エヌビディア決算目前、49兆円の変動巡りAI市場が固唾を呑む
ニュース要約: AIチップの盟主エヌビディアの決算発表が20日に迫り、市場は最大3200億ドル(約49兆円)規模の時価総額変動を織り込んでいる。売上高は前年同期比56%増と驚異的な成長が見込まれる中、次世代AIチップ「ブラックウェル」の生産状況が株価の鍵。今回の決算は、AI革命の持続可能性を問う試金石として、世界の投資家が注目している。
エヌビディア決算発表目前、時価総額49兆円の変動を巡り市場は固唾を呑む
【ニューヨーク19日共同】 人工知能(AI)チップの盟主、エヌビディア(NVIDIA)の2026年度第3四半期決算報告が20日に迫る中、投資家の注目が最高潮に達している。市場は約3200億ドル(約49兆円)規模の時価総額変動を織り込んでおり、これは一企業の決算発表としては異例の規模だ。
圧倒的な成長見通しと高まる期待
市場コンセンサスによれば、エヌビディアの売上高は前年同期比約56%増の548億ドル、調整後の一株当たり利益(EPS)は約55%増の1.25ドルと、驚異的な成長が見込まれている。特に、次世代AIチップ「ブラックウェル」の生産状況と顧客需要が、株価動向の鍵を握るとされる。
データセンター向けグラフィックプロセッサ(GPU)の需要は引き続き旺盛で、同社はAIインフラ市場で92%という圧倒的なシェアを維持している。マイクロソフトやアマゾン、グーグルといった超大規模テクノロジー企業の資本支出拡大が、同社の成長を下支えしている構図だ。
オプション市場に見る投資家の思惑
決算発表を前に、オプション市場は極めて高いボラティリティを示している。デリバティブ戦略に精通したヘッジファンドは、プットオプションとコールオプションを組み合わせたストラドル戦略で、株価の上昇下落変動に備えている。米国株時間外取引では±7~8.5%の変動が予想され、これは決算後の時価総額が最大で3200億ドル変動する可能性を示唆している。
機関投資家の間では、「期待」と「警戒」が交錯する。高い利益率とAI応用市場の拡大がバリュエーション過大論への防衛線となる一方、ハイテク株全体の売却圧力やAIブーム減速への懸念も根強い。市場センチメントは、同社自身が示す今後の業績ガイダンスに大きく左右されるだろう。
半導体業界の勢力図を塗り替える存在
エヌビディアの時価総額は既に4兆ドルを突破し、世界最大の半導体企業の地位を確立した。台湾のTSMCをはじめとするサプライチェーンも、同社のGPU生産を最優先で支えている。韓国のSKハイニックスやサムスン電子が供給する高帯域メモリー(HBM)も、AIチップの性能を支える重要な要素だ。
一方、日本の半導体市場シェアは低下傾向にあり、米国や韓国、台湾企業の台頭が顕著となっている。日本企業にとって、AI関連支出の波に乗れるかが今後の課題となろう。
AIバブル崩壊論は時期尚早か
一部で囁かれるAIバブル崩壊論について、市場関係者の多くは「時期尚早」との見方を示す。ソフトバンクグループの孫正義会長や投資家のピーター・ティール氏ら、AI投資に積極的な識者は、大規模言語モデルの発展とAIインフラ需要の持続性を強調している。
ただし、S&P500指数全体の動向や企業投資の見直しなど、マクロ経済環境の変化には注意が必要だ。エヌビディアの決算報告は、単なる一企業の業績にとどまらず、AI革命そのものの持続可能性を問う試金石となる。
世界の投資家が固唾を呑んで見守る中、日本時間20日夜に発表される決算内容が、今後の半導体業界とハイテク株市場の方向性を決定づけることになるだろう。