「たぬかな」炎上騒動から再起3年:eスポーツプロ選手の倫理と社会的責任
ニュース要約: 2022年に差別的発言で大炎上し、契約解除となった元プロゲーマーのたぬかな氏が活動再開から約3年が経過。彼女は現在ストリーマーとして地位を確立しつつ、eスポーツ界への復帰を目指している。この騒動は、日本のeスポーツ業界に対し、プロ選手が負うべき倫理規定と社会的責任の重要性を再認識させる教訓となった。
「たぬかな」炎上騒動から再起の軌跡:eスポーツ業界の倫理規定とプロ選手の社会的責任、その現在地
【東京発 2025年11月25日 共同通信】
かつて格闘ゲーム『鉄拳7』のトッププロゲーマーとして名を馳せ、2022年の差別的発言による大炎上騒動で業界に大きな波紋を広げたたぬかな氏(年齢非公表)が、活動を再開してから約3年が経過した。彼女は現在、ストリーマーとして独自の地位を確立しつつ、eスポーツの現場復帰に向けた歩みを進めている。この騒動は、競技としての地位向上を目指す日本のeスポーツ界に対し、プロ選手が負うべき「社会的責任」と「倫理規定」の重要性を厳しく突きつける教訓となった。
業界を揺るがした「人権発言」の波紋
たぬかな氏のキャリアにおいて最大の転換点となったのは、2022年2月15日のライブ配信中の発言である。彼女は特定の身長以下の男性に対して「人権がない」と発言し、これがインターネット上で瞬く間に拡散、大炎上を引き起こした。
この発言は、単なるゲーム内でのスラングや過激なジョークとして処理されるレベルを超え、現実の個人に対する差別的な言動と受け取られた。結果として、当時所属していた強豪チーム「CYCLOPS Athlete gaming(CAG)」は即座に契約解除を発表。長年のスポンサーであったレッドブル(Red Bull)との契約も打ち切られるなど、プロ選手が負う社会的責任の重さが浮き彫りとなった。
この事件は、日本のeスポーツ業界全体に対して、コンプライアンス体制の抜本的な見直しを迫る契機となった。多くのチームや団体が、プロ選手のSNS利用や発言に関する倫理規定を緊急で見直し、コンプライアンス研修の実施を強化した。業界内では、プロゲーマーという存在が、もはやゲームコミュニティ内部のみで通用する存在ではなく、社会に対する影響力を持つ公人としての自覚が求められるという共通認識が形成されたと言える。たぬかな氏のケースは、表現の自由と倫理的責任のバランスについて、依然として議論の的となっている。
謹慎と復帰:配信者としての新たなスタイル
契約解除後、たぬかな氏は約1年間の謹慎期間に入った。この期間を経て、2023年1月にはTwitchで配信活動を再開。かつての鉄拳を中心としたゲーム配信スタイルから一転し、視聴者との雑談を中心とした配信へとシフトした。
彼女の配信は、過去の炎上騒動を乗り越えた経験や、率直な物言いが視聴者の共感を呼び、独自のコミュニティを形成している。2025年現在、SNSや動画配信を通じて約24万人のフォロワーを抱え、熱心なファン層に支えられている。一方で、過去の発言に対する根強い反発も存在し、コミュニティ内では賛否両論が激しく交錯しているのが現状だ。
eスポーツ界への段階的な復帰
本格的なeスポーツシーンへの復帰に向けた動きも見られる。2023年7月、たぬかな氏はゲーミングチーム「NOEZ FOXX」のストリーマー部門に加入した。これは、かつてのプロゲーマーとしての地位とは異なるが、eスポーツコミュニティとの接点を再び作り出す重要な一歩となった。
2025年には、同チームの合同ファンミーティング「異端児の会合」に出演するなど、積極的にファンとの交流やイベント参加を行っている。競技大会での目覚ましい成績報告は近年は少ないものの、配信活動やオンライン大会への参加は継続しており、現役としての活動意欲は保たれている。
さらに、2024年11月には自著を出版するなど、活動領域を配信外にも広げている。また、2025年11月には以前から結婚していた事実を公表するなど、私生活の安定も伺える。
試されるプロ選手の社会的規範
たぬかな氏の再起の道のりは、eスポーツ業界が直面する現代的な課題を象徴している。プロゲーマーが公的な発言力を持ち始めた今、彼らの言動が持つ社会的影響力は計り知れない。
彼女の事例は、差別的発言が契約解除やスポンサー離脱に直結するリスクを明確化し、プロ選手の一挙手一投足に対する管理と自覚の必要性を業界に強く認識させた。eスポーツの社会的地位向上には、競技力だけでなく、選手個々の倫理観と社会的規範の順守が不可欠である。
2025年現在、たぬかな氏は炎上から再起を果たした配信者として、そしてeスポーツの倫理規定を巡る議論の象徴として、その存在感を保ち続けている。彼女の今後の活動は、プロゲーマーという職業が今後、いかにして社会的責任を果たしていくかを示す試金石の一つとなるだろう。