日経平均4万9000円割れ:AIバブル調整と急円高が引き起こした市場激震
ニュース要約: 2025年11月18日、日経平均株価は1600円超の大幅下落を記録し、4万9000円を割り込んだ。市場は、米エヌビディア決算を控えたAIバブル調整の懸念と、急激な円高によるリスク回避の動きに直面。円安の恩恵が剥落し始め、ハイテク株や資源企業の収益構造に逆風が吹き付けている。
日経平均、4万9000円割れの衝撃—AIバブル調整と急激な円高が日本市場を直撃
2025年11月18日、東京株式市場は激震に見舞われた。日経平均株価は午後の取引で一時1600円を超える大幅下落を記録し、約3週間ぶりに節目である4万9000円の大台を割り込んだ。市場を覆う不安の背後には、二つの巨大なリスク要因が横たわっている。一つは、世界的なAIブームを牽引してきた米エヌビディア(NVIDIA)の決算を前にした「AIバブル調整」の懸念。もう一つは、これまで日本企業の収益を支えてきた歴史的な円安基調が急転したことによる、急速なリスク回避の動きである。
第一章:AIブームの黄昏か、エヌビディア決算への警戒
日本株の調整局面は、米国市場の動向と密接に連動している。特にAI関連銘柄の指標であるエヌビディア株価は、直近で調整色を強めている。11月14日時点で190ドル台に位置する同社株価は、11月19日の四半期決算発表を控え、市場の警戒感が極度に高まっている。
エヌビディアは前期も驚異的な売上高と利益成長を維持しているものの、市場はすでに高騰しきった株価に対し、成長の「持続性」と「利益率」の先行きを見定めている。もし決算内容が市場の極めて高い期待値を下回れば、「AIブーム終焉の兆し」として受け取られ、世界的なリスクオフの引き金となりかねない。
この影響は、日本の半導体関連株に直接波及する。東京エレクトロンや信越化学といった主要企業に加え、半導体材料や資源を手掛ける住友金属鉱山(5713)も例外ではない。AIブームの過熱が一服すれば、需給環境の悪化懸念から、日本のハイテク株全般に売り圧力が強まることは避けられないだろう。ソフトバンクグループが既にエヌビディア株を売却したという報道が、市場の過熱感に対する警鐘として捉えられたことも、調整を加速させた一因だ。
第二章:円安の終焉と資源企業の苦悩
日経平均急落の直接的な引き金となったのは、為替の急激な変動だ。ロイターなどによる速報によれば、11月18日の市場では、ドル円相場が一時1ドル=155円台から154円台へと円高方向に急伸。これに米国株先物の急落が重なり、外国人投資家を中心とするリスク回避の利益確定売りが一気に噴出した。
これまで日本株を支えてきた構造的な要因の一つが「歴史的な円安」であった。住友金属鉱山をはじめとする資源関連企業は、銅や金などのドル建て収益を円に換算する際、円安の恩恵を最大限に享受してきた。実際、同社の2024年度業績は、円安と金価格の上昇により資源セグメントの利益が大幅に押し上げられている。
しかし、足元の急激な円高進行は、その収益構造に逆風を吹き付けている。同社は2025年度の業績見通しを、円高転換リスクやニッケル価格の低迷を織り込み、慎重な見方を示し始めている。円安がもたらした一時的な恩恵が剥落し始めれば、輸出企業や資源関連企業のファンダメンタルズに対する評価は一変せざるを得ない。
第三章:年末相場の行方と5万円回復への課題
日経平均は10月に5万円の大台を超え、歴史的な高値を更新したばかりだったが、僅か数週間で急激な調整局面を迎えた。この背景には、テクニカル的な過熱感に加え、外国人投資家のマインドの変化がある。
市場では、第4四半期は「年末高」のアノマリーがあると期待されてきた。しかし、現在の市場環境は、エヌビディア決算という短期的なリスクと、為替の急変という構造的なリスクが重なり、非常に不安定だ。
専門家の間では、年末高値の予想が4万5000円台から5万円台維持まで二極化しており、今後の相場展開は、米国金融政策、為替介入の有無、そして何よりも19日に発表されるエヌビディアの決算内容に大きく左右される。
日本市場は、円安という「追い風」を頼りに上昇してきたが、今後はその風が弱まる中で、AIや全固体電池材料開発(住友金属鉱山などが注力)といった成長性の高い事業基盤そのものが、投資家から評価される真価が問われる局面に入ったと言える。短期的な乱高下を乗り越え、日経平均が再び力強く上昇するためには、一過性の外部環境ではなく、日本企業の構造的な成長力が待たれる。(958字)