みずほFG、過去最高益更新の舞台裏:危機を乗り越えた「巨額IT投資」とDX戦略
ニュース要約: みずほFGは2025年度第3四半期決算で過去最高益を更新。国内金利好転に加え、2021年のシステム障害から脱却するための数千億円規模のIT投資が結実した。システム安定化を土台に、顧客体験(CX)重視のDX戦略とAI活用を加速させ、「新生みずほ」として強固な収益基盤を確立している。
みずほ、過去の危機乗り越え「新生」へ 収益過去最高益、大規模IT投資が結実(2025年11月25日付)
【東京】
みずほフィナンシャルグループ(FG)は、2025年度第3四半期決算において、親会社株主に帰属する当期純利益が過去最高を更新するなど、業績回復を鮮明にしている。度重なるシステム障害により金融庁から業務改善命令を受けた2021年の危機的状況から脱却し、大規模なITインフラ投資と国内金利の好転を両輪とした「新生みずほ」の姿が浮かび上がっている。
特に、中核であるみずほ銀行は、システム安定化への数千億円規模の投資が結実し、デジタル戦略(DX)においても顧客体験(CX)の向上を最優先とする戦略で他行をリード。過去の信頼失墜からの回復に向け、強固な収益基盤とガバナンス体制の構築を急いでいる。
第1部:金利好転が牽引、過去最高益を更新
みずほFGの2025年度第3四半期決算は、国内の金利環境の変化を最大限に活かし、収益力の劇的な改善を示した。最大の要因は、国内金利の上昇に伴う資金利益の増加だ。前年同期比で3,014億円の大幅増を達成し、中期的な連結業務純益目標(1.4兆〜1.6兆円)に向け、着実な進捗を見せている。
また、収益多様化の柱としてきた非金利収益の拡大も順調だ。グローバルM&Aアドバイザリー業務の強化や、米Greenhillの買収効果も加わり、ディールビジネスにおける競争優位性を高めている。同時に、低採算アセットの削減や経費コントロールの徹底により、増収効果を実質的な業務純益の向上に直結させている。
みずほ銀行が長年培ってきたコーポレート&インベストメントバンキング(CIB)モデルを活かし、法人顧客に対する付加価値の高いソリューション提供を強化することで、収益の安定化を図る戦略が功を奏している形だ。
第2部:システム安定化への「巨額の代償」と成果
2021年に相次いだ新勘定系システム「MINORI」関連の障害は、みずほ銀行の経営の根幹を揺るがした。金融庁からの業務改善命令を受け、同グループはITガバナンスとシステムの安定稼働を最重要課題と位置づけ、数千億円規模の投資を継続してきた。
再発防止策は多岐にわたり、約200項目にわたる改善策が実施・完了に向かっている。具体的な取り組みとして、ハードウェア機器の計画的な交換・改修、インフラ基盤のメンテナンス体制の整備、そして最も重要視されたのが「予兆管理」と「予防保守対応」の強化である。
2024年には、障害の影響範囲を早期に把握するための「多層的障害対応力」を重点課題とし、組織全体で取り組みを加速させた。その結果、2025年現在、システム障害の発生件数は大幅に減少し、MINORIの安定稼働率は飛躍的に改善している。この巨額のIT投資は、単なるコストではなく、金融インフラとしての信頼回復のための「必須の代償」として、ようやく結実しつつある。
第3部:DXで「顧客体験」を革新、AI戦略の深化
システムの安定化を土台に、みずほはデジタル戦略(DX)を加速させている。単なる業務効率化に留まらず、顧客体験(CX)の進化を重視している点が特徴的だ。
2024年5月に刷新された「みずほWallet」アプリは、クレジットカード、Suica、J–Coin Payなど多様な決済機能を統合し、利便性を飛躍的に向上させた。また、2024年1月からは、顧客一人ひとりに最適なサービスを適切なタイミングで提供する「ハイパーパーソナライズドマーケティング」を開始。Salesforceを導入した顧客カルテ管理と連携させ、個別顧客に寄り添った提案を可能にしている。
さらに、AI活用においては業界を先導する姿勢を見せる。2025年にはAI CoE「AIX推進室」を約70名体制に拡充し、将来的には顧客のパーソナルAIエージェントとみずほのAIが連携し、最適な金融サービスを提案するビジョンを描いている。
第4部:厳格化する規制への対応とコンプライアンス
一方で、金融機関に対する規制は厳格化の一途を辿っている。みずほ銀行は、2021年の行政処分以降、内部監査体制の独立性向上や経営責任の明確化を進めてきた。
2025年5月には、金融庁が「貸金庫業務適正化」を目的とした監督指針を改正したことを受け、みずほ銀行は貸金庫規定の改定に即応。また、金融犯罪対策(マネロン・テロ資金供与対策)についても、一部取引の停止や規定改定を通じて対応を強化している。
グループCCO(最高コンプライアンス責任者)を中心とするコンプライアンス委員会は、法令遵守はもちろん、「お客さま本位の業務運営」を全社的に浸透させる取り組みを継続中だ。ITガバナンスの強化は進んだものの、システムの安定稼働と保守計画の透明性、そして顧客本位の業務運営の現場への浸透度は、引き続き今後のみずほグループの課題として残る。
みずほFGは、過去の教訓を活かし、強固な収益力、安定したIT基盤、そして先進的なDX戦略を武器に、金融業界における競争優位を確立できるか。その真価が問われるのは、これからである。