セイウンハーデス、ジャパンC「大逃げ」の衝撃 G1連戦で露呈した課題と有馬記念への戦略転換

セイウンハーデス、ジャパンカップで「大逃げ」に散るも粘り示す G1連戦で露呈した課題と次走有馬記念への戦略転換

【東京】 2025年11月30日、東京競馬場で行われた第45回ジャパンカップ（G1、芝2400m）において、秋のG1戦線で安定した成績を残してきたセイウンハーデス（牡6歳、橋口慎介厩舎）が、大胆な戦術で競馬ファンの注目を集めた。結果は上位入線を逃したものの、前走の**天皇賞（秋）**での3着に続くトップレベルでの挑戦は、同馬の充実ぶりと同時に、今後の戦略的な課題を浮き彫りにした。

ジャパンカップ、意図的な「大逃げ」の終焉

この日のジャパンカップは、世界レーティング1位の海外強豪カランダカンが制覇する中、セイウンハーデスは鞍上・菅原明良騎手の手綱のもと、序盤からハイペースで先頭を引っ張る「大逃げ」戦術を採用した。

前走の**天皇賞（秋）**では中団から末脚を伸ばし3着に食い込んでいた同馬が、一転して逃げの手に出た背景には、強敵揃いのG1戦線で活路を見出す陣営の意図があったと見られる。しかし、重めの馬場コンディションも影響し、直線で後続の猛追に遭い、スタミナ切れを露呈する形で上位馬に交わされた。

レース後、専門家からは「意図的な大逃げは、この馬の新たな可能性を探る試みとして評価できる」としつつも、「終盤の粘り強さは見せたが、トップレベルのG1では戦略が裏目に出た。課題は明確にスタミナ配分だ」との厳しい分析も聞かれた。特に、海外の強豪馬との決定的な差が、直線での瞬発力と持続力の両面で明確になった形だ。

充実の秋、屈腱炎からの復活劇

セイウンハーデスがこの秋のG1戦線に駒を進めている背景には、特筆すべきキャリアの軌跡がある。同馬は2023年に七夕賞（G3）を制覇した後、右前脚の屈腱炎を発症し、約1年間の長期離脱を余儀なくされた。

しかし、2025年に復帰を果たすと、復帰3戦目のエプソムカップ（G3、芝1800m）で、従来の記録を0.2秒更新するコースレコードを達成し、見事に復活を遂げた。この復活劇は、陣営の献身的な調整と、牡6歳を迎えたセイウンハーデス自身の能力の高さを示すものだった。

獲得賞金は1億7,403万円に達し、中団追走から繰り出す確かな末脚を武器に、芝1800mから2000mの中距離で安定した成績を収めてきた。**天皇賞（秋）**での12番人気ながらの3着入線は、その地力の証左と言えるだろう。

橋口調教師は、このジャパンカップでの挑戦について「負けはしたが、トップレベルで戦える手応えは掴めた。この経験を次に生かしたい」とコメントしており、G1での連戦を通じて、同馬が新たなフェーズに入ったことを示唆している。

次走は有馬記念か、戦略の見直しが急務

ジャパンカップを終えたセイウンハーデスの次走動向に、早くも注目が集まっている。現在のところ、年末の総決算レースである有馬記念（G1、12月28日、中山芝2500m）が有力な選択肢として視野に入れられている。

しかし、今回のジャパンカップでの「大逃げ」策の失敗と、専門家からの「距離短縮や中団待機策も視野に入れるべき」との提言は、陣営に戦略的な見直しを迫るものだ。

有馬記念は中山のトリッキーな2500mという舞台であり、ジャパンカップよりもさらにスタミナと立ち回りの巧みさが求められる。もし出走が実現すれば、セイウンハーデスにとって距離適性が改めて問われる厳しいレースとなるだろう。

G1連戦で、そのポテンシャルと課題の両面を明確にしたセイウンハーデス。牡6歳にしてなお成長を続ける「粘り強い古豪」が、年末の大舞台でどのような戦略をもって臨み、雪辱を果たすのか。その動向は、年末競馬の最大の焦点の一つとなる。