高利回り「みんなで大家さん」に業務停止命令:不特法違反と2000億円超集団訴訟の深層
ニュース要約: 年6~7%の高利回りを謳った不動産ファンド「みんなで大家さん」が、資金管理の不透明性や説明義務違反により行政処分(業務停止命令)を受け、約2000億円の出資が危機に瀕している。解約請求殺到による流動性リスクが顕在化し、全国で集団訴訟に発展。不特法市場全体の信頼性が問われている。
高利回り不動産ファンドの黄昏――「みんなで大家さん」に渦巻く不透明性と行政処分の衝撃
【大阪/東京】 不動産特定共同事業法(不特法)に基づき、約3万7000人の投資家から2000億円超もの巨額資金を集めてきた「みんなで大家さん」シリーズが今、大きな岐路に立たされている。年6〜7%という高利回りを謳い、安定した収益を求める投資家の支持を集めてきた同事業だが、2024年以降、運営会社である都市綜研インベストファンド社を巡る資金管理の不透明性や説明義務違反が指摘され、行政処分と全国規模の集団訴訟に発展。日本の不特法市場の信頼性を根幹から揺るがす事態となっている。(2025年11月26日 日本経済新聞)
寵児を襲った行政処分と「高利回り」の構造的リスク
みんなで大家さんが提供する商品は、1口100万円からの出資で年6〜7%という業界平均を大きく上回る高利回りを掲げ、2ヶ月に一度の分配を実現してきた。長期運用を前提とし、賃貸利益を基準とした評価基準を採用することで、市場の価格変動に左右されにくい安定性をアピールしてきたことが、特に退職後の資産運用を考える層に響いた。
しかし、その安定性の裏側には、構造的なリスクが潜んでいた。運営会社である都市綜研インベストファンド社の2025年6月期決算報告によれば、自己資本(純資産93億円)に対し、固定資産(土地)を2179億円と、自己資本の23倍以上の固定比率で保有。資本構成の不安定さが指摘されるとともに、一部の大型開発案件、特に「シリーズ成田」などでは、開発の遅延や収益化の見通しが立たないリスクが顕在化している。
この結果、投資家コミュニティ内では、分配金の原資が実際の賃料収入ではなく、新規出資者の資金で賄われているのではないかというポンジスキームの疑念が広く取り沙汰されており、資金繰りが自転車操業に陥っている可能性が指摘されている。
不特法違反による業務停止と深刻な流動性リスク
事態が大きく動いたのは2024年6月。東京都および大阪府は、みんなで大家さんの販売・運営会社に対し、**不動産特定共同事業法(不特法)**における契約前書面や重要事項説明、収支報告などの義務が適切に果たされていなかったとして、30日間の業務停止命令を発出した。
この行政処分は、投資家保護の在り方に深刻な課題を突きつけた。処分直後、投資家による解約請求が殺到し、運営会社は解約受付を一時停止せざるを得なくなった。再開後も月5億円の上限が設けられた結果、出資者は「お金が引き出せない」という深刻な流動性リスクに直面している。解約処理には6ヶ月から1年以上の時間を要する見込みとされ、投資家からは、リスク説明の不備や、資金の使途に対する情報開示の不透明性を訴える声が上がっている。
現在、全国1191人の出資者が大阪地裁に集団訴訟を起こしており、主な争点は「資金管理の不透明さ」と「説明義務違反」だ。訴訟団は、利害関係人取引の透明性が確保されず、ファンド資金が社内で循環し、投資家利益が損なわれた可能性を強く疑っている。
業界全体への警鐘と規制強化の動向
みんなで大家さんのトラブルは、不動産クラウドファンディング業界全体に対する信頼を大きく損ねている。国土交通省と金融庁は、この事例を受け、監督体制の抜本的な見直しに着手した。特に、従来の不特法では監視が手薄になりがちだった「開発型ファンド」や「利害関係人取引」に対する規制強化が進められる見通しだ。
高利回りゆえに人気を博した古い型の不動産ファンドモデルは、行政の監視強化と市場の変化により淘汰される可能性が高い。今後は、情報開示が徹底されたデジタル証券を活用する「ST型」のクラウドファンディングが主流となり、投資家保護のための制度的見直しが進むものと予想される。
投資を検討する際は、みんなで大家さんの事例が示すように、表面的な高利回りに惑わされることなく、資金の使途、財務の健全性、そして流動性リスクを含む詳細な情報開示が適切に行われているかを厳しく確認することが不可欠である。行政指導や訴訟の拡大は、投資家自身がリスクを徹底的に理解し、分散投資を心がけることの重要性を改めて示している。