sumika、深化と挑戦の12周年：最新作「Beatnik」と2026年武道館への軌跡

sumika、結成12周年の深化と挑戦：最新シングル「Beatnik」が示す二律背反の魅力と2026年武道館への展望

2025年11月30日

結成12周年を迎えたロックバンド、sumikaが、その創造性の新たな深みを示している。11月5日に配信リリースされた最新シングル「Beatnik」は、プロデューサーを異にする2つのバージョンを同時発表するという異例の形式を取り、音楽メディアやリスナーの間で大きな話題を呼んでいる。この戦略は、バンドが持つ「普遍的なメロディー」と「絶え間ない変化への意欲」という二律背反的な魅力を鮮明に浮き彫りにし、2026年の日本武道館公演を含む大規模ツアーに向けた大きな弾みとなっている。

「Beatnik」が切り開いた新しい地平：TAKU INOUEとの化学変化

最新曲「Beatnik」は、「抑圧からの解放」をテーマに、ボーカルの片岡健太が作詞・作曲を担当した意欲作だ。特筆すべきは、洗練されたエレクトロニックサウンドが特徴の「Beatnik -Bird-」と、バンドサウンドを前面に押し出した「Beatnik -Horse-」という、対照的な2バージョンが同時に世に問われた点にある。

「Beatnik -Bird-」は、近年目覚ましい活躍を見せるプロデューサー、TAKU INOUE氏を迎え、sumikaの叙情的なメロディーラインに、現代的で先鋭的なサウンドメイクが融合した。音楽評論家からは「sumikaの世界観を拡張する洗練されたアレンジ」として高く評価されている。一方、セルフプロデュースによる「Beatnik -Horse-」は、ゲストギタリストに木下哲（礼賛）を迎え、アナログ的で生々しいバンドのライブ感を強調。「原点回帰」を感じさせるサウンドが、初期からのファン層にも強く響いた。

この2バージョンの対比はリスナーに新たな聴取体験をもたらし、商業的にも成功を収めている。配信開始直後、「Beatnik -Bird-」はBillboard Japan Hot 100の週間チャートで初登場15位を記録。両バージョン合わせたストリーミング再生数は、わずか1週間で累計100万回を突破した。特に「-Bird-」がApple Musicの「日本トップソング」チャートで最高5位、「-Horse-」がSpotifyの「Viral 50 Japan」チャートで最高8位にランクインするなど、異なるサウンドがそれぞれのプラットフォームで支持を集める結果となった。

映像作品との「相乗効果」を最大化する手腕

sumikaの楽曲が持つ強みは、その高いメッセージ性と、映像作品とのタイアップにおける「相乗効果」の創出にある。

2025年の活動においても、新曲「Honto」が映画『ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』の主題歌に決定するなど、クロスメディア展開が積極的だ。過去を振り返ると、劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』（2018年）では、オープニングテーマ「ファンファーレ」と主題歌「春夏秋冬」を含む3曲を提供。監督との綿密な打ち合わせを通じて、物語のテーマや主人公の心情に深く寄り添った楽曲を制作し、映像の感動を増幅させた。

また、実写映画『ぐらんぶる』（2025年）の主題歌「絶叫セレナーデ」では、映画の持つユニークな世界観（真面目さとギャグの融合）を、タイトルと歌詞のミスマッチ感で表現。単に作品に寄り添うだけでなく、楽曲自体の完成度を最優先する姿勢が、映像と楽曲の両方の価値を向上させている。こうした戦略的なタイアップは、原作ファンと音楽ファンが相互に作品に惹かれるきっかけとなり、バンドの知名度と作品の認知拡大を同時に実現する強力なドライバーとなっている。

アリーナツアーの熱気と2026年武道館への挑戦

2025年のsumikaは、結成12周年という節目を迎え、ライブ活動においてもその勢いを加速させている。3月にリリースされた5thアルバム『Vermillion’s』を引っ提げ、全国33公演に及ぶ全国アリーナツアー『sumika Live Tour 2025「Vermillion's」』を敢行。ファイナルとなった6月29日のさいたまスーパーアリーナ公演では、アルバムの世界観を忠実に再現したセットリストで観客を熱狂させた。このツアーの模様は、WOWOWでの放送も予定されており、バンドの成熟したパフォーマンスが広く伝わる見込みだ。

そして、バンドはすでに次なる目標を設定している。2026年4月からは、日本武道館2DAYSを含む全国ツアー「Live Tour 2026『Unique』」の開催が決定している。これは、結成10周年を記念した横浜スタジアム公演（2023年）に続く、さらなる規模拡大への挑戦だ。

sumikaは、最新作「Beatnik」で示した音楽性の多様性と、映像作品とのタイアップで培ってきた表現力、そして大規模ライブの成功体験を糧に、2026年に向けて新たなフェーズへと移行しつつある。彼らの「Unique」な音楽が、今後日本の音楽シーンにどのような軌跡を描き出すのか、引き続き注目が集まる。