エヌビディア好決算でも株価下落:ダウ・ナスダックを襲う「AIバブル」の懸念
ニュース要約: 2025年11月18日、AIチップの巨人エヌビディアは過去最高益を更新したが、株価は下落した。高値警戒と金融引き締め懸念から「AIバブル」終焉への警戒感が急速に高まり、ナスダック総合指数は続落。この調整局面は日本の半導体関連銘柄にも深刻な影響を及ぼしており、投資家には慎重なスタンスが求められる。
巨像エヌビディアが示す市場の限界点:ダウ・ナスダックを襲う「AIバブル」の懸念
2025年11月18日現在、米国株式市場は急激な調整局面に直面しています。市場の牽引役であったAIチップの巨人、エヌビディア(NVIDIA)が発表した好決算にもかかわらず、投資家の間では「AIバブル」の終焉、あるいは少なくとも過熱相場のピークアウトに対する警戒感が急速に高まっています。
日本の投資家にとって、ハイテク株の動向は翌日の東京市場の半導体関連銘柄(東エレク、アドテストなど)の動きに直結するため、この米国の調整局面は極めて深刻な懸念材料となっています。
巨額の利益にもかかわらず株価が下落した理由
エヌビディアが発表した2025年第3四半期(2024年8~10月)決算は、売上高が前年比94%増の350億8200万ドル(約5兆4400億円)、純利益も109%増の193億900万ドルを記録し、依然としてAIチップ「Blackwell」の需要に支えられた過去最高益を更新しました。
しかし、この圧倒的な業績にもかかわらず、エヌビディアの株価は11月18日、NY市場で前日比1.88%安の186.60ドルと下落して取引を終えました。
市場が好決算を素直に評価できなかった背景には、主に以下の三つの要因が指摘されています。
- 高値警戒と利益確定売り: AI相場によってエヌビディア株は既に高水準に達しており、一部アナリストが予想していた売上高(548億ドル)や純利益(305億3000万ドル)にはわずかに届かなかったとの見方から、短期的な利益確定売りが優勢となりました。
- 競合の台頭と中国リスク: AMDやインテルといった競合他社がデータセンター向けAIチップ市場への攻勢を強めていること、そして中国市場における輸出規制の影響が今後も重しとなる懸念が払拭されていません。
- 金融政策の逆風: 12月のFOMC(連邦公開市場委員会)でFRBが利下げを見送る可能性が高まっており、金融緩和期待の後退が、金利感応度の高いハイテク・グロース株全体のリスクオフを誘発しています。
ナスダックとNYダウの調整と市場の分断
エヌビディアの株価調整は、AI関連株全体に波及しました。AMD(-2.55%)やインテル(-2.28%)といった半導体銘柄はもちろん、マイクロソフト(-0.53%)やアップル(-1.82%)といったハイテク大手も連れ安の展開となりました。
この結果、ハイテク株中心のナスダック総合指数は22,708.07ポイント(-0.84%)で続落。特に先物市場では、ナスダック100先物が1.37%という大幅な下げ幅を記録しており、成長株に対する投資家の警戒感が顕著に表れています。
一方、NYダウ平均株価は46,590.24ドル(-1.18%)と、下落率自体はナスダックよりやや大きかったものの、その構成銘柄の動きには市場の分断が見て取れます。ダウを構成するジョンソン・エンド・ジョンソンやウォルマートなどの伝統的産業株は比較的底堅く推移しており、ハイテク株のショックを吸収する役割を果たしています。
この現象は、AIブームが牽引する成長株と、安定した業績を持つ伝統株との間で、資金のシフトが起きていることを示唆しています。投資家は、ボラティリティの高いハイテク株から、配当利回りや安定性を重視した銘柄へと一時的に避難している状況です。
日本株への影響と今後の展望
米国市場の動向は、東京市場に直接的な影響を及ぼします。ナスダック総合指数と日本の半導体関連銘柄は高い相関性を持つため、米国のハイテク株調整が続けば、日本株も短期的に売り圧力が強まることは避けられません。
ただし、中長期的な視点で見れば、エヌビディアの決算が示したように、AI需要の本質的な強さは揺らいでいません。次世代チップ「Blackwell」への需要は継続的であり、データセンターへの投資も止まることはないでしょう。
短期的には、FRBの金融政策と年末商戦前のリスク回避姿勢が市場を支配し、調整局面が続く可能性が高いです。日本の投資家は、足元のボラティリティに惑わされることなく、AIという構造的な成長テーマへの信認を維持しつつ、押し目買いの機会を探る慎重なスタンスが求められています。
米国市場の焦点は、一時的な株価の変動ではなく、AIという技術革新がもたらす企業収益の持続性へと移りつつあります。市場がこの「高値警戒」を乗り越え、再び上昇トレンドを築けるかどうかが、2026年の世界経済の動向を左右する鍵となるでしょう。
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