問が加速している。
しかし、この急速な回復は新たな課題も生んでいる。旅行形態が団体から個人へと移行し、富裕層から低予算のバックパッカーまで多様化する中、一部の宿泊施設や土産物店では、外国人観光客向けに価格設定が高められる傾向が見られ、日本人観光客の戸惑いを招くケースも指摘されている。
箱根町は、単に観光客数を増やすだけでなく、付加価値の高いサービス提供と持続可能な観光の実現を重視する方針を打ち出している。地域の魅力を維持しつつ、観光客と地元住民の双方にとって最良のバランスを見つけることが、今後の最重要課題となっている。
新春の熱狂へ、箱根駅伝2026の熾烈なシード権争い
観光地の賑わいとは一線を画し、箱根は新春に向けて別の熱狂に包まれる。第102回箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)の最終調整が各大学で進められており、特にシード権争いが例年以上に激化している。
近年、総合10位以内に入るための走力レベルは大幅に向上しており、シード権獲得のタイムラインは高速化の一途を辿る。優勝候補の「5強」、すなわち青山学院大学、駒澤大学、國學院大学、早稲田大学、中央大学などの伝統的強豪校が注目される一方で、シード権を狙うチーム間の混戦は熾烈だ。
特に、中央大学はエース級ランナーを擁し、青学大を上回る勢いを見せるなど、優勝争いの構図にも変化が生じている。また、順天堂大学や東京農業大学などのチームも、山の区間(5区・6区)に経験者を配置するなど、戦略的な配置で序盤の流れを掴もうと最終調整を進めている。
自然の美しさ、歴史的な温泉文化、そして国民的スポーツのドラマが交錯する箱根。この地域は、円安を追い風に活況を取り戻しつつも、地域資源と観光客の増加のバランスを取りながら、持続可能な未来に向けた模索を続けている。(了)