【超高齢社会】認知症リスク3倍超「フレイル」を断て!自治体急務の複合対策と予防戦略
ニュース要約: 超高齢社会で深刻化する「フレイル」は、認知機能低下と連動し、認知症リスクを3倍超に高める。早期発見のサインは歩行能力や体重減少。予防にはレジスタンス運動と高タンパク質摂取が不可欠だ。全国の自治体は、健康寿命延伸のため、フレイルチェックやICTを活用した複合的な予防対策を急務としている。
超高齢社会を蝕む「フレイル」:認知症リスク3倍超、自治体は複合対策を急務
身体の衰えと認知機能低下が連動、早期発見で防ぐ要介護
2025年11月21日
超高齢社会の進展に伴い、高齢者が要介護状態に陥る手前の虚弱な状態を示す「フレイル」の予防が、喫緊の国民的課題となっている。最新の研究では、身体的な衰えと認知機能低下が同時に進行する「コグニティブ・フレイル」が、単独の症状よりも認知症発症リスクを3倍以上高めることが示されており、予防戦略の複合化が求められている。全国の自治体は、地域包括ケアシステムの要として、フレイルチェックの導入やデジタル技術を用いた多角的な対策を急いでいる。
早期サインは「歩行」と「体重」:専門医が指摘する危険信号
専門医は、フレイルの早期発見サインとして、主に以下の3点に注意を促している。第一に「歩行能力の低下」(歩く速度の減少や疲れやすさ)、第二に「体重の減少」(3か月以内に2~3kg以上の意図しない減少や食欲低下)、そして第三に「疲労感や活動量の低下」(外出や社会参加の減少)である。
特に深刻なのは、身体的フレイルと軽度認知障害(MCI)が共存するコグニティブ・フレイルの状態だ。これは、身体の衰えが脳機能に悪影響を及ぼし、認知症や要介護状態への移行を加速させる「負の連鎖」を引き起こす。この連鎖を断ち切るためには、身体的・認知的側面の双方に対し、早期かつ包括的な介入が不可欠となる。
予防の三本柱:自宅で実践可能な「運動」と「栄養」戦略
フレイル予防の基本戦略は、「運動」「栄養」「社会参加」の三本柱で構成される。特に、身体機能の維持に直結する運動と栄養面での対策は、自宅で手軽に始められるものが多い。
予防運動法においては、筋肉量の維持、特にサルコペニア対策に効果的なレジスタンストレーニングが強く推奨されている。具体的には、特別な器具を必要としない「椅子を使った立ち上がり運動」や、ゆっくりとしたスクワットなど、下半身の筋力を鍛えるメニューが有効だ。これにウォーキングなどの有酸素運動や、転倒予防のためのバランス運動を組み合わせ、毎日10分程度継続することが重要視されている。
また、冬場に特に注意が必要なサルコペニア対策として、食事による高タンパク質摂取が欠かせない。豆腐、厚揚げ、チーズ、鶏むね肉などを活用したレシピは、高齢者や小食の方にも食べやすく、筋肉と免疫力の維持を助ける。専門家は、1日3食、肉・魚・卵・大豆・乳製品を意識して摂取し、少量でも高エネルギー・高タンパクな食品を選ぶよう呼びかけている。
全国に広がる自治体主導の「フレイルチェック」
こうしたフレイルの脅威に対し、全国の自治体は地域住民の健康寿命延伸に向けた取り組みを強化している。現在、フレイルチェックは全国84自治体が導入するなど、地域保健活動の標準プログラム化が進む。
先進的な取り組みとしては、兵庫県が専門職と配食事業者が連携する体制を構築し、チェック票を用いた早期発見に注力。大阪府は働く世代からの予防を目標に、健康サポート薬局や事業所と連携した多層的なアプローチを展開している。
さらに、IT技術を活用した取り組みも目覚ましい。広島市では、地域包括支援センターと連携し、歩行姿勢測定システムや健康チェック機能を導入。千葉県柏市では、健康づくり活動への参加を促す「かしわフレイル予防ポイント」制度を導入し、市民の社会参加と活動量を促進している。
住民の主体性とICT活用が鍵
今後のフレイル予防対策では、従来の公民館などに集まる運動講座に加え、ICT技術を活用したアプリやデジタルツールによる新しい形の情報提供や指導が広がると見られる。横浜市のように、民間事業所との連携を強化するための認証制度の設立も進んでおり、予防活動の多様化と質の向上が期待されている。
超高齢社会において、単に長生きするだけでなく、健康で活動的な生活を維持するためには、住民一人ひとりが「フレイル」を自らの問題として捉え、早期発見と予防運動法を日常生活に取り入れる主体的な行動が、何よりも求められている。自治体や専門職は、高齢者が楽しみながら継続できる環境整備と、地域での交流を促進する「通いの場」の確保を通じて、健康長寿社会の実現を目指す。