閉園直前「ノースサファリサッポロ」最後の冬:極限体験と動物福祉の功罪
ニュース要約: 2025年9月末閉園予定のノースサファリサッポロが、最後の冬を迎え活況を呈している。雪上サファリやスリル満点の動物との触れ合いが人気を集める一方、「危険すぎる」体験型経営モデルは、動物福祉の観点から長年にわたり批判に晒されてきた。同園の終焉は、今後の動物園が「体験」と「倫理」をどう両立させるかという重い課題を投げかけている。
【深層】「ノースサファリサッポロ」最後の冬、極限体験と動物福祉の狭間で
体験型動物園のパイオニア、閉園迫る中での特異な集客力
北海道札幌市南区に位置する体験型動物園、ノースサファリサッポロが、閉園予定を控えた最後の冬を迎え、例年以上の活況を呈している。2025年9月末の閉園が発表されているものの、冬期は雪上アクティビティを中心とした営業を継続しており、観光客は「冬ならではの動物との触れ合い」と「スリル満点の体験」を求めて連日押し寄せている。同園は、従来の動物園の枠を超えた「デンジャラス」な体験と、冬の北海道の雪景色を融合させた独自のビジネスモデルで、国内外から注目を集めてきた。
雪と動物が織りなす「雪上サファリ」の熱狂
ノースサファリサッポロの冬季限定イベント「雪上サファリ」は、雪に覆われた広大な敷地を舞台に、動物たちの冬の生態を間近で観察できる機会を提供する。特に人気を集めているのは、雪中で湯気に包まれながら温泉に浸かるニホンザルの姿や、雪上バナナボート、スノーモービル、そして何よりも犬ぞり体験といった、北海道の冬を象徴するアクティビティ群だ。
札幌市中心部から地下鉄とバスを乗り継ぎ約45分というアクセスの良さも手伝い、家族連れやカップルにとって、冬の動物園体験の新たな定番となっている。全長150メートルのロングコースを滑走する犬ぞり(1,800円)は特に人気が高く、朝早くからの入場が混雑回避の鍵とされている。
この「雪上サファリ」は、単なる動物の展示に留まらず、来場者自らが雪と戯れ、動物との距離を極限まで縮める体験型エンターテインメント空間を創出している。ブリザード体験(マイナス30℃の体感)など、冬季ならではの非日常的な体験は、SNSを中心に拡散され、集客力を高める大きな要因となっている。
賛否両論を呼ぶ「危険すぎる動物とのふれあい」
ノースサファリサッポロの代名詞とも言えるのが、「危険すぎる動物」とのふれあい体験だ。来園者は、スタッフの厳重な管理のもと、トラの檻の中での餌やりや、ワニを抱っこする、巨大なヘビを首に巻くといった、他の施設ではまず許されないスリリングな体験が可能である。特に「デンジャラスの森」と名付けられたエリアは、その迫力から連日長蛇の列ができるほどの人気を誇る。
しかし、この過激な体験型経営モデルは、一方で動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点から、長年にわたり厳しい批判に晒されてきた。一部報道や識者からは、動物たちが狭い檻に閉じ込められている実態や、過度な触れ合いによるストレス、異種動物を同一空間に配置する飼育環境について、改善の必要性が指摘されている。
同園側は、体験時間を制限し、安全指導を徹底することで、来園者の安全を確保していると説明する。しかし、動物の健康と精神的安定を最優先すべきという現代の動物園運営の潮流においては、ノースサファリサッポロのビジネスモデルは常に議論の的となってきた。スリルとエンターテインメントを追求する姿勢が、動物の尊厳とどのようにバランスを取るべきか、社会に大きな問いを投げかけている。
閉園迫る中、問い直される動物園のあり方
2025年9月末の閉園が予定されているため、この2025年冬期シーズンが、雪上アクティビティを楽しめる実質的に最後の機会となる可能性が高い。希少な体験を求める人々にとっては、この冬がノースサファリサッポロを訪れるラストチャンスとなる。
同園は、単なる動物の展示施設ではなく、宿泊施設「アニマルグランピング」も併設し、夜間の動物の生態観察など、長時間滞在型の観光モデルを確立してきた。その革新性と集客力は、日本の動物園業界に大きな影響を与えたことは間違いない。
しかし、閉園という結論に至った背景には、経営的な判断に加え、動物福祉に関する社会的な意識の変化も無関係ではないだろう。極限の体験を提供し、常に話題の中心であり続けたノースサファリサッポロの功績と課題は、今後の日本の動物園が、いかにして「体験」と「倫理」を両立させていくべきかという重い宿題を残している。来園者は、冬の特別な体験を楽しむと同時に、この施設の特異な歴史と、動物たちを取り巻く環境にも思いを馳せる必要がある。