メタプラネット、BTC戦略で経常利益232億円達成！企業価値100倍超の衝撃

【深層】メタプラネット、BTC戦略で経常利益232億円達成 企業価値急騰の光と影

― 日本における「クリプト・トレジャリー」の衝撃、時価総額100倍超の背景を追う ―

（東京 2025年11月23日 共同通信）

ビットコイン（BTC）を財務準備資産として大量保有する戦略を加速させている日本企業、メタプラネット（Metaplanet）が、その大胆な戦略の成果を明確に示した。2025年12月期第3四半期決算では、ビットコイン価格の急騰に伴う巨額の評価益を計上し、連結経常利益は232億円超という驚異的な数値を記録。わずか1年あまりで時価総額を100倍以上に膨らませ、日本市場における特異な存在として国内外から注目を集めている。

米国のマイクロストラテジー社を彷彿とさせるこの「クリプト・トレジャリー戦略」は、従来の日本企業の財務戦略とは一線を画す。株価はビットコインの動向に強く連動し、その高騰は企業価値の劇的な変貌をもたらしたが、同時に、高い投機的プレミアムと価格変動リスクという光と影を内包している。

巨額評価益が牽引した財務の劇的改善

メタプラネットが2025年12月期第3四半期で発表した連結業績は、市場の予想を大きく上回った。連結売上高は45億1,700万円（前年同期比1,702.1%増）に達し、経常利益は232億2,900万円と、前年同期の赤字から劇的な黒字転換を果たした。

この驚異的な業績を支えたのは、ビットコイン評価益206億4,400万円の計上である。同社は、積極的な資金調達を通じてBTCの購入を継続し、2025年9月末時点で保有量を30,823BTCにまで拡大させた。これにより、総資産は5,500億円超に達し、自己資本比率は96.7%という極めて高い水準を維持している。

同社は、調達資金をBTC購入に充当する「株式発行→社債発行→BTC購入」という独自の循環モデルを構築することで、短期間での保有量急増を実現した。これは、企業が事業収益ではなく、保有資産の市場価値上昇を成長の主軸に据える、新しい形の財務戦略である。

「PHASE II」へ移行、希薄化リスクを抑制

メタプラネットは、ビットコイン保有戦略の持続可能性を高めるため、2025年10月より資金調達戦略を「PHASE II」へと移行させた。これは、永久型優先株を活用することで、普通株式の希薄化リスクを抑えつつ、BTCの積極的購入を継続する狙いがある。

さらに、保有資産を最適化するための新規事業展開も本格化している。2025年9月には、価値の高いドメイン「Bitcoin.jp」を取得し、「ビットコインジャパン株式会社」を設立。今後は、このドメインを核とした情報ハブ化や、オプション・デリバティブ取引を通じてBTCのボラティリティを収益化する「BTCインカム事業」を推進し、リカーリング収益の拡大を目指す。

株価のダイナミズムと高PBRの評価

メタプラネットの株価は、ビットコイン価格の動向と極めて高い相関性を示す。2024年4月時点では約20円だった株価は、2025年11月21日時点で1,544円付近で推移しており、時価総額は急拡大を遂げた。この株価急騰の背景には、BTC価格の上昇に加え、機関投資家の空売り買い戻し（ショートスクイーズ）が強力な増幅要因として作用したことが挙げられる。

現在のPBR（純資産倍率）は25倍超と非常に高い水準にある。これは、市場が同社の保有BTCの市場価値に加え、将来的な成長に対する大きな投機的プレミアムを織り込んでいることを示唆している。また、日本円の弱さが続くマクロ経済的背景も、ビットコインというインフレヘッジ資産の魅力を高め、結果的にメタプラネットの戦略に追い風となっている。

日本の規制環境と戦略の課題

メタプラネットのように大量の暗号資産を財務準備資産とする戦略は、日本の会計基準（JGAAP）の下で展開されている。日本では、活発な市場が存在する暗号資産は期末に時価評価が義務付けられており、評価損益が当期の損益計算書に反映される。この会計処理が、今回の巨額評価益計上を可能にした。

しかし、この戦略にはリスクが伴う。最大の懸念は、BTC価格の変動リスクである。価格が下落に転じた場合、連結業績に巨額の評価損が計上され、株価に直接的な影響を及ぼすことは避けられない。また、高PBR水準の維持や、優先株を活用したとしても資金調達に伴う潜在的な株価希薄化リスクの管理は、経営陣にとって継続的な課題となる。

メタプラネットは、日本企業として他に類を見ない大胆なビットコイン戦略を展開し、短期間で企業価値を劇的に変貌させた。今後の焦点は、BTC価格の動向に加え、「PHASE II」の進捗と、新規事業が安定的な収益源を確立できるか否かに集まる。同社が日本におけるクリプト・トレジャリー戦略の成功事例となるか、国内外の投資家は引き続き熱い視線を注ぎ続けるだろう。